第403話 大阪府大東市赤井の汁なし小全マシ
「喰って帰るか」
仕事の後。所用で出掛けた帰り道だ。
普段あまりいかない方面にでてきたので、せっかくなら、よりおもしろい方へいくのがいいだろう。
そうして私は、住道で下車していたのだ。
細々した買い物を駅前の百均で済ませ、北側の川沿いを東へと進む。高架の道路にぶつかったところで北へ進み、しばし。
道から一段低くなった場所に目的の店があった。
「お、すぐ入れそうか」
グループ客が入店しているところだったが、その後に続いてもまだギリギリ席はありそうだ。
入り口でグループ客がはけるのを待ち、店内へ。
なんとか席は二つ空いていた。
まずは食券だ。
ノーマルのラーメンの食券を購入し、白い洗濯挟みで小(200g)にするところまではいつも通りだが。
「ちょっと気分を変えてみるか」
更に、透明の洗濯挟みをプラスする。これで、汁なしになるのである。
一番奥の席に通されて食券を厨房から見える位置に置けば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、学園乙女のイベント進行中。なんだか大変なことでストーリーは終わり、後は、エリオの想い集めだけである。
が、APを使い切っていておでかけも仕込み済みだったので、そのまま終了する。
たまにはのんびりした時間を過ごすのもいいだろう。店内にかかる Key 系の曲に耳を傾けていると、時が流れ。
麺が上がったのが見えた。
「ニンニクいれますか?」
いよいよだ。
「ニンニクマシで」
後は、どうしたものか? いや、もう。
「他も全部マシで」
ということで、全マシをコール。
「なるほど、これぐらい、か」
汁がなく麺も少ないので、見た目の盛り上がりはそこまでではないが、こんもり盛られた野菜に茶色いオニオンフライがまぶされ、でかい豚がデンと二枚よりそう。豚の向こう側は半周ぐらい刻みニンニクが積もっている。更に、それらの上から黒胡椒が塗されているようだ。あと、アブラは別皿でマシ分が出てきた。
「いただきます」
まずは一口いきたいところだが、汁なしはつまりはまぜそばである。ならば、まぜてからだ。
レンゲと箸で混ぜればそこからタレが出て全体に絡んでいく。ほどよくまざったところで、いきなり麺を啜れば。
「ああ、ジャンク」
豚出汁にアブラの旨み、フライドオニオンの香ばしさ、そしてニンニクの刺激。全部がないまぜになって、健康とかそういうのを考えたら負けと思わせる味わいが口内に広がる。
マシた野菜も色んな味とまざりあって、これならマシマシもいけたかもしれないが、いや、無理はすまい。
豚を麺を野菜をモリモリと喰らえばいいのだ。食欲の赴くままに。
どうしても時間と共に野菜の水分で薄まってくるのだが、そこは備えあれば嬉しいな。追加のアブラを絡めれば解決だ。
汁なしはまた、油そばとも呼ばれるのだ。アブラをマシにすることになんの問題があろうか?
ああ、生きているなぁ。
食の悦びを存分に味わえば。
「おや、もう終わりか」
気がつけば、タレが残るだけ。それなりにお腹もくちくなっている。
少し、タレをレンゲでおいかけ。
最後に水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
おしぼりは持って店を出て、かごに放り込む。
「さて、帰るか」
口内に今だ残る余韻を楽しみながら、駅へと。
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