第46話「親友一号!」

 嫁ズのひとり、ソフィによる国語の授業が始まり……

 俺はマチルドさんとともに教室の後方で椅子に座り、見守った。

 

 ウチの学校はいろいろな年齢の村民生徒が居る。

 だけど、前世や王都の学校と違い、便宜上全員が一緒に同じ内容の授業を行う。

 だから10歳のタバサ、レオ、イーサンと8歳のジョアンナ、そしてずっと年下の5,6歳の子も、一緒に授業を受ける。

 

 本当は年齢別にクラス分けして、授業内容もそれぞれ対応したい。

 だが、様々な理由から困難なのである。


 さて!

 マチルドさん曰はく、ジョアンナの学力は相当なものだという。

 庶子のジョアンナは、隠れ住むように暮らしていた為、学校に通った事がない。

 勉強は家庭で、主に亡き母ミリアンさんが、そしてマチルドさんも教えたという。

 

 ジョアンナは、顔立ちも性格も頭の良さも、母ミリアンさん似。

 記憶力は抜群、頭の回転も素晴らしく速いというのだ。


 親代わりのマチルドさんだから、ひいき目が相当あるとしても、俺から見たって、ジョアンナは聡明で優秀だと感じる。

 レイモン様とともに、一回しか会った事がないから、うろ覚えだが……

 ジョアンナは父のサミュエル・ブルゲ伯爵に面影はあまり似ていない。

 あくまで私見だが、母親似で本当に良かったと思う。


 さてさて授業中、ジョアンナはソフィの授業に真剣に集中。

 魔導ペンで、こまめにメモを取っていた。

 ジョアンナって、思っていた以上に真面目で勉強熱心なんだ。

 

 やがて授業が終わり……

 ジョアンナはソフィ、お子様軍団とともに俺とマチルドさんの下へ来た。

 嬉しそうな笑顔なので、俺はホッとする。


「どうだい、ジョアンナ。学校は?」


「はい、ケン様、ジョアンナは学校は初めてなのですけど、凄く楽しいです。勉強は面白いし、皆、優しいし」


「それは良かった」


 うんうん!

 学校を楽しめるのが一番だ。


 ジョアンナは、目をキラキラさせながら尋ねて来る。


「次はケン様が先生になって、授業をするのですよね?」


「ああ、俺が社会科の授業を行う」


「わお! 質問をいっぱいして良いですか?」


「ああ、構わないよ」


「やったあ!」


 そんな会話をした後、俺はお子様軍団に給食時のケアを頼む。

 ジョアンナが村民の子供達と触れ合う初めての機会だから。


「皆、悪いけど、給食の時、ジョアンナをフォローしてやってくれ」


 対して、


「分かった、パパ」

「任せて! お父さん」


 タバサもレオも快諾してくれた。

 

 何故か、イーサンだけが悪戯っぽく笑う。


「アメリーちゃんが、やきもちを焼かないよう、ちゃんと言っとく。レオと仲良しだけどジョアンナは妹、レオじゃなく、お父さんが大好きなんだって」


 ああ、そういう事か。

 

「はは、ありがとう、イーサン。宜しくな」


 俺は苦笑し、イーサンの気遣いに礼を言ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 午前10時、学校第2時限目。

 ソフィと入れ替わり、今度は俺が教壇に立ち、社会科の授業を行う。

 

 一方、ソフィは俺と入れ替わり。

 マチルドさんとともに父兄となり、我が子ララを見守るのである。

 我が家の子供達に反抗期の兆しは見られないが、こまめなケアは必要だと思う。

 但し、うざく思われると逆効果。

 ホント、子育ては難しい。


「ケン様、はい!」


「おお、ジョアンナ、何だい?」


「今おっしゃったお話ですけど!」


 という感じで、宣言?通り、ジョアンナは何度も挙手、俺へたくさん質問を浴びせて来た。


 すると、負けじとばかりウチのお子様軍団、村民の子供達も煽られ、質問の連射をして来た。

 わいわいがやがや、整然、粛々と行われていたソフィの授業とは対照的となってしまった。

 まあ度を過ぎているというわけでもない。

 だから、一応良しとする。


 という事で、授業終了、午前11時。

 早くも給食となる。


 以前は12時くらいからやっていた。

 だが、前倒しにして欲しいという要望が親から数多あったのである。

 農作業の手伝い等の理由であろう。


 話を戻すと、給食は、大空屋宿屋部門の厨房で作った料理をケータリングして貰うのだ。

 給食の調理担当は、ウチの嫁ズは勿論、アンリの奥さんエマさん達村の主婦軍団にも働いて貰っていた。

 オベール様の援助もあり、当然ながら給金は全員へ充分支払っているから、良きアルバイトとして好評である。


 そして給食が始まった。

 教室で机を並べ、全員で楽しく食べる。

 子供達全員に、俺、ソフィ、マチルドさん、村民の親など保護者も入り、いつものように大いに盛り上がった。


 ジョアンナも初めて会った『級友達』に囲まれ、好意的な質問攻め。

 彼等彼女達の親からも可愛がられ、食事を存分に楽しんだ。

 

 またジョアンナ本人、レオ本人の主張は勿論、イーサン始めとしたお子様軍団の厚いケアがあったのだろう。

 兄と親しく呼ぶレオとの『仲』は誤解されなかった。

 

 改めてジョアンナとカニャールさんの愛娘アメリーちゃんは、お互いに挨拶。

 そして、


「ジョアンナは、ケン様の婚約者です! アメリーさん、宜しくお願い致します!」


 きっぱりと言い切ったジョアンナ。

 対して、アメリーちゃんも負けじと言い返す。


「ジョアンナ、こちらこそ、宜しくね! アメリーだって、レオと結婚するわ!」


 俺から見れば、微笑ましいが、ジョアンナもアメリーちゃんも真剣。

 

 結果……

 アメリーちゃんは、2歳下のジョアンナと大いに打ち解けて、意気投合。

 家族以外において、第一号の『親友』となってくれたのである。

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