第378話 大阪市中央区難波千日前の賄い味噌

「腹が、減ったな」


 仕事を終えた私は、順当に空腹を抱えていた。

 身体は付かれているのに、腹の虫の元気なこと。


 こういうときは、ガッツリ喰うに限るだろう。


 かくして私は、御堂筋線なんば駅の南側から出て、なんさん通り方面に出てそのまま道具屋筋も越えた道を南へ歩いていた。


「まだ、か」


 他の曜日は通しなのに、月曜に限って昼休憩があった。


 とはいえ、後3分ほど。先客は2名だけ。ならば並ぶほかあるまい。


 待つというほども待たずに開店し、店内へと。


 タッチパネルとなった食券機の前に立ち。


「よし、今日は味噌だ」


 ということで、食券を確保して、ニンニクは入れてもらうようにいって食券を出せばあとは待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、ゴシックパーティーイベントで、どこかでみたような人とバトルを繰り広げているところだ。とはいえ、新しいリリーが実装されるわけでもなく、のんびりしたものだ。ゲームとして、ゴシックパーティー自体は楽しいので、ほどほどに遊んでいるようなもの。


 細々とした設定をしたりおでかけを仕込んだりで微妙に時間を使ってしまったので、出撃は控えて月曜なのでジャンプの続きを読もう。六美ってやっぱり凶一郎は似ているなぁ、などと思っていると、注文の品がやってきた。


「う~ん、豪快だ」


 こんもり盛られたもやしの頂上にはコーンがばらっとまかれ、麓にはチャーシューが二枚寄り添い、反対側にはがさっとにんにく。隙間からはオイリーなスープが覗く。


「いただきます」


 もやしをスープに浸せば、豚の旨みがガツンとくる。が、味噌ダレと混ざっていないので、これでは物足りない。


 野菜をある程度減らし、麺を引っ張り上げれば。


「見るからに、味噌だな」


 しっとり茶色に色づいた麺が現れたのだ。そのまま天地を返すというよりはまぜそば的に全体に味噌を馴染ませて改めて喰えば。


「ああ、ニンニクと味噌と豚、だ」


 どれも譲らず主張して結果的に混ざり合うニンニク豚味噌味。そうそう、こういうのが喰いたかったんだ。


 腹の虫に急かされるように、味噌豚を喰らう。しょっからい中に、ときおり紛れ込むコーンの甘みが箸休め。


 ぶとい麺も野菜も豚も、渾然一体とさせて喰らう。


 半分が過ぎれば、だばっと一味と胡椒を入れて刺激プラス。


 そのまま、ガツガツと喰らう。お上品に喰らうもんじゃないんだ、こういうのは。


 ずるずると麺を野菜を豚さえも啜り。


 気がつけば、麺も具材もしっかり喰らい尽くしていた。


 残ったもったりと脂ギッシュなスープをレンゲで口へ運べば、これはこれで背徳的な快楽。


 しばし味わい。


 汝完飲すべからず、と己を戒めて終わりにし。


 最後に水を一杯飲んでサッパリして。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、帰ろう」


 今日はやらねばならぬことがある。栄養はしっかり補給したところで、駅へと足を向ける。


 

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