<≪狩喰魔⊸モノクロストローク

緋威 シン

現実編Ⅰ

第1話「序章」


‥今から数年前、東日本を中心に“カグマ”による猛威が日本全国に広まった。


彼等は人に擬態し、一定周期で人間の魂及び生命力(花)を喰らう妖魔(通称:花喰魔-カグマ)だった。


誰もが未知の脅威に恐怖を抱く中、非政府組織ヴァリアント・ハンター(異形狩り)によって鎮圧される。


生き残ったカグマ達は厳しい時代を生き延びるため、人に擬態し、やがて人間社会への適合を図った。


何とか人間社会に溶け込む彼等であったが、異形狩りの脅威や一定周期で訪れる“食事”という行為に追われていく…。



ブロォオオオオオオ‥‥


バイク音が静かな夜の街に響き渡る。


黒い頑丈な鎧スーツを纏った少女が、黒い大型バイクに跨り住宅地周辺の道路を走行していた。


少女の首に掛けられた紺碧のペンダントが、風に揺れていた。


「‥ヒノ山峠八十三番中央区、討伐目標を確認!」


「大至急、現地に急行せよ!!」


二十代くらいの青年の声が、ヘルメットに装着されていた無線機から響いた。


「了解。」


少女は返事をすると、すぐさま現地へと向かった。



――その頃、現地。



ザンッ!


夕闇に沈んだ景色の中。


分厚い蔓状の膜が、横にラインを描くように切断された。


その切断された膜の下には、ダイヤモンドのような結晶をした何かが、月明かりに照らされ輝いていた。


それは花のような形をしていた。


シュゥウ!


直後、蔓状の膜が修復されていく。


ザクッ!


ピキィーン!!


その瞬間を狙う様に、歪な剣が怪物の心臓部にある結晶のようなコアを破壊した。


「グゥアアア…。」


ドサッ‥


不気味な断末魔と共に、怪物は倒された。


黒のショートヘア―をした少年は、死んだ怪物の胸の中で割れた結晶の欠片に、手を触れた。


まるで手から結晶の光(生命力)を吸収しているかのように見えた。


そこで少年は自分に倒された怪物に向かって何かを呟いた。



しばらくして、前方方向から知らない少女が駆け寄ってきた。


少女はライフル型の狙撃用の銃器を抱えていた。


その少女は、先ほどバイクを走らせていた少女と同じ人物である。



「――――異形狩りか…。」


禍々しい緋黒の剣を右手に持つ少年は、近づいてくる少女を警戒する。


頑丈な黒い鎧スーツを身に纏った少女は、倒された怪物の横に立つ少年と向かい合う形で立ち止まった。


少年と少女の間の距離はおよそ30mくらい離れていた。



すると、少女が身に着けていた鎧スーツから、トーン高めの警告音と共に機械音声(女声)が流れる。


ブゥンブゥン…


「前方方向30m先、カグマの生体反応を確認。」


トゥルルルル


「暫定CA係数782‥。」



「討伐対象です――――――。」



「通報の内容とは違うけど、CA判定機がそう言っている以上、やるしかない。」


少女はそう言うと、持っていた銃を斜めに構えた。


ガチャッ


そして、銃口を少年に向ける。


「―――ヴァリアント・ハンターとして、あなたを討伐します。」




一方、VR技術を応用した“オンライン型通信制教育プログラム(OCEP)”が日本国内で開発・適用され、直接学校に行かなくても授業が受けられるようになる。



『‥仮想現実空間で構築された全く新しい環境!』


『家に居ながら色んな仲間たちと学園生活を充実できる“学園パウス”が、いよいよこの春、開校致します!』


TVでは水色のツインテールをしたリポーターが、VR技術を駆使した仮想現実空間=学園パウスについて宣伝していた。


『それに伴い、第一期生を募集します!』


『部活動やサークル活動、イベントも盛り沢山!アバターメイキングも自由に行えます!』


『応募資格は現在7~18歳のあなた!』


『政府公認のVRMMO型通信制教育プログラムを搭載した、小中高一貫の“多人数同時参加型オンラインスクール”!』


『さぁ、みんなで学園パウスへGO!』


後の“VRMMO型通信制教育プログラム(VRMMOCEP)”の前身となったこのシステムは、カグマと人間の共存を図る者たちの間でも注目を浴びることになった。



‥人間とカグマ。



種族を越えた交流が盛んになる中、双方の共存を好しとしない一部の暗部組織は、攻撃の矛先をVRMMOCEPに向ける。



狙われるカグマ―――。



崩壊する日常。



迫り来る脅威。



かげがえのないものを守るため、彼らは立ち上がる・・・。



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