異世界にいったら、能力を1000分の1にされました ~『破王』蹂躙の章~

枕崎 削節

第1話  登場人物紹介と南鳥島での事故

神建元哉   かみだて もとや  18歳。 182センチ 70キロ


 年齢の割には、フケた顔をしている。おかげで、妹の父親に何度か間違われることがあった。

 

 特殊能力は、魔力の吸収と放出 魔力暴走 身体強化 


 魔力量は無限に近いが、魔力を制御する事ができないため、一般に『魔法』と呼ばれる魔力のエネルギー改変は出来ない。


 そのかわりに、暴走させた魔力を自身の持つ膨大な魔力で制して放つことで、途轍もなく強力な攻撃を繰り出すことが出来る。


表向きは、国防軍特殊能力訓練学校の2回生。しかし、同時に国防軍予備役少尉で(十八歳に達しているので、普通に任官していても問題はないが、訓練学校に在籍中なので、名目上は予備役となる)実戦部隊の中核を担っており、既に幾度となく戦場を経験している。


 装備   25式自動小銃  

      実弾 500発 

      36式戦闘服   

      36式特殊ヘルメット(魔力通信可能)

      背嚢(標準装備一式)

      特殊半長靴

      制式ナイフ2本

       

 



 元橋 橘   もとはし たちばな  16歳、 154センチ 体重は秘密


 元哉が下宿している元橋家の養女。外見は中欧や東欧に多く見られる民族的な特徴を持っている。髪はプラチナシルバーで、瞳はエメラルド色。


 国防軍特殊能力訓練学校の2回生で、国防軍予備役准尉。


 現時点で日本国内に5人しか確認されていない魔法使いのひとり


 受精卵の段階で、六百年を生きる魔女によって天界から召喚された天使をその身に宿した。天使名は『ミカエル』。


 天使の力のおかげで、魔法制御力が際立っており、その知識と相まってどんな術式も解析した上で、より強力に作り変えることが出来る。


 姉のさくらと血は繋がっていないが、大の仲良し。元哉の事を慕っているが、なかなか通じなくてもどかしい思いをしている。


 胸が発育途上で、本人はコンプレックスを持っている。



 装備   37式特殊戦闘服Ⅱ型 タイプ魔法少女


      (白の装備 ブラウス 腰丈のローブ 膝丈のスカート 全て防刃仕様 黒のレギンス)


      37式特殊帽Ⅰ型 タイプ魔法少女 (白いつば広の帽子 魔力通信可能)


      市販のソフトレザーブーツ


      制式ナイフ1本(主に調理用)




 元橋 さくら  もとはし さくら  16歳  145センチ  40キロ



 国防軍特殊能力訓練学校の2回生で、国防軍予備役准尉。


 お子様体型で、やや茶色がっかた少し癖のある髪を肩にかからない程度に切りそろえている。


 キラキラした目が愛くるしく小動物ぽいその風貌から、同級生の女子から人気があり、可愛がられている。


 古流元橋派の師範代で、古武術の腕は『真の天才』と謳われ、その上で元哉から供給される魔力を用いた身体強化により、一個中隊程度ならば簡単に制圧する。


 装備   37式特殊戦闘服  (特殊能力軍標準仕様 サイズは特注)

       37式特殊戦闘帽Ⅲ型 タイプうさみみ


(レーダー波投射装置と赤外線センサー、音響ソナーを取り付けて、うさみみ型アンテナで捕捉する趣味全開の一点もの。よく予算が通ったものだ。)


       ナックル一体型アームガード(チタンとタングステン合金製)

       

       36式魔力擲弾筒。


(魔弾もしくは魔法弾と呼ばれ、魔力を圧縮して人工的に暴走状態を作り出し、そこから得られる高エネルギーを打ち出す兵器で、小銃レベルから迫撃砲レベルまで、威力を5段階に切り替えられる。アームガードにアタッチメントで取り付けて、体内の魔力を擲弾筒に送り込むだけで、お手軽高威力殺傷兵器になる)

 

        市販のソフトレザーブーツ(橘とお揃いだがさくらの方はお子様サイズ)


 

 さくらと橘の二人は、三月三日生まれで、その名前は、お雛様とお内裏様の左右に飾られている「左近の桜」と「右近の橘」に由来する。


 兄と橘が大好きで、特に元哉は体術訓練の良きパートナーとして尊敬している。


 性格はかなり気ままで、他の二人を振り回すことが多い。





                    【プロローグ】



 2020年、富士山の噴火によって、関東全域とその周辺に撒き散らされた『魔力』によって、特殊な能力に目覚める青少年が、相次いだ。


 彼らは、「特殊能力保持者」、通称『特S』と呼ばれ、能力の発現が確認された時点で、国防軍管理下の特殊能力訓練校〈特S校〉に入学して、能力開発訓練を行うことが義務付けられていた。


 2034年に第三次世界大戦が勃発。


 周辺国との戦争に否応なく巻き込まれた日本は、『特S』を戦力に組み込むことで、戦況を圧倒的優位に進めており、開戦から四年が経過した現在は、海域での小競り合いや、東南アジア戦闘域で敵国が仕掛けるゲリラ戦に対する、掃討作戦が実施されている。





 〈特S校)トップ3 神建 元哉|(かみだて もとや)、元橋 橘|(もとはし たちばな)、元橋 さくら(もとはし さくら)の三人は、ここ南鳥島の国防海軍基地に来ていた。

 

 この半年間、彼らは予備役として招集されて敵国の戦略ミサイル基地を破壊するなど、大きな戦果を上げており、まだ学生のためおいそれと階級を上げる訳にもいかないので、簡単な実験に参加すること名目に一週間の休暇を与えられたのだった。




                『成層圏重力場生成実験』


 国防軍の一部が強行に主張した、〈大量破壊兵器に対抗するための魔法兵器開発〉のための基礎研究を目的とするこの実験は、橘がその任にあたっていた。


 その概要は、静止軌道にある人工衛星をコアにして魔力を展開し、約二十Gの重力を発生させるというもので、将来はこの重力場で集積した太陽光を、ビーム兵器に使用できるか検証することが目的た。


 魔力で重力すら自在に操れる橘にとっては、それほど困難なミッションではないと、周囲は考えていたが、この実験で克服すべき最大の課題は衛星までの距離た。

 

 およそ三百二十キロメートル、どんなに強力な魔力でも届く距離ではない。そこで橘は、丸二日をかけて魔力を衛星まで転移させる術式を組み上げた。


   


 実験開始のカウントダウンの無機質な声だけが響く。

 

 術式の最終チェックを終えて、魔力を込めていく橘、これだけの長距離転移は彼女の持つ魔力の八割を消費する。




           5  4  3  2  1  「発動」


 その瞬間に合わせて、魔力を発動する。

 

 しかし、一瞬体の外に出掛かった魔力が、再び自分の中に戻ってくる感触。



 (不発?なぜ)


 このとき「発動」のタイミングに合わせて、成層圏にあった衛星は爆破されていた。誰が仕組んだのかは、分からないが、意図的に破壊されたことだけは、間違いない。


 コアとなるなるべきものが無くなって行き場を失った魔力が、橘の体内に逆流する。顔色を失い、痙攣を起こして意識を失う橘が倒れる前に、元哉が体を支えてゆっくりと横たえる。


 すぐに駆け寄ってきたさくらが


「兄ちゃん、はなちゃんを早く助けて、お願い!」


 日ごろの陽気さは影を潜めて、真剣な表情で元哉に縋りつく。


「安心していろ。すぐに助けるから、少し離れていろ。」


 さくらを下がらせてから、意識を失っている橘の気道を確保して、うっすらと開いている唇に自分の口を押し当てる。橘は、脂汗をかきながら、先程よりも強い痙攣を起こしている。


 もはや一刻の猶予もない、そう判断した元哉は


「吸収」


 と頭の中でごく簡単に唱えた。

 

 一気に自分の中に暴走した魔力が流れ込んでくる。脳天を突き刺すような激痛が走るが、魔力の暴走に慣れているだけあって元哉が意識を失うことはない。


 橘の魔力量と比べると、元哉の魔力量は圧倒的多い。小石と地球の大きさを対比するような規模の違いがある。こういうと橘の魔力量が少ないように聞こえるが、彼女自身も核兵器に匹敵するようなエネルギーを生み出すだけの魔力を持っている。


 元哉が持っている魔力量の桁がおかしいだけである。


 彼は、橘の魔力をすべて吸収して、自分の魔力ごと一気に放出すれば大丈夫と考えた。その考えは的中して、見る見るうちに、橘の様子が落ち着いてくる。



 元哉はそんな様子を見てから、自分の全魔力を一気に放出した。


 学校の教室ほどの部屋に途轍もない量の魔力が充満して渦を巻いている。その一部が暴走していて、時を追うごとにその範囲が広がっていく。


「ここは危険だ、外に出るぞ」


 意識のない橘を抱え上げてさくらに声を掛けた瞬間に、その部屋は白い光に包まれた。暴走した橘の術式の「転移」がこのタイミングで発動したのだ。

 

 橘とさくらの魔力は元哉が供給しており、三人が用いる魔力の質はまったくの同一。したがって、橘の魔力暴走が元哉の放出した魔力にも広がっていく。


 そして、それが臨界点に達しようとしたときに、距離も座標も破壊された「その場から転移する」という術式の発動を迎えた。

 


 モニターで様子を監視していた隊員が異常を告げてから、実験棟の警備兵が駆けつけるまでわずか一分半。

 

 そこには、無人の部屋とごく僅かに残された魔力の残滓だけが存在していた。




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