鋼人零壱 -ハガネビトゼロイチ-
湖城マコト
零話 鉄鋼戦役
今から40年前。
かねてより確執のあった二つの大国が、利権をめぐる問題で衝突を繰り返すようになり、それはやがて、各国を巻き込んだ大規模な戦争へと発展していく。
戦争から半年が経とうしていた頃。ある国が戦場へと送り込んだ『
戦争名の由来ともなった『鉄鋼兵』とは、人体を機械化することで、強靭かつ痛みを感じない無敵の体を手に入れた兵士のことである。
これまでにも技術的には可能とされていた人体の機械化ではあったが、人道的な問題から実用化はタブー視されてきた。だが、戦争という大義名分はそんな倫理観をも易々と踏み越えてしまった。
一国が『鉄鋼兵』を導入したことで戦争のバランスは大きく崩れ、戦争に参加するあらゆる国が、『鉄鋼兵』の製造に躍起となる。
戦争から1年が経とうとする頃には、戦場の主役は『鉄鋼兵』へと成り替わっていた。
この時期になると、戦渦は非戦争を貫く中立国にも及び始める。
それは、東方の島国『ジパング』も同様であった。
日々拡大する戦線。諸外国で紛争に巻き込まれる国民。同盟国からの協力要請。
迫りくる戦渦に対して、『ジパング』は軍備の増強を決定する。当然その中には『鉄鋼兵』製造の案も盛り込まれていたが、人道的見地からそれは見送られることとなった。
1年後。戦争の発端となった二つの大国が和平の道を模索したことで、2年に及んだ戦争は一応の終結をみせる。
何とも呆気ない幕切れではあったが、泥沼化する戦争に各国は疲弊しきっていため、この結末に異を唱える国は少数派であった。
東方の島国『ジパング』は、幸いなことに本土に被害が及ぶことはなく、最小限の被害で終戦を迎えることが出来た。これに伴い、拡張された軍備も収縮される。
数年は混乱が続いたが、世界は確実に平穏を取り戻そうとしていた。
戦争から10年が経った頃、『ジパング』国内である騒動が巻き起こる。
『戦争末期、ジパングは極秘裏に数体の鉄鋼兵を製造していた』
そんな内容が記された機密資料が流出した。
戦争末期の『ジパング』は、国内でもいつ戦闘が起こってもおかしくはない一触即発の状況であった。それに際し、自衛のための戦力として、『
この件に関し政府は『鋼人』の存在を公式に否定。流出したとされる資料も全てねつ造であることが後に発覚し、事態は収束した。
しかし、一部ではあの資料に記されている内容は本物であるという噂が囁かれ、戦後40年が経とうする現在でも、『鋼人』の存在は都市伝説的に語り継がれている。
噂が本当だとしたら、『鋼人』たちはその後、どうなったのだろうか?
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