第12話急に修行しても強くなれないよね。むしろ筋肉痛とかツラいです・・・。
その日は、いつもどおりに訪れた。
フランたちとの食事から早いもので3日、3回目の朝が来ました。
この3日間、本来のメイド業務はお休みで、毎日ローラやそららと剣術や魔法などの練習を行っていた。
1日目
そららはローラと剣の組み手を行っていた。
もともとそららも昔少し【かじっていた】のもあってまんざらの素人でもなかった。
ただ、なんせ持久力が・・・。最初はけっこういい感じにローラを攻めているんだけど、すぐにばててしまう。
剣の中でも軽い細剣レイピアを使用しているのだが、動く時間、剣を持ち続ける時間と本人には重労働らしい。特に、片手で持つことがしんどい。らしい。
私は私で弓の練習。過去にはフランよりも上手かったらしいのだが・・・。今はその面影すらない。
誰もが驚くほど達人の技。とは程遠い。
まず、まっすぐ飛ばない。そもそも飛距離もない。弦が切れそうで、怖くて仕方ない。
自分ではかなり引っ張っているつもりでも、矢はまったく飛ぼうとはしてくれない。
結局一人で『まずは飛ばす練習』からはじめることになり、そららの組み手を離れたところで眺めながら続けていた。
2日目 午前中
驚いたことに、この日そららには変化があった。
筋肉痛。
まさか、あれくらいで筋肉痛になるとは思わなかった。彼女の観察日記を作っていたら面白いかもしれない。レイピアを持つことはできても、すごく重たそうで剣先がぶつかると『はぅ』って感じでよろめいてしまう。
途中で魔法を使おうとしていたが(おそらく反則。たぶん負けず嫌いがでて意地でも勝とうとしたのだろう)、詠唱中にローラにくすぐられて笑い転げていた。
魔法の弱点は詠唱中・・・らしい。
その後はどうしたかと言えば、すねて芝生の上で座っていたようだった。
私は、どうにか弓は飛ぶようになった。
ただ、上手いかどうかは別になる。
的には当たったり外れたり、3割くらい?ド素人、にしては筋がいい。らしい。体が微妙に覚えていたということかな?
2日目 午後
最後は魔法の練習だった。下手すると寝ちゃうから一番最後の練習にしたらしい。
ローラは闇属性の魔法が使える。魔術師は魔力がすべて。魔力がなくなれば行動不能になるらしい。
ローラのように剣も使えるようなタイプは補助魔法メイン、攻撃魔法は少し、と使い分けて戦うのだという。また、魔法の熟練度。も存在する。
初めて使う魔法よりも、たくさん使う、自分に合った魔法は詠唱なしでも発動できることが可能になるらしい。ただし、中級以上の魔法は契約なしでは使えないし、無理に使おうとするとこないだのそららのように
眠りこけてしまうらしい。
まず、魔力の絶対量。例えて言うなら受け皿の許容量キャパシティは変わらない。なので、どれだけ回復させながら戦うか。が必要らしい。
そららは魔法はすでに使えるので、新しい魔法は何か覚えられないか。ということで王城の書庫からローラが風魔法について書かれた文献を数冊持ってきてくれている。
私に至ってはなんえ魔法の使い方自体を忘れてしまっていたので、まずは使い方から始めた。
魔法は、使う前にイメージをする。
どんなふうにしたいのか。
どのように精霊の力を使いたいのか。
自分に魔力の質が変化し、具現化するのを感じたときに
詠唱を始める。
最後に
呪文を唱えるときに自分の意志で魔法を創造すること
だ、そうだ。
結果的に言えば、魔法は使えなかった。
想像しながら、なんとなく手があったかくなった感じはするのだけども、最後にどうしたいのかがわからない。いや、【どうなるのかわからない】。だから、魔法の発動はなかった。
最初はそのようなもので、あとはほかの人の魔法を見たり、自分で研究したりして使えるようになる。らしいけど、時間がないので現在は無理かもしれない。
そららはそららで、何か閃いたものがあるのかわからないけど、本を黙々と読んでいた。
そして、現在。3日目の朝。
目覚めは、良いと思う。いや、この際言わせてもらえば、寝覚めというか、緊張して寝ていられない。というべきだと思う。遠足前の子供。なんて可愛いものではない。死刑まちの死刑囚だと思う。行くのは戦場。
私は起き上がると、鏡の前に寝間着で立った。
いつもと変わらない朝が余計に悲しい。
クローゼットを開けて、いつも通りのメイド服に腕を通し、私はいつものと変わらぬ姿で今日を挑む。
ローラからメイド服ではなく、戦場なので動きやすくて、軽装、もしくはライトアーマー(プレートなどの部分的な軽い鎧)を着るように言われたが、いきなりそんなもの着てもうまく動けないだろうし、この服が心なしか一番落ち着く。
改めて鏡の前に立ってみる。
(これが、最後かもしれない)
鏡に手を伸ばして、鏡の中の私と手を合わせる。
出来るものなら、誰かに代わっていたでいただきたい。正直、行きたくない。
コン・・コン・・コン
扉が小さく鳴る。
「お姉ちゃん。起きてる?」
「うん、大丈夫だよ」
そこにはいつもと変わらない様子のそららが、困ったような顔をしていた。
おいおい、まさか言い出したあなたが行かないとか、行きたくない!とか言わないよね?
「怒ってる??お姉ちゃん。」
そりゃ怒ってるよ!なんでも私まで!!と思ったが、彼女の姿を見ていると不思議とあまり文句を言う気持ちにはなれなかった。
この2日間は、正直楽しかった。そして、これはある意味これからこの世界で生きていくために必要なものなんだと思う。フランや、エル様も最大限の協力をしてくれていて、かなり安全面では高いと思う。
ただ、戦。なんてものは教科書や話でしか聞いてないし、アニメや漫画の戦争とは違って、本当に死ぬかもしれない。と思うと恐い。
「大丈夫。そららと二人で、帰ってこようね!」
妹が悪かったと思っているのはなんとなくわかった。あの強がりそららが、謝りに来てくれただけでも彼女の気持ちは察する。
そららの頭をヨシヨシと撫でてあげてなんとなく笑ってしまう。
テーブル、暖炉を簡単に片づけて、時計のネジも巻いておく。寝間着は今日に限ってはたたまないで、ベッドの上に無造作に放り投げる。今日帰ってきて、汚いなぁ。とそららと話せるように。
屋敷の外に人の声がする。
ローラと兵士が数人来ている。
「いよいよだね。」
「うん。大丈夫!うちは王宮騎士、さらに選ばれた者しかなれない聖騎士になる予定だから!」
「いつから騎士見習いになったのよ?レイピアしか持てないくせに」
笑いながら両手で頬っぺたをつまんでみる
「頼りにしてるよ?私の聖騎士さん」
私たちはローラと合流し、すでに本体が向かっている南のゴブリンのもとへ向かった。時間は馬車で2時間もかからない。私は昨日と同じく弓矢。そららはレイピア。相手は武装したゴブリン。
特に、話すことは何もなかったけど、きっと思いは一緒だったと思う。
「着いたら戦が終わっていないものか・・・」
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