カフェ・キルシェへようこそ
ゆづ
1、女の子のためのチョコレートケーキ その1
まだ薄暗い午前4時半、カフェ・キルシェの調理場に灯りがつく。ギャルソン風の長いエプロン、いわゆるダブリエの紐をきゅっと締めて
「さあて、今日も頑張りますか」
1つ伸びをしたら、作業開始だ。
まずは材料を計る。バターに卵、チョコレート……。小麦粉の代わりに、おからを使う。そして良質な油を含んだナッツ類、美容に良いって聞いたことのある豆乳。
今日の日替わりメニューはチョコレートケーキ。それもカロリー控えめ、女の子のためのケーキだ。
卵を卵白と卵黄に分け、卵白には少し砂糖を加えてつのが立つまで泡立てる。そうしてできたメレンゲに生地の材料であるおからやふくらまし粉、卵黄、バターを入れて、さっくり混ぜる。
チョコケーキだから、ココアとチョコチップも忘れずに。
風味づけのお酒と豆乳を足して、なめらかになったら丸い型に流し込む。あらかじめ余熱しておいたオーブンへ投入。
焼いている間に、他のメニューの準備をしよう。
パン用の生地を成型しながら昨日の夕方カウンターできゃあきゃあ騒いでいた女の子達を思い浮かべる。「あ〜あ、ケーキは美味しいけど太っちゃう。ねえねえ店長さん、太らないケーキ作ってよ」。そんな事を訴えられても、と思ったけれどお客さんのニーズに応えるのも大切。
ただしカロリーゼロのケーキなんて存在しないので、ちょっと太りにくくて美容にいいケーキで妥協してもらおう。
50分ほど経っただろうか。オーブンから取り出したチョコレートケーキはふんわりと中央が盛り上がっている。少しそのまま放置して粗熱を取ったら、溶かしたチョコレートをケーキの表面にひと回り小さい丸を描くように塗る。さらに粉砂糖をふりかけ、ナッツやベリーをふんだんに飾り付けたら完成。
午前7時。カウンターやテーブルを拭き、 焼きたてのパンを棚のバスケットに並べる。
出来上がって氷冷庫、元の世界にいた頃で言う冷蔵庫に入れておいたチョコレートケーキをガラスケースに飾ったら、さあカフェ・キルシェの開店だ
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