第383話 東京都台東区上野の五目蒙古タンメン+定食+瓶ビール
「いい映画だったな」
冬に備えて東京を訪れ。
めがね之碑に安全祈願をし。
時間があった『劇場版 呪術廻戦0』を観終わったところだった。
丁寧に描かれた乙骨優太の物語であり、とにかく真希さんが素敵で格好良くて美しくて可愛いのでもう大満足。このクオリティで、現在本誌連載中のところも映像化してほしいものだ。あの、憧れのヒーローの姿を借りた呪術師の活躍を観たい。きっと『 Synchronized Love 』的なBGMが必要になるが、そのあたりはバランスが大事だ。バランスというと五分だ五分だというけれど、七三ぐらいがちょうどいいのかもしれない。
などと、夢を膨らませていても。
「腹が、減ったな」
腹は膨れないのである。
「さて、ここはいつも喰ってるのを店舗で喰うか」
御徒町なら、あの店がある。それも織り込んでの映画鑑賞だ。
JRの高架下を少しアキバ方面にあるけば、見慣れた店主の姿が映った看板が見えてくる。
「少し並んでいるか……」
それでも、この機会は逃したくはない。
並んで待つことにする。
思いの外開店は早く、10分ほどで食券機の前まで到達できた。
「ここは、ノーマルではなく五目に行ってみるか。定食は付けるとして、ビールも付けてしまおう」
旅先でケチることもないだろう。
すぐに空いていたカウンター席に案内され、食券を出せば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい~』を起動する。今日はクリスマスイベント最終日。とはいえ、新幹線の遅れに合わせて回すだけ回したので、APが足りない。おでかけだけを仕込んで終える。そこまで時間は掛からないだろう。
予想通り、それほど待たずに注文の品がやってきた。
「赤い、な」
五目蒙古タンメンは、たっぷりの野菜炒め、キクラゲ、ゆで卵、刻みネギ、豚が乗っている。定食は、ご飯と麻婆豆腐。ビールは瓶とジョッキのセットだ。
「いただきます」
まずは、五目の野菜をいただく。
「甘い
野菜の甘みが優しい。旨い。そのまま、麺を啜り、豚を喰っていたのだが。
「辛い」
段々と口内に熱が灯ってきた。そうだ、これは蒙古タンメンより、一段階辛いのだ。
甘みが辛さを引き立てている。
そこで呑むビールが旨い。
更に麺を喰らったところで。
箸休めに喰らう米が旨い。
麻婆を一緒に喰らえば。
「辛い」
そうだ、何を喰っても辛いのだ。だが、それがいい。
食べ応えのある中太ストレート麺と野菜と豚、そして辛さ。カップ麺とは趣の異なる旨さを堪能する。
「いや、これも箸休めか」
ふと、つまんだスライスされたゆで卵は、一息つけるお味だ。
だが、それほど量があるわけでもない。
「辛い、な」
辛党ではあるが、それでも、中々ハードな辛さだ。それでも、旨いので喰える。
麺を野菜を豚をご飯をビールを。
辛さに追い立てられるように喰らい呑めば。
「終わり、か?」
残るはスープのみだった。
沈んだ麺や野菜の破片を追い駆け。
名残を惜しもうとレンゲで一口飲んで。
「……汝、完飲すべからず、だ」
ここに限っては、胃の調子を保つための戒めだ。
最後に水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「飲むヨーグルトなり、飲んで置くか」
手近なコンビニに足を向ける。
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