時戻り
紗凪 カナ
第1話 朝露の人
あなたには戻りたい時間はありませんか?
後悔した時間をやり直したいとは思いませんか?
もし・・・やり直したいと思うのなら私が時を戻してあげましょう・・・。
これは、夢のような現実のお話。
さあ、あなたの戻りたい時間を私に見せてくださいな。
2006年6月14日 雨
私は、土砂降りの雨の中を1人傘も持たずに走る。
制服のブラウスが肌に張り付いて気持ち悪い。スカートも雨に濡れて太ももに張り付き、走るのを邪魔する。
だけど、そんな事は関係ない。
一刻も早く見つけなくちゃ。まだ、まだ間に合うかもしれないから・・・。
静かな住宅街を走り抜け、細い一本道の松の目印を左に曲がる。
すれ違った井戸端会議中の奥様方が私を見て驚く。そりゃそうだ。
女子中学生が1人ずぶ濡れの中必死に走っているのだ。たぶん顔をぐしゃぐしゃにしながら走っているのだから。
自分でもこんな事をして何になるのかわからない。
それでも、少しでも可能性があるのなら賭けてみたいから・・・・・。
2日前、私は祖父のお見舞いに行った。
と言うより母に行かされたのだ。
小さい頃は私は祖父の事が大好きだった。
しかし、祖母が亡くなってから祖父は今までに増して「勉強しろ。」「勉強しろ。」と、口うるさく厳しく接してきた。それは反抗期の私にとってはウザイ事に他ならなかった。
そんな中なかば無理やり見舞いに行かされて私は酷く機嫌が悪かった。
だから・・・・・。
ビチャッ。
車道の水溜りがトラックによって跳ねられて顔にかかった。思考が停止する。
やめた。今悔むなら可能性が消えてから悔もう。
そう心に決めてまた走り出す。長い長い坂を登り、小さな小道に入る。3つ目の電柱を右に折れて立ち止まる。
「・・あった・・・。」
眼前には少し昔ながらの懐かしい雰囲気を醸し出す小さな店が建っていた。
『Time clock』と書かれた看板。間違いない。
ここが時を戻せる場所なんだ‼︎
ドクン、ドクン
はやる気持ちを抑えるためにひとつ深呼吸をして、ドアノブに手をかける。
カラン、カラン
と言う音と共にドアを押し開ける。
小さな可能性を胸に抱きながら・・・一歩足を踏み入れる。
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