18-13 : 強襲
足下の大地には、亡者たちの
時折、地上から
そして移動砦に打ち込まれた最後の
――勝負は一瞬。初動の反応も、反撃の
女騎士が、自分自身に言い聞かせる。四大主――魔族最高位の4人の
――私は……独りで戦うのが怖い……昔も、今も、ずっとずっと……。
――私は……ロランみたいに我慢強くもないし、シェルミア様みたいに堂々と振る舞うこともできない……。
――それでも私が、“右座の剣”なんて二つ名で呼ばれるまでになれたのは……。
――ロランが、一緒にいてくれたからだよ……。
――シェルミア様が、私の進む道を照らしてくれたからです……。
――だから今度は、私の番。
――シェルミア様……。……ロランと私が、
エレンローズがもう一度、深く深く、息を吸い込んだ。
――それに、
そして――。
呼吸を完全に鎮め、感覚全てを研ぎ澄まし、最後の1歩を踏み出す覚悟を固めたエレンローズが、跳躍した。
双剣を抜いた女騎士の身体が、移動砦の頂の縁を飛び越える。
そしてエレンローズのその視界に、永い年月の風雨を受けた石の皇座に深く腰を下ろす、1体の骸骨の姿が映った。
金糸の
北の四大主、“渇きの教皇リンゲルト”が、そこにいた。
移動砦の頂上に着地すると同時に、エレンローズが呼吸を止め、全力で前に踏み込む。
「カッカッカッ……カッカッカッカッ!!」
――問答無用。
「カカカッ! よくぞここまで
―― 一撃で――。
「こむす――」
――決める!
「――メっ」
ガギンっ。
リンゲルトが言葉を発し終えない内に、エレンローズが右手に持った“運命剣リーム”で、骸骨の
「アガッ……?!」
頭骨部の一部を鋭い刺突で砕き割られ、皇座に釘付けになったリンゲルトが息を
「……っ」
エレンローズは一切の呼吸を止めて全身の瞬発力を限界まで高めたまま、動きを封じたリンゲルトの上にのし掛かる。そして左手の長剣を素早く逆手に持ち替えて、真っ赤な
ベキリッ。
リンゲルトの胸部に刺さった長剣の先端が、骸骨亡者の弱点である背骨に届いた感触があった。
「ムッ……!?」
2本の剣に貫かれたリンゲルトの骨の身体が、ぴくりと
「……っ……っ! ……っ!!」
リンゲルトに馬乗りになったまま、エレンローズが有らん限りの力を腕に込めた。
メキッ……ミシッ……ベキッ。
教皇の頭骨に亀裂が走り、長剣が背骨にめり込んでいく音がする。
「……っ! ぁぁぁぁ……っ!!」
エレンローズが灰色の目を大きく見開いて、猟犬のように歯を食いしばった。
――砕けろ……っ!
……。
……。
……。
……ボキリッ。
エレンローズの左手に、リンゲルトの背骨が砕け折れる確かな手応えが伝わった。
それと同時に、教皇の全身から力が抜けて、骨の身体がだらりと伸びる。
しかし、エレンローズは呼吸を止めたままでいた。
――まだよ……っ!
女騎士の右腕に
移動砦の直上に真っ黒な雷雲が渦巻いて、その直下に位置するエレンローズとの間の空間に、パチリと小さな稲妻の火花が走る。
「――“雷刃:
……。
……。
……。
パチリッ。
……。
……。
……。
ピカッ
……。
……。
……。
雷雲から、紫電の刃が落ち――。
……。
……。
……。
!!!!!!!!!!!!!!!
……。
……。
……。
目を
その
……。
……。
……。
バチッ。バチバチッ。
エレンローズの
巨大な雷の直撃を受けたリンゲルトの
「……っ……」
そこまできてようやく、皇座に座したままボロボロになって沈黙したリンゲルトに馬乗りになったまま、エレンローズは肺の中に閉じこめていた空気を吐き出した。
「……はぁっ……はぁっ……!」
女騎士の息遣いだけが、しんと静まりかえった皇座に漂っていた。
……。
……。
……。
――“右座の剣エレンローズ”、北方戦役に
……。
……。
……。
――北の四大主、“渇きの教皇リンゲルト”――
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
「……カカッ」
――
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