Black to Ruin
青い異形の身体中のヒビが大きく広がる そして、体がまるで風船のように一気に膨れる
じっくり見る間もなく、その次に体が崩れた 砕けた堅い殻が、ボロボロと重力に従って落ちていく
そして、中から何者かが出てきた
中から現れたのは、黒色の異形であった
甲殻類と昆虫を足して二で割ったような表皮の外骨格 真っ赤に光る二つの禍々しい眼 額からは二本の長い触角らしきもの とてもとてもマッシヴなシルエットは、人型としか形容できなかった
清仁は、一部を除いて体の形状はそのままに、色を黒く染めて青い体を脱ぎ捨てたのだ まるで、蛹が蝶々に成るように
黒光りする体には、複数の小さな棘 これも、青かった頃から付いていた
しかし、体色が変わっただけで、その威圧感は何倍にも増していた 赤い眼光は、眼を合わせた者を竦み上がらせる程であろう
顎には、人間が食い縛った歯を剥き出しにしたような形になっている
爪先から頭の天辺まで、外骨格で覆われていた
体の傷も、全て綺麗に無くなっている
ブロークンサンダーを発するための孫の手状の器官もそのままだ
しかし、色と並んで新生志田清仁には新たな変化があった
それは背中に付いていた
刃渡り一メートル程度の、両手剣だ
うなじの下から伸びるコードのような器官で黒い異形と繋がったその剣は、どう見てもナマクラだった 刃は研がれていなく、丸い 色は本体と同じく漆黒
飾りか、鈍器か、そんな風にしか使えないように見えた
それは、大きな間違いなのだが
《なんだ!?》
オレンジの怪人はまず驚愕した
そして、すぐに落ち着きを取り戻す
例え復活したとして、例え強くなったとして、この自慢の拳で叩き伏せてしまえばいいのだから
《チッ!》
だから、あと一歩踏み込んでぶん殴る それが正解のハズだった ハズだった
両手で剣を引き抜き、黒い異形は横に構える 剣は刃先から縦に割れた そう、割れた
うなじ下のコードが、脈打つ そこから剣へ送り込まれるものは、体液に他ならない
コードから割れた両手剣へと送り込まれる体液 それは、高速で剣の割れ目から噴出する
形成される、剃刀のように薄い液状の刃 これはナマクラなどでは無かった
むしろ、下手な名剣より斬れる
ダイヤモンドを切断するダイヤモンドカッターは、高速で水を噴出する機械だ
そして、それを、黒色の怪人は剣に見立てた
橙色の怪人の全力の左ストレートは、届かない 何故なら、プロのボクサーの構えで拳を放ったその怪人が、腹から真っ二つに切断されたからだ
上半身は宙に浮き、下半身は棒立ちのまま 二つとも瞬時に爆発を起こした
煙が晴れて、出てきたのは
剣を振り抜いたまま残心するように佇む、黒い異形だけであった
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