第376話 大阪市浪速区日本橋の豚骨醤油(野菜マシマシニンニクマシマシ背脂マシマシ)

「無性に、マシマシが喰いたい」


 そんな日もある。


 なので、仕事終わりに私は買い物がてらオタロードへとやってきていた。


 買い物は、予算三万での中古ノートPC。サブで主に執筆限定で使用している14年以上が経過したノートPCの調子が悪いのだ。バックライトも弱ってきており全体的にぼやけたというか、黄ばんだ感じになってきている。HDD増設、Vista->8->10 へのOSアップデート、メモリの増設、SSDへの換装など、延命処置を繰り返してきたが、流石に寿命だろう。ここまでくると、液晶交換を頑張るより、同じ用途のPCを中古で見繕った方が早い。


 理由付けもバッチリあり、必要緊急の外出に伴う食事として、マシマシを食すのである。


 オタロード入り口の店ではいいのが見つからず、スルーし、黄色い潜水艦の隣の店ではよさげなのがあったが、解像度がフルHD に満たないのが今一つ。


 そうして次の店へ行く途中で左折。


 もう一つの目的である食事のためである。


「お、すぐ入れるか」


 ガラス張りのドアの向こうには、厨房と真っ直ぐのカウンターのみの小さな店内。その最奥の席が空いているようだ。


 入り口前の食券機で、味噌とどうするか悩んだが。


「いや、オーソドックスに行こう」


 と豚骨醤油のラーメンの食券を確保して店内へ。


 食券を出してセルフの水を飲んで一息。


 ちょうど先客の麺上げ中で少し待ちつつ、


「野菜マシマシニンニクマシマシ……背脂マシマシ」


 とマシマシの衝動に駆られて全マシマシしてしまうが、大丈夫だろう。


 あとは待つばかりとなれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』の時間だ。現在はパラレルワールの女優編。ロロデミー賞授賞式での一幕という、なんでもありな感じのイベントである。


 今回はリリーの出番がなさそうなので、のんびりとプレイ中だ。前回メインだったので、こういうインターバルはありがたい。


 おでかけを仕込み、ステージに出動する面子をイベントボーナスを鑑みて考えたりしていると、麺上げの気配。


 出撃する余裕はなさそうなのでゴ魔乙を終了してしばし。


「ちょうどいい感じだな」


 褐色のスープが滲む丼にはこんもりと野菜が盛られ、頂上をヌルッと飾る背脂。麓にマシマシだからか半球状に二つ並ぶたっぷりのニンニク。


「いただきます」


 まずは、野菜から。


「ああ、優しい味だ」 ※個人の感想です


 比較的豚の出汁がメインの味わい。絡む背脂のこってり感もいい塩梅だ。


 もりもりっと野菜を喰らい、麺を引っ張り出す。


「うんうん、やっぱり優しい」 ※個人の感想です


 スープの絡んだ太い麺の味わいも、やはりまろやか。


 だが、それもここまでだ。


 天地を返し、ニンニクを混ぜてしまえば。


 パンチが加わるが。


「それでも、豚味は健在だなぁ」


 いいバランスだ。


 実際、ここはこの手の麺の中では食べやすい味の店舗だろう。量も、マシマシでもそこまで多くない。それ以上は、別途手続きを踏んで頼めるマシマシマシになるのだ。


「ちょっと、変化を付けるか」


 卓上の昆布塩をサラッと振り掛けて、混ぜる。


「魚粉はよくあるが、昆布もいいよなぁ」


 海の味が加わると、一気に和の風味を感じるのはどうしてだろう? いや、ラーメンは実質的和食だろうが。


 更に、一味と胡椒も振り掛けて味変を楽しんでいたら。


「もう、終わりか」


 無理なく喰えるいいマシマシだった。


 残ったスープをレンゲでしばし追い駆け。


 汝、完飲すべからず。


 戒めを思いだして完飲を控え。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して、店を後にした。


「丈夫で軽くてメモリ4GB以上でCPUはCorei5クラスで液晶はフルHDのが三万以内であれば、最高なんだがなぁ」


 そんな甘い話はないと思いつつ、オタロードを更に南下する。


 三十分後に、その通りのスペックのPCを購入していることを、そのときの私はまだ知らなかった。

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