26-26 : 闇
――“宵の国”、西方。
――東の守護者“魔剣のゴーダ”。
――西の守護者“三つ瞳の魔女ローマリア”。
――女鍛冶師“火の粉のガラン”。
――姫騎士“
――守護騎士“
「……待たせた」
まず一声を放ったのは、ゴーダである。
「ふん、勝手に姿を消しといて……何があったかは聞かんことにしといてやるが、余りワシらを待たせるな。うずうずして、いても立ってもおれんようになるとこじゃったわい」
腕組みをして脚を肩幅に開いたガランが、フンッフンッと鼻息を荒らげて言った。
「嫌ですわ……ほんとに
ローマリアが
「…………」
そんなローマリアを視界に入れるエレンローズは、もう魔女に対して何の感情も抱いてはいない様子で、ただ主であるシェルミアと、シェルミアの盟友となったゴーダの言葉を待っている。その視線に最初から気づいているローマリアも、もう何も口にしようとはしていなかった。
「ゴーダ卿。準備は整いました」
シェルミアが、
「……よろしい」
皆を見回して、ゴーダが一呼吸置いて、指揮官の声で言った。
「今回の一件、その指揮と決定権は、全て私が預からせて
ゴーダの視線が、まずガランに向けられた。
「東方の奪還には、私とガランが向かう」
「おうさ、当然じゃな。やったるわい!」
張り切ったガランが、肩をブンブンと回して応えた。
「東方は敵対勢力の位置がはっきりしている。ローマリアの転位魔法を使えば問題はない。問題になるのは……領内に侵攻している“明けの国”部隊の所在だ」
言葉を続けながら、次にゴーダはシェルミアに目をやった。
「兄の……いえ、“敵”の潜伏状態が分からない中、何か効果的な手が打てるのですか、ゴーダ卿。私とエレンローズ……このたった2人で」
シェルミアの問いに、ゴーダは首を横に振った。
「いや、さすがにわずか2人では、効果的な索敵は無理だ。当然だがな」
それを聞いて、シェルミアがわずかに眉を寄せた。ならばどうするのです、と、声にならない声が問いかける。
「“効果的な手”は、今も言ったが、ない。だが……“確実な方法”なら、ある」
そう言って、ゴーダが2人の人間の前に真正面から向き直った。
「シェルミア、エレンローズ……貴公らには、“淵王城”に陣取ってもらう」
……。
「……。……本気で言っているのですか、ゴーダ卿」
思わず、シェルミアが探りを入れるような声音を返した。
「私は本気だが?」
「要所中の要所を、私たち人間に預けるのですか」
「ああ、預ける。案ずるな、リザリア陛下も侍女たちも、何も言わんよ。あのお方のお言葉は絶対だ――陛下直々に、私にこの件についての全権を委ねられたということは、そういうことだ」
「それも、ありますが……私が言いたいのは、そういうことではなく……」
言葉に詰まり、シェルミアが一瞬口を閉じる。
「……。私も馬鹿ではない。裏切ろうとする者は、そんなふうに悩んだりはしないということぐらい、知っている」
「……ゴーダ卿……」
「盟約通り、貴公に背中を預けるぞ、シェルミア」
……。
……。
……。
「
そうしてシェルミアとエレンローズは、ゴーダが振り返り歩き出すまで、ただじっと
……。
……。
……。
「ふむ。それでは、ゆこうか――この争いを、終わらせよう」
***
――“宵の国”、中心。“淵王城”。
「多くの、命が散った」
完全な闇と、悠久の静寂に包まれた玉座の影に、金色の瞳がぼぉっと浮かび上がり、その
「――はい、
「――はい、痛ましきことにございます」
「――はい、
「――はい、
いつ
「余は、
感情のない声が、虚空に浮かび、虚無へと消える。
「――いいえ、そのようなことはございません」
「――いいえ、
「――いいえ、たとえ王とて、
「――いいえ、これも巡り合わせにありますゆえに」
侍女が、寸分違わぬ声で、
……。
……。
……。
「そうか。
……。
……。
……。
「
……。
……。
……。
「……
……。
……。
……。
――。
――。
――。
***
――。
――。
――。
――“宵の国”、北方。
凍える風が嵐となって、土色の大地を削り取るように
ここは、亡者の地。
記憶も、願いも、救いもなく、ただ底知れぬ渇きだけに満ちた場所。
生者を拒む、死者の土地。
……。
……。
……。
“ゆえに、この地に守護者は不要であった”。
……。
……。
……。
――。
――。
――。
――北の四大主“渇きの教皇リンゲルト”、消失。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……■
■……■■……
――。
――。
――。
――北の四■主“渇きの教皇リンゲルト”、消失。
――。
――。
――。
――北の四■主“渇■の教皇リン■ルト”、■失。
――。
――。
――。
――■の四■主“■■の教■リン■ル■”■■失■
――。
――。
――。
――■■■■■■■■■■■ン■ル■”■■失■■
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……。
……。
「……
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