エピローグ 時を超えて
「タケル、おい、おきろってば」友人の進藤淳の声で目が覚めた。
はっと周囲を見回したがそこは平成の現代だった。
「おまえ、もうすこしで死ぬとこだったぞ。おれが命の恩人だからな、一生忘れるなよ」
「でもよかった。助かって。」淳は胸を下した。
「今年の夏は水泳の練習しろよ。この年で同級生のお葬式なんていきたくねーよ」
といいながら淳の目には涙が流れている。
「まだしなねーよ」とタケルの目からも涙が流れた。
それから半年くらいして東京の大きな美術館で「写楽展」が行われた。
タケルはその会場に朝一番で並んだ。
美術館には海外にあるものや個人所有の物などが展示されていた。
それを一つ一つ見ながら昔を振り返った。
最後のコーナーに「写楽の正体」というものがあった。
写楽の正体の一説として「阿波の国の斉藤十六兵衛(十郎兵衛)」というものがあった。
なつかしい、くすっとわらった。
そのコーナーの一番隅に「伝 東洲斎写楽」と書かれたものがある。
その絵を見てタケルは言葉を失った。
その絵には吉野太夫の姿が書かれていた。
うつくしい女性である。
不思議と涙がこぼれてくる。
すーっと隣の人がハンカチを差し出してくれた。
見ると同い年らしい女子校生だった。
「この絵は私の家に伝わってきたものなの。。。」
顔を見ると「吉野太夫」そっくりだ。
とりあえず、流れてくる涙を止めようとした。
何とか止まった。
ハンカチを返すと彼女に。
「ちょっと僕の失恋の話をきいてもらってもいいかな?」
といった。
「いいわよ。でもケーキ3個が報酬よ」とほほ笑んだ。
そういうとふたりは美術館から姿を消した
彼女の家に伝わる「伝 東洲斎写楽」の裏には
「つま。よし 姿絵」と書かれていた。
完
僕の名前は「写楽」 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya
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