ヒロインになんか絶対にならないっ!
タカテン
第1話 変な男が現れ、服が消えたぁぁぁ!?
「お前がヒロインになるのだよ!」
突然すっぽんぽんになって慌てふためく私に、男はそんなことを言った。
ほんの数分前。
クリスマスイブにもかかわらず部屋のベッドに寝転びながら、私はのんびり漫画なんぞを読んでいた。
平和。実に平和だ。
そうだよ、クリスマスイブだからって別に恋人とイチャイチャしなくてもいいじゃん。こうやって自分の好きなことをやっていれば、楽しむことはできるんだ!
と思いつつも、頭の中にぼんやり、この前まで恋焦がれていたセンパイの顔が浮かぶ。笑顔がステキで、優しくて、この人ならと勇気を出して告白したのに……。
まさか十歳以上お断りだなんて……。
って、ああ、ダメだダメだ。
私は頭をぶんぶんと振ってロリコン野郎の顔を追い払うと、弟の部屋から持って来た漫画の山を見つめた。
漫画なら私の部屋にもいっぱいあるけれど、どれも典型的な恋愛モノ。幸せなヒロインになれなかった今夜は、そんなのよりも弟が持っている少年漫画の方が読みたかった。
てなわけで、今夜は徹夜で読みまくるぞ。ペコポン星を侵略するでありますっ!
……ヤケになんてなってないぞ、ホントだぞ。
「ふっ、ウソだな」
ほへ?
なんかいきなり声が聞こえた。
上半身を起こして、きょろきょろと辺りを見渡す。誰もいない。当然だ。弟はデートで外出してるし、両親は海外へ出張中だもん(お約束)。
「……お前はなりたいはずだ」
気のせいかなと思ったのに、また聞こえた。
なんだこれ? それに「なりたい」って一体なんのことだ?
意味が分からないし、気味が悪い。クリスマスイブに怪奇現象って、どんな組み合わせだよ、それ!?
しかもこっちがパニくっているのもお構いなしに
「本当によろしいのですか?」
「構わぬ。やれ」
「はっ! ではシステム作動します!」
なんかよく分からないやりとりをオバケたちがやってるし!
なんだよ、システムって……って、うええええええええっ!?
不安になってベッドから降りた私の目の前に、アニメやゲームなんかで見かける魔法陣みたいなものが突如浮き上がった!
「召還ゲートオープン。いつでも行けます!」
来る!? なんか来ちゃううううぅぅぅ!?
「よし。では行ってくる」
来ちゃらめぇぇぇぇぇ!!
と、その瞬間。
何の前触れもなく、突如として私の服が消え失せた!!!
うわわわわわわ、なんだ、なんなんだこれ!?
思わぬ展開に慌てて私は右腕で胸を、左手で股間を隠す。
「ちっ!」
そして舌打ちが聞こえた方を見てみると、そこには長身痩躯、髪を短く切り揃え、赤を基調としたタキシードという派手な衣装もセンスよく着こなしているイケメンが、渋い表情をして立っていた。
「だ、だ、だ、誰だー、あんたーっ!?」
思わず右手で指差す。
すると男は途端に満面の笑みを浮かべて、ぐっと親指を突きたてた。
なんだよ、その「GJ!」みたいな仕草は……って、はっ!?
私はおそるおそる自分の胸元を見下ろす。
たわわに実った私のぱいぱいが、あろうことか丸出しだった。
「いやーーーーーーーーーー!」
自分の身体を抱きかかえるようにして、その場にしゃがみ込む。そんな私に男は笑顔のまま
「余はラノベ・サンタクロース。お前をこの世界のメインヒロインとするためやってきた」
と、ワケワカラナイ自己紹介をしたのだった。
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