エピローグ 未来は。
『こちら国際ナノビジョン、帝都フライア皇帝広場前中継席です。
本日エルドラシア帝国帝都で凱旋式典が行われております。目抜き通りにえんえんと並び続く、この壮麗なる花の神輿のパレードは、先の
この戦いにおいてほぼ一千年ぶりに、エルドラシア帝国は皇帝陛下自らが参戦。
煌帝国の女帝機を圧倒し、植民星マルスとの紅鉱貿易優先権を勝ち取っております』
「うわ、派手派手しいなぁ。何あの山車みたいな乗り物。けばすぎるぜ」
ニンニクだの干しハーブだのおたまだのしゃもじだの。
雑然とモノがぶらさがってる狭い台所で、オレは赤い前髪をかきあげながら、ずずっと合成コーヒーをすすった。
「あちち」
姉さんのお下がりであるピンクのワンピースにこぼしそうになって、あわててカップを卓に置く。
肘をついてる卓にかっちり嵌っているちっさな四角い画面に、
『みなさま、たった今、親衛隊に守られた女帝陛下が凱旋門をおくぐりになられました。銀髪碧眼のお美しい陛下のお姿が見えます。陛下が、門を抜けられました!』
天界下界問わず、全世界に発信している映像。
ナノビジョンの中で、番組の実況アナウンサーがここぞとばかりに語気に力を込める。
『今、女帝陛下が広場から宮殿へ飛び立ちます! 青き宝石をちりばめた、美しい
画面に映るエルドラシアの女帝陛下は、息を呑むほどの絶世の美少女。
目つきは悪いけど、鼻血出そうなくらい美少女。
その右肩に顕現している機霊の神々しさといったら……。
「新皇帝機
まとう衣も輝く鎧も、女帝の機霊にふさわしいきらびやかさだ。
『美しい翼が天を舞いながら宮殿へ向かっております! これこそ、完成された美! これこそ、女神!』
オレは向かいにどっかり座ってる白髪のジイさんを、チラリズム。
シング老は、卓に映っている映像にはとんと無関心だ。
右目に嵌めた拡大鏡で、俺が今回持ってきた蒼い結晶を鑑定している。
「ぬう、ロッテくん。これは……」
「エルドラシアの皇帝親衛隊は、みんな翼にそいつをつけているようだぜ」
「やはり輸入品じゃな。
「らしいな。取り外しは簡単みたいだ」
蒼い結晶は、たった今、オレが持ち込んだ。
一週間前、エルドラシアの皇帝親衛隊に襲われたときに、どさくさまぎれに拾ったものだ。
熱玉少年の暴走機霊に吹きとばされて、落下したところに先客がいた。
どちゃりとそこに突っ込んだオレ、衝撃でぽろっと相手の翼からおっこちた蒼い結晶を、思わず拾っちゃったんだけど。
直後、金髪碧眼の帝国騎士様とミッくん両方から、ビンタを食らった。
『胸をつかむな変態!! 揉むとは何事だ!!』
『ロッテ!! 私というものがありながら!!』
いやその。
鎧がはげてた騎士さまのお胸をクッション代わりにしちまったのは、不可抗力だったんだよ。
そして本能的に手がわきゅわきゅ動いちまったのは、正常な男の反応だと思うんだよ。
そう、オレは正常だ。
『ロッテ! 今すぐさっきの報酬を! 私への愛の証をくれ! 口付けさせろ!』
『ややややめろミッくんひっつくな! 騎士のお姉様がドン引きしてるじゃないか! あああっ! お姉様待って! ににに逃げないで! 俺を見捨てないでくれえーっ!』
『愛してるロッテー!』
『ぐぎゃああああ!』
……。
えっと。
ほ、ほっぺたに一度ぐらい男からのチューを許したからって、け、決してそっちの道に足を突っ込んだわけじゃ、なななないんだぜ!
っていうかその騒ぎのおかげで、騎士のお姉さまたちからは見逃され……いや、がっつり無視されて避けられたし。結晶を一個失敬したことが、バれずに済んだわけだったりする。
「その結晶一個で、ど、どうかな?」
「ほうほう。今までのツケ分も、今回の費用もこれで清算でええぞ」
「おお! やった!」
一個で結構いい価値なんだな。
エルドラシアの新型皇帝機はこの蒼い結晶を左右七個づつ、計十四個もつけていると、さっきナノビジョンのアナウンサーが説明していた。
帝国の力はすごい、と言わんばかりに。
新型皇帝機は先日全世界に向けてお披露目されたばかり。最新の融合型で、主人の生命エネルギーを吸収するという、融合型のデメリット機能を完全にOFFにできる。
あらかじめ別のものからエネルギーを蓄えておいた蒼い結晶で、消費エネルギーをまかなうことができるデバイスを持ってるからだ。
つまりお手軽に結晶をたくさんつけまくれば、計測不能域の高出力も可能。
翼の収納時においては、蒼い結晶は主人の背中にひっついている吸盤のごとく見えるらしい。
オレはほうっと嘆息して、苦くてまずいコーヒーをすすった。
「融合型はどんどん進化するなぁ。古代において分離型機霊を造っていた技師たちは、よもや融合型が主流になるなんて思いもしなかったろうよ。初めてアルゲントラウムが造られたとき、融合型はスペックすごいけど人喰いだからダメダメだって、みなされたらしいけど。現代じゃあ、分離型はほとんど絶滅してるもんな」
うちのミッくんは665歳。ほぼ、分離型機霊の最後のモデルだ。
「やっぱり古いもんは、淘汰されちまうのかねえ……なあじいさん、オレ思うんだけど……」
にが……。
合成コーヒーって、ほんとマズいなぁ。にがいにがい。
「なんで帝国は、黄金のアルゲントラウムにその蒼い結晶をつけてやらなかったのかな。もしそうしてたらオレのミッくんみたいに、また現役バリバリレベルになったろうし。人形皇帝だって、下手に寿命を縮めなかっただろうに」
「ふーむ」
シング老は、そこで初めて卓に嵌ったナノビジョンを覗いた。
「この新しい女帝陛下……おそらくマレイスニール帝の五十体目のクローン体じゃろうなぁ。本来ならば、先の皇帝が崩御されてから、次のクローン体が覚醒させられるはずじゃが。何らかのシステム・アクシデントで、はように目覚めてしまったか。それとも、誰かに目覚めさせられたか……」
だれかに目覚めさせられた? てことは、新女帝陛下の裏には、黒幕がいるのか?
変革を望んだ、誰かが。
「帝国は、十世紀にわたって人形皇帝のシステムを維持してきた。今までそれが持ちこたえたことこそ、異常に思えるのう。人間は飽くもの。新しき物を求める生き物じゃ。停滞するのをやめ、変革の動きが出てくることこそ、自然な動きじゃよ」
「そういや、高祖帝のクローン体は、高祖帝が自ら命じて造るよう命じたもの。おのが御世が永遠に続くよう、百体以上造らせたとかなんとかって聞いたことあるぜ。帝国的には、ちょうど半分ぐらいでいけにえシステムを打ち止めにできて、めでたしってことなのかねえ」
「帝国の中枢で実際に何が起こったのかわからぬが、まあ、変革派が勝利した、ということかのう。そして変革を望んだ者たちは、古きものの象徴であったアルゲントラウムを破壊することで、まっさらの新しい国を生み出したかったんじゃろうなぁ」
古きものとて、新しい物に生まれ変われるのじゃが。
ジイさんは寂しげにそうつぶやいて、卓の隣の棚を見やった。
本やらブタの貯金箱やら置いてあるそこに、小さな3Dの立体映像オブジェがある。
にっこり顔の白髪のお婆さんの全身像だが、まるで生きている妖精のように活き活きとポーズを変える。アニメのフィギュア人形のようなポーズを取るのがちょっと気になるけど、察するに、ジイさんがこのお婆さんの映像をリフォームしたか何かで造った、幻影像なんだろう。
「しかしなぁ……真実はどうか解らんぞ。あの帝国の内情を隠すヴェールは相当に分厚い。あの女帝陛下自身が、かなりの実権を持っておる可能性もあろう。なにせ、覇道を行った高祖帝のコピーじゃ。性格も性癖もそっくりじゃろうて」
たしかになぁ。事情を知ったら率先して、先代のクローン体を排除しそうな雰囲気ではある。
まあともかくも、とジイさんはナノビジョンの中の女帝の姿を見てつぶやいた。
「融合型はこれからも進化していくじゃろう。主人が死ななければ取り外せないという仕様も、いずれ克服するじゃろうて」
え。そうなると、分離型と変わらなくなるような。
いつか二つの型が統合するとか、そんなことが起こるってことか?
「うんまあ、機霊機を取り外せるのって、すごくいいと思うぜ?」
今の俺は、非常にすがすがしい気分。
メンテとさらなる改造補強のためにミッくんを背中から下ろして、テルに預けてるからだ。
背負う形の機霊機って結構重いんだって、実感しているところである。
分離型だったら、好きなときに完全に独りになれる。それがいい。
オレがこう思うのって、日々ミッくんにベタつかれてるせいなんだろうなぁ。
あのミッくんがもし融合型だったらと思うと。恐ろしくて、夜も眠れな――。
「ぁぁぁぁあああああああああ!!」
「う?!」
「テル? どうしたんじゃ?」
「ロッテさん! 早く背負って! 機霊機背負ってえええ!」
地下の隠し工房から、テルがオレの機霊機を抱えて駆け上がってきた。
目玉かっぴらいたすごい鬼気迫る表情で、俺に機霊機をどずんと背負わせる。
とたんに右肩にイケメンな相棒が現れた。
「どどど、どうした?!」
「ミッくんが、今すぐロッテさんに会わせなかったら、合掌翼ぶちかますって駄々こねてええ」
「ひっ? 合掌翼って、今回注文した新機能じゃん。もうつけてくれたのかっ」
「そ、そりゃあ、優秀な助手がいっからさぁ。そこはもうちょちょいと……」
『ロッテー! いとしの君! 会いたかった! 私たちは、もう二度と会えないかと……!』
みみみミッくん! わざわざテルにつけてもらったばかりの新能力を、脅しに使うなよ!
ていうか俺たち。
「離れてまだ一時間も経ってねえだろうがあああ!」
『テルの助手がっ……わた、私をいじめるんだっ……』
「うがふっ」
情けない顔でオレの腰にタックルしてしがみついてくるミッくん。
なんだよこの上目遣いのうるうる目はっ! かわいいけどきもい! 果てしなくきもい!
「テル……こいつの性格も今すぐ直してくれ……後生だ……」
「無理だよロッテさん」
ハハハと、テルが苦笑して冷や汗たらんしながら、ほっぺたを人差し指で掻く。
「ミッくんは純粋な機霊じゃなくて、どうもおたくの家で実際に人間として生きた、ロッテさんのご先祖様? らしいから……」
「ええええっ?!」
「つまりなんていうか、AIじゃなくて本物の人魂が、この機霊箱に封印されてる稀有な形態っぽくて……」
『もう嫌だ! 改造は嫌だロッテ! 家に帰りたいっ。私の城にっ……』
ミッくんが……オレの、ご先祖だとお?!
そ、それで父上も母上も姉さんたちも、ミッくんがオレを後継者に指名したとき、反抗できなかったのか!
――「おい! まだ部品を全部取り付けてないぞ」
階下から颯爽とテルの助手が上がってきた。
腕まくりの作業服姿。腰に平たいベルト状の道具袋を巻き、両手にはかっこいい革手袋。機霊用のちっちゃな部品とスパナを持っている。頭には、テルとおそろいの拡大鏡とゴーグル。
テルが数日前に雇ったばかりの、新米助手だ。
目の覚めるような銀の髪のまぶしさに、オレの目が一瞬焼かれる――。
「ほうほう。その部品は反動調節弁じゃな。ミッくんよ、おぬしの翼につけないと、ロッテくんが大変なことになるぞい」
『ででででもっ』
「いやぁ、俺の助手が、新しい部品を見て怖がって泣きだしたミッくんを見てさ、根性が足らねえって切れて、ひっぱたいちゃってさあ。てことでロッテさん、いつものように一緒に作業に立ち会ってくんねえかな?」
テルがごめんごめんとへこへこ頭を掻くその隣で。
「ふん、軟弱者が。大年寄りの機霊のくせに、子供のように泣くなど情けない!」
新米助手が呆れ顔でミッくんを見下げて腕組みする。
新米助手はとても目つきが悪い。顔はナノビジョンに映ってる女帝と、瓜二つだ。
すなわち女の子とみまがうっていうか。いや実際に女の子でもある……んだよな。
エルドラシア帝国に伝わる伝説では。
かの帝国の高祖帝は、完全なる者。陰と陽、光と闇が打ち合わさりし完璧なる存在、とかなんとか、褒め称えられている――。
「テルにアムルくん。ミッくんを仕上げる前に、茶でも飲んでひと息入れんかね?」
シング老がこぽこぽとポットから茶色い液体をカップに入れて、新米助手に差し出した。
「泥水か!」
とたんに新米助手は目を輝かせて、甘ったるい香りが漂う飲み物を受け取った。
その隣でじっちゃん俺のはー? と、御大の孫が口を尖らせる。
「テルはいつものコーヒーでよかろう。自分で入れなさい」
待遇違いすぎねえ?! と目を剥きながら、オレが飲んでるのと同じインスタント合成コーヒーの粉をざっくざっくカップに入れて、魔法瓶でどぽどぽ湯を入れるテル。
くそまずいコーヒーの香りは苦そうな香り。
でも新米助手が飲んでる甘い飲料の香りは、ほんとにおいしそうだ。
ジイさんが裏庭で栽培している、なんとか豆っていうのを主成分にしている、特製合成飲料らしい。
『これよりエルドラシア女帝陛下が、次の戦に挑む息込みを表明なさいます!』
卓に嵌ったナノビジョンからのアナウンサーの声に、一瞬、新米助手がびくりとする。
だがその怯えのような表情は。
カップから立ち上る甘くとろけそうな匂いの湯気で、ほろっと溶かされた。
「おいしい……」
――「あー。いいにおい~♪」
そこに、先っぽが禿げた尻尾をぴんと立てたむら毛猫が、鼻歌混じりに入ってきた。
プジちゃんだ。
シング老が、こらこら飲んではいかんぞ、と機霊猫に釘を刺す。
「こいつは特殊配合で、アムル専用じゃ。もうなめたらいかんぞ、タマ」
「んもう、わかってるわよぉ。まさかカカオ豆と仙丹のブレンドだって思わなかったからぁー」
プジちゃんがゴロゴロとのどを鳴らして、ジイさんの足にぬそーと尻尾を絡みつかせる。
そうそう、カカオ。カカオだよ、豆の名前。
……ん? 仙丹って、なんだ?
「通りであたし、かわいい幼女に若返っちゃったわけよねえ」
「じっちゃん、だからこいつはプジだってば……」
がっくりするテルを尻目に、御大は新米助手に微笑んだ。
「アムルくん、あとひと月ほど、毎日飲みつづけるとよいぞ。内臓が丈夫になって、百歳まで生きること間違いなしじゃ」
「ひと月? もっと飲み続けたいんだが。できれば一生」
「ほうほう。そうしたらおぬし、赤ん坊になって消滅してしまうぞい。では仙丹の成分を抜いたココアを作ろうかのぅ」
ここの御大って……ほんと一体何者だろう?
機械だけではなく、一風変わった医術の知識も持ってるようで、銀髪の新米助手は現在元気もりもり。とてもいったん心臓が停止して、死亡確認された身だとは思えない。
新米助手がいったん死亡した直後、プジちゃんは大爆発を起こして、帝国騎士たちの目をくらました。
『アルゲントラウムと元皇帝は、槍の破裂を止めようとした黒機霊を巻き込んで、爆発。自身が放出した黄金の熱で蒸発してしまった』ように、見せかけたんだ。
テルが造ったプジちゃんも、たいしたもんだ。
このジイさんと孫、どこの島都市から流れてきた技師なんだろうなぁ……。
「よし、テル。休憩終わり。引き続き、修行に戻るぞ。僕にハンダ付け裏技術その3を伝授しろ」
「うっしゃ! アムルは筋がいいからな。すぐに俺やじっちゃんみたくなれるぜ! そうそう、今度遺跡に発掘しに行こうな」
「うむ。それは楽しみだ」
『い、いいい嫌だロッテ!』
ミッくん。腰にしがみつかれたら、動けねえよ。おい。
『こいつらまた私に、何か変なものをひっつけようというのかっ。しかも未熟な手でっ』
「失礼な。僕は生まれながらに言葉を喋れたほどの完璧なる者。すごく器用なんだ。さっきもちゃんと、部品をつけてやっただろう」
『ひいいい!』
新米助手が片手のスパナ示してすごんでくる。技師ルックいいなぁ。
オレもいいかげん女装止めたいよ。
ん? 融合型が進化して分離型と統合するなら、男の機貴人が復活するんじゃねえか?
おお! いつかこの女装生活、終わりにできる未来が来るかもしれねえ!
オレも革ジャンジーンズで、びしぃとかっこよくキめられる日が。
未来は。
オレの未来はきっと、明るい――!!
背中のミッくんを地下に連れて行くにはちょっと骨を折った。
怖いを連呼する情けない機霊に、オレはやむなく伝家の宝刀を使用。
「いい子にしたらご褒美をやる」
ため息混じりに人差し指でおのがほっぺたをつつんと突いて見せたら、ミッくんは小躍りして歓喜しやがった。
『おおおお! そこに口づけていいのか? で、ででででは! がんばるしかあるまい!』
ふん。現金な奴め。
ていうかこれ、ミッくんの作戦じゃねえかって気がしてきたよ。
ごねまくって、オレが仕方なく譲歩するのを待ってるんじゃないのかこれ。
先祖だろうがなんだろうが、遠慮しないでこれから厳しくしつけないとだめだなぁ。
それにしても。
シング老の地下工房はかなり広い。天井も高い。
この鍾乳洞の洞窟のような工房にいたる階段の段数は結構ある。
渋々言うことを聞いたミッくんがここぞとばかりに
工房の中には、培養液が詰まったカプセルがずらり。炉も機材も、何でもそろってる。
モグリにしちゃあ、すごすぎる設備だ。
「……」
そのかなり広大な工房の、右奥で。新米助手が、ギヤマンの小さなケースをじいっと見つめていた。
ケースにそっと、右手をあてて。
中には。金枠に縁取られた、銀色の円く平たい結晶が入っている……。
「アル……」
新米助手くんは、少し前までおのが体に埋まっていたその結晶に話しかけた。
やさしく、微笑みながら。
「いつかきっと、君を復活させる」
そいつは。一度死んだ新米助手の体から取り出された、古い機霊。
凍結封印で保存されている、日輪のアルゲントラウム。
「僕がこの手で、君を生まれ変わらせる。古いものだって、新しくなれるんだ。だから……もう少し待っていて」
「猫型いいぜ猫型。犬型も捨てがたいな」
隣でテルが、機霊機の型が何がいいかってお奨めしたが。
「はあ?」
目つき悪い新米助手は、じとっと横目で隣の先輩技師を睨んだ。
「何を言っている。当然、可憐な少女型の機霊機を造るのに決まってるだろう」
「え? し、少女? こ、恋人にするならイケメン機霊……い、い、いや、機霊が恋人? そそそそれはちょっと……健全に、ふつーの男の子とおつきあいした方が――」
「はあ?! なんで男と付き合わないといけないんだ。僕は男だと言ってるだろうが!!」
ああ……あわれ新米助手にスパーンと頭はたかれる先輩技師。
が、がんばれ黒髪少年。オレもがんばるよ。
『ロッテ……愛してる』
「ぐふ。抱きつくなこら!」
その道に。墜ちないよーに……。
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