限界突破!ドラスティー

竜宮世奈

第1話 「さぁ~て、ショータイムの始まりだ」



「つまらない世界だな」



 超高層ビルの屋上の端に座りながら、星1つ見えない、大都市奈古屋なごやの夜空を見上げ、マナは言った。長めの金髪をオールバックにし、真っ黒なスーツを着ている、その端正な容姿から大人びて見えるが、まだ10代の高身長イケメンである。


「つまらないですか?」


 傍で立っている、秘書のサカグチが言った。マナよりも2周りほど年上の男性で、キッチリした黒髪オールバックの、キリッとした眼鏡姿が凛々しい男性だ。


「あぁ」





 その遥か49階下――





 ――地上では、マナと同い年の高校生3人が、悪漢に追われていた。


「ヒャッハー!」


 あからさまな悪者であるモヒカンの男は、手からオーラの塊を放出させ、逃げ纏う制服姿の高校生達の足元に放った。オーラの塊は、銃撃のように、路面のブロックを破壊した。


「だからジェネシスの奴にケンカ売るのはやめろって言っただろ?」


 走りながら叫んだのは、タカシだった。

 黒髪の短髪。

 いかにもスポーツマンといった風貌だ。肩にスポーツバックを抱えて必死に足を動かしている。


「だって、あいつら中学生相手にカツアゲしてたんだぜ? それに、ジェネシスは許せねぇんだ」


 そう答えたのは、赤い髪をハリネズミのように立てている比較的小柄な体格の少年、この物語の主人公、ナヅキだ。


「だからって、わたしまで巻き込まないでよね」


 続いて、落ち着いた可愛らしい声で言ったのは、今追われる方の紅一点、アサ。

 小柄で細身、黒髪のショートカットが良く似合う、若干サブカル女子っぽい雰囲気を持った少女である。

 短めの制服のスカートの裾を揺らして細い脚で暗い路地裏を駆ける。


「アサを巻き込んだのは悪いけどさぁ、うわぁ!」


 悪漢が放ったオーラの衝撃で、ナヅキがよろめいた。


「ヒャッハー! ほらほら、逃げて見ろよ」


「クソ、やつら遊んでやがる」








 再び、ビルの最上階。



「つまらないとは、なにかご不満ですか?」


「とくに不満はない」


「ならば、何故?」


「なんの面白味もない世界だ」


「そうでございましょうか?」


「あぁ、例えばだ」



 マナは、自らの眼球にオーラを集中させ、階下を見下ろした。すると、裏路地で必死に逃げる高校生3人の姿を発見した。



「あの、追われている3人の高校生は、エヴォルヴだろう。一方、追ってる側の人間はジェネシスだ。あの高校生3人は、殺されるだろう。散々なぶられたあと、コンクリート詰めで海の底といったところか。どうあがいたって、その事実は変わらない。この世界もそれと同じようなものだ。ただ、どうしようもない普遍的な事実が淡々と続くだけの、つまらない世界だ」


「ふむ」



 サカグチも、オーラを使って視力を高めた。そして、追われる3人の様子を見た。



「変えられるのではないですか?」


「無理だ。勝てないし、逃げられない。エヴォルヴの味方をするジェネシスなどいない」


「そうですね。それならば、例えば……マナ様が、助けたらどうですか?」


「俺が?」



 マナは、サカグチの顔を見た。



「はい。そうすれば、あの少年達は助かるでしょう。事実は変えられます」


「くだらん」



 マナが再び視線を落とし、地上を見ると、高校生3人組は袋小路でヒャッハー達に追い込まれていた。


 赤髪の少年が、地面に落ちていた鉄パイプを手に取った。









「まだ抵抗する気か、ヒャハハー!」



 モヒカンとスキンヘッドは、オーラを自らの拳に込めた。

 オーラが使えないエヴォルヴがこれで顔を殴られたら、1撃で頭部が吹き飛ぶだろう。


 ナヅキは、鉄パイプをブンブンと振った。



「タカシ、アサを頼む」


「あぁ」



 タカシはアサを隠すように前に立って構えた。



「ナヅキ、もうやめなって。殺されるよ」


「おう、女の方は物わかりがいいな、まぁ、どっちにしても殺してやるけど、ヒャハハハハ」



 ヒャッハー達は下品な笑い声を上げた。



「クソどもが! 俺は、お前達の言いなりにはならねぇんだよ!」


「エヴォが何言ってんだ。お前達が、俺たちジェネシスに勝てるわけねぇだろ。この世の中は、お前達の事なんて人間だと思っちゃいねぇよ。俺らはお前ら何人殺したって罪にはならねぇんだからな。この前なんてエヴォルヴの子供を――」


「黙れ!」



 ナヅキは、鉄パイプを地面に打ち付けた。



「そんなクソな世界なら、俺が変えてやるよ」


「ギャハハ、何の力も持っていないお前が世界を変える? 冗談にもほどがあるぜ」



 モヒカンとスキンヘッドは腹を抱えて笑っていた。


 それを見たナヅキは、鉄パイプを持って殴りかかった。









 マナは、上半身を傾け、そのまま頭から飛び降りた。



「マナ様!」



 サカグチも続いて屋上から飛び降りた。

 マナは力を開放すると、身体が緑のオーラに包まれた。そして、燕のように鮮やかに滑空した。

 









 ナヅキが鉄パイプを思いっきりヒャッハーに向かって振り下ろそうとしたまさにその時、瞬間的にマナが間に割り込んで鉄パイプを片手で受け止めた。



「え……」



 ナヅキは、何が起きたのか分からなかった。


 目の前に、突然、金髪のイケメンが現れたのである。


 しかし、すぐに理解した。こんなことができるのは、ジェネレータの能力を持ったジェネシスで、つまりそれは、イコールこいつは俺の敵。


 更に増えた危機。



 その直後、背後で、枯葉が音もなく落ちるように、静かにカサグチが着地した。誰も気づいていない。



「ヤバい……またジェネシス」


「しかも、なんかヤバそうな奴だぞ」



 タカシとアサはいよいよ絶望した。



「くっ、離せよ」



 ナヅキは思いっきり力を込めたが、鉄パイプは全く動かない。金髪のイケメンは無表情でナヅキの事を見つめている。



「なんだよお前は……!」



 ナヅキの手は力を入れ過ぎて震えていたが、マナの手はビクともしない。



「お前は……」



マナは、ナヅキに対して何かを言おうとした。が、



「何だてめぇは、それは俺たちの獲物だぞ」



 モヒカンが口を挟んで遮った。


 マナは、鉄パイプを握っているのと反対の手をスッと一振りすると、まるで元々頭と胴体がくっついていなかったかのように、モヒカンとスキンヘッドの頭部がコロっと落ちた。


「なっ……」


「やれやれ、後始末をするのは私ですよ」



 サカグチは眼鏡をクイっと上げた。ナヅキ達はあんぐり口を開けたまま動けなかった。



「後始末など必要ない」



 今度は手の平をかざすと、モヒカンたちの身体が燃え上がり、一瞬にして灰となった。



「話を戻そう。お前は……」


「なんだよ」



 ナヅキは全く怯んでない様子だ。



「世界を変えれると、思っているのか?」



 ナヅキは、ギっとマナを睨んだ。



「あぁ、こんなクソッタレな世界、俺が変えてやる! ジェネシスをぶっ倒して今の体制を壊し、力を持ってる奴も持ってない奴も平等に幸せに暮らせる世界に、俺が変えるんだ」


「なんの力も持っていないお前がか?」


「力がなくったって……絶対に変えてやるんだ!」



 少年は、淀みのない澄み切った瞳でマナを睨んでいた。



「ここで俺が一振りすれば、お前は終わってしまうのだぞ」


「俺は終わらない。お前も倒してやる」



 ナヅキが再び鉄パイプで戦う素振りを見せると、マナは軽く手首を捻って、鉄パイプを曲げた。



「着いてこい」



 マナはくるっと身をひるがえした。



「は?」


「俺と一緒に来い。後ろの2人もだ」


「何で俺がお前と行かなきゃならないんだ」



 ナヅキはダンダンと地面を踏んだ。



「黙って着いてこい。首を飛ばすぞ」


「誰がいくか!」



 そう言うナヅキを、タカシとアサが制した。



「ナヅキ、ここは大人しく着いていこうぜ」


「あいつ、さっきのDQNとは違うよ。色んな意味で」


「ふん、ジェネシスのいう事なんて聞けるか!」


「どこまでも強情な奴だな」



 そう言うと、マナは軽くナヅキの後頭部を叩いた。



「がっ」


「ナヅキ!」



 倒れ込むナヅキを、タカシが支えた。完全に、意識を失っている。



「すぐに目を覚ます。サカグチ、車を回してくれ」


「かしこまりました」



 サカグチは一瞬のうちに飛んで消えた。



「あなたは、誰?」



 アサが不振そうに訊ねた。



「ユニバーサル・ドラスティの社長、マナだ」











 サカグチが用意した黒塗りのリムジンに、3人は乗っていた。ナヅキは、まだ気を失ったままだ。



「あのドラスティの社長が、同い年だったなんてね」



 アサはじーっとマナの顔を見つめている。



「ナヅキがそれ知ったら、また暴れるだろうな」


「何故だ?」



 マナは長い脚を組んでゆったりとした姿勢で座っている。



「だって、ドラスティってこの羅刹区を統治してる企業でしょ? 目の敵にしてる、彼」


「そうか。ジェネシスを倒してこの世界を変えるとか言ってたからな」


「そう、その最初のターゲットとなるのが、まず第1にこの羅刹区のトップ、つまりあなた」



 アサは、人差指をマナの鼻梁にかざしてくりっとした大きな瞳でマナを見つめた。



「なるほど」



 マナは表情を一切変えないので、アサ達は考えが読めなかった。



「あの、俺たちはどこに連れて行かれるんですか」



 今まで黙っていたタカシが質問した。



「奈古屋科学館だ」


「科学館で、何をするんですか」


「お前達をジェネシスにする」


「え……、えぇ~!?」



 2人は声を揃えて叫んだ。



「やれやれ」



 サカグチは、眼鏡をクイっと上げた。

 自動運転のリムジンは、網の目になっている光の街をすり抜けて科学館に向かって行った。











 科学館は、2つの長方形のビルの間に大きな灰色の球体が挟まっている、不思議な外観をしていた。

 一般人、もちろんエヴォルブなど立ち入ることが出来ず、あの大きな球体の中で何が行われているのか、謎であった。


 入り口のゲートでサカグチが顔を出すと、この警備の厳しいゲートを無条件で通してくれた。顔パスというやつだ。



「人体実験でもされるのかな」



 アサは言った。



「おいおい、やめてくれよ」



 タカシは、まんざらでもなくビビッている。

 リムジンはそのまま建物の中に入ると、広いスペースでスーツ姿の男性達が数人と、白衣を着た白髪の男が出迎えてくれた。



「これはこれはマナ様、ようこそ科学館へ」



 白衣の白髪は、30代そこそこでまだ若そうだった。サカグチと同じ年くらいだろうか。



「おや、この少年達はお友達ですか。そのお嬢さんは彼女で? 」


「バカを言うな。ハギワラ、エリア42に案内してくれ」


「エリア42に……かしこまりました、ククク」



 そう言うと、スーツの男たちはどこかへ消えていった。

 ナヅキ達は、いくつもの厳重なゲートを潜り、エレベーターで地下深くまで潜った。ナヅキは、タカシの背中の上で気持ち良さそうに意識を失っている。



「なぁ、アサ、お前怖くないのか?」


「全然」


「この状況で?」


「うん。タカシ、あんたがビビり過ぎなのよ」


「いや、それは絶対にない」



 タカシとアサがヒソヒソ話しをしていると、エレベーターはポーンという音を立てて止まった。扉が開くと、そこには地下とは思えないほど大きな空間が並んでいた。そこは広いホールのような構造になっており、清潔感がある白い壁に囲まれ、そのなかに謎の設備が所狭しと並んでいた。



「マナ様、今日はただの見学ツアーではないのでしょう?」



 ハギワラと呼ばれた白衣を着た白髪がニヤニヤして言った。



「そうだ、こいつらをジェネシスにしてくれ」


「おぉ、とうとう私の研究の成果を試す時がきたのですね。ククククク」



 ハギワラはよほど嬉しいのか、小躍りしているように身体を左右に揺すっている。



「やれやれ……」



 さすがのクールなサカグチも、頭を抱えた。

 アサは表情を変えずに、周りの設備を眺めていたが、タカシはひどい二日酔いの時のような絶望的な表情をしていた。






 この世界は、2種類の人間に分かれていた。

 特殊能力を持つジェネシスと、特殊能力を持たない所謂普通の人間、エヴォルヴである。この世界は、ジェネシスが優位に立ち、エヴォルヴは奴隷同然の扱いを受けていた。ジェネシスの子はジェネシスとして生まれ、エヴォルヴの子はエヴォルヴとして生まれる。それに例外はなく、生まれながらにして優劣が決定的に決まってしまう。それが、この世界の定説である。が……





「ジェネシスになれるって、ホントですか?」



 それが本当なら、世界がひっくり返るくらいの事実だ。



「あぁ、現在このハギワラが研究しているが、ほぼ完成しているといってもいい」


「あぁ、短い人生だった」



 タカシはガクッと肩を落とした。



「どうしたのよ?」


「だって、こんな事実知っちゃったら、もう生きて帰れるわけないだろ」


「タカシは見かけによらずビビりだよね」


「マナ様、さすがにそれは……」



 サカグチが言った。が、



「いいじゃないか、遊び心は必要だぞ? ククク」



 ハギワラが制した。



「後始末をするのは私なのだぞ」



 サカグチはそう言ってそっぽを向いてしまった。



「そいつが目を覚ましたら、作業を開始しよう」



 ナヅキは、よだれを垂らして寝ている。







「はうぁ!」



 ガクッと身体を揺らし、ナヅキは目を覚ました。



「はっ、ここは?」


「おはよ」



 アサが顔を傾けてこちらを見ている。



「アサ、無事だったか。よかった。で、ここは?」


「奈古屋科学館の中だよ」


「なんで科学館に?」



 ナヅキの目の前に、マナが足を組んで座っていた。



「お前は……どういうことだ?」


「お前達を、ジェネシスにしてやる」


「え……」



 ナヅキは席を立ち、マナの元まで歩いて行った。



「俺も、チカラを持てるってことか?」


「あぁ。欲しかったんだろ? 世界を変える力が」


「本当なのか?」


「本当だ。そんなつまらない嘘はつかない」


「ナヅキ、そいつは……」



 タカシが立ちかがった。



「ユニバーサル・ドラスティの社長だぞ。この羅刹区のジェネシス達を収めている長だ。それでも、いいのか?」



 それを聞いて、ナヅキは目を見開いた。



「お前、そうなのか?」


「あぁ、そうだが?」



 ナヅキは、更にマナに近づき、顔をひっつけた。



「いいのか? 俺がチカラを手に入れたら、お前をぶっ倒しに行くぞ?」


「できるならな」



 マナは顔を傾けて人差指でこめかみを押さえた。



「やってくれ」



 マナを睨みながらナヅキは言った。ハギワラはニヤリを笑った。



「じゃあ、俺もやる!」



 そう言ってタカシもばっと立ち上がった。



「当たり前だ、拒否権はない」


「あらら、そうなのね」



 ガックリするタカシ。



「もう諦めなよ、タカシ」


「ううう……」



 アサになだめられると、タカシはしゅんとして席に着いた。



「では、始めようか」



 ハギワラは待ちわびたように席を立つと、部屋の中央の設置してある怪しげな設備に向かって歩き出した。



「まずは赤髪の君から。着いて来なさい、ククク」


「おう」



 ナヅキはハギワラの言う通りに着いていき、設備に備え付けられているベッドに顔向けになった。



「ちょっと針を刺すから痛むけど、我慢するんだぞ」



 ハギワラはきらっと光る細長い針を、ナヅキの肩の辺りに刺した。その後、色々と身体に取り付けられると、上からベッドを囲むようにガラスの壁が降りて来て、ナヅキを囲んだ。



「さぁ~て、ショータイムの始まりだ。ミュージック、スタート!」



 抑揚をつけて歌うように言うと、ハギワラは躍るような動作で大きな赤いボタンを押した。その瞬間、周りの機械が大きな起動音と共に緑色の光を放ち始めた。ナヅキを囲むガラスの壁の中は光に包まれ、中は見えなくなった。

 ハギワラは、指揮者のように両手を緩やかに振っている。


 マナは、なんの感情も持たないように無表情でその光景を見つめていた。


 光がおさまり、機械の音が止まる。ガラスの壁が上に上がって行くと、ベッドの上で仰向けになっているナヅキの姿が見えた。

 タカシとアサは、息を飲んでその光景を見つめていた。

 ハギワラがナヅキに近づき、身体に取り付けられている様々なケーブルを取り除いた。



「気分はどうだい、赤髪くん?」


「ううん……、なんか、身体が軽くなった気がする」


「ほう」



 ハギワラは顎に手を当てて暫く考える素振りをした後、ナヅキの手を取って起こした。



「では次、爽やかな君」



 ハギワラはタカシの方に向かって手の平をかざした。



「お、俺?」



 タカシは、完全に腰が引けていた。






 この要領で、3人は同じ様に謎の機械でよくわからない電気のようなものを身体に流された。

 3人は、少しボーっとした様子で椅子に座っている。



「ホントに、これでチカラを手に入れたのか?」


「ハギワラの研究が正しいのならな」



 そう言って、マナは白いテーブルの上に缶コーヒーの空き缶を置いた。



「赤髪、ナヅキと言ったか」


「なんだ?」



 マナは親指と人差し指を立て他の指を折り曲げた、所謂ピストルのポーズを右手で作った。それを空き缶に向けた。



「身体のオーラを指先に集中させ、そして放て。この時、頭で拳銃を打つイメージを思い浮かべるんだ」



 マナの指先から枝豆ほどの大きさの光の塊が飛び出し、空き缶を吹き飛ばした。



「お、俺にも出来るのか?」


「やってみろ」


「お、おう」



 ナヅキは手でピストルの形を作り、空き缶に人差指を向けた。そして、指先に力を込めた。と、次の瞬間、指先からレーザーの様にオーラが飛び出し、空き缶を焼失させた。



「おおお?」


「これ、昔の漫画で読んだ事ある」



 アサは少し気分を高揚させて、瞳を輝かせながら言った。



「ふん、まだまだ使いこなすには訓練が必要だな」



 ナヅキは、目を見開いて自分の指先を見つめている。



「マナ、俺は本当にチカラを手に入れたんだな」


「そうだ。正確にはこの特殊能力をジェネレータという」



 ナヅキはすくっと立ち上がった。



「なぜ、俺にチカラを与えた?」



 マナは、少し考えた。



「分からない」



 その通り、マナは、自分でも何故このような事をしたのか、理解出来なかった。自分の深層心理の中で深い意味があるのかもしれないし、また全く意味のないただの気まぐれなのかもしれない。



「まぁ、いいや」



 ナヅキは再び指でピストルの形を作り、人差指をマナに向けた。



「俺は、このチカラで、このクソッタレな世界を変えてやる。そのうち、お前をぶっ倒しに来る」


「あぁ、出来るならな」






 サカグチは、先ほどからずっと頭を抱えていた。






 この、マナの思い付きで起こした行動が、世界を劇的に変える。

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