第11話「夢の続きと再会」

 俺達の食事を複雑な感情を持ち、見ていた女の子の視線は気になったが……

 その後何という事もなく、夕食が終わり……

 俺達は部屋へ戻った。


 レオとイーサンはスイートルームを見て、再び気が高ぶっているようだ。


「ねえ、お父さん、俺、今夜は好きな部屋で寝ても良い?」

「いつも兄弟一緒だから! 俺もひとりきりで寝たいよ! お父さん!」


「ああ、レオ、イーサン、ひとりでひと部屋使って構わん。大きなベッドで思い切り手足を伸ばして寝れば良いさ」


「やったあ! 俺ひとりの部屋だ!」

「ホテル、最高!」


 俺の『許可OK』を聞き、はしゃぐふたり。

 更に俺は言う。

 今夜はふたりに、この前見せた俺のカミングアウトな夢を、見せるのだ。


「レオ、イーサン、今夜は夢――第二弾、この前の続きが行くからな。サキママから始まって、アマンダママが出て来るまでだ」


「いよいよサキママが出て来るんだよね! 俺、楽しみ!」

「だよね! 俺もサキママ大好き! ママだけど姉ちゃんみたいなんだもの!」


 サキは俺の嫁ズ12人の中で一番若い。

 レオやイーサンにとっては、ママというより少し年が離れた『姉』に近いんだろう。

 長姉のタバサは姉といっても、ふたりと年齢が一緒だから、年上の姉とは違うものな。


 更にふたりの話題は、アールヴ嫁のアマンダへ移行。


「お父さん、やっぱり、アマンダママのハーブ料理が一番だよね!」

「いやいや、レオ兄! ベアーテママの料理だって負けてないよ!」


 おお、盛り上がってるな。

 と思って見守ってたら……


「お父さん、俺もう寝るね!」

「俺も寝る! お父さんの夢見るのわくわくするもの!」


 いつもは夜更かししたがる男子ふたりも、父である俺の冒険譚が楽しみに違いない。

 探検した際、眠る部屋も物色し、ちゃんと決めていたようだ。


 それぞれ「さっさ」と、部屋へ引っ込んでしまった。


 俺はレオとイーサンが寝た後……

 ボヌール村の自宅へ、念話で連絡。

 リゼット、クッカへ、そしてレオとイーサンの母親クーガーとレベッカへ。


 リゼットへは報告と連絡をしない嫁ズへのケアを頼む。

 クッカからは、タバサを筆頭とした女子軍団が、レオとイーサンへ羨望の言葉を連発したと聞いた。

 タバサはまた王都へ来たいのだろう。

 多分、俺とふたりきりで。


 クーガーとレベッカへは今日息子ふたりと、どのように過ごしたのか伝えておいた。


 ……という事で、連絡も終わり、レオとイーサンの様子をうかがえば、

 ふたりは早くも、夢の世界へ行っていた。


 思わず笑みが浮かんだ俺は、


 さあて、夢の続きを見せてやるか!


 ベッドに入り横になると、早速魔法を行使したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 この前の夢は、今は亡き王都の職人、昼間お墓参りしたオディルさんとの出会いで終わっていた。

 明日はオディルさんと出会った商業ギルドのイベントへ連れて行くつもりだ。


 という事で、夢の続きはサキとの出会いから……

 管理神様との約束があるから、サキの正体は明かせない。

 ただサキが俺と同郷、異世界地球の日本から転生した事は教えておく。

 女神達の姿も見せてあるから、ヴァルヴァラ様の姿も。

 勿論金髪の美少女ジュリエットバージョンだ。


 サキがボヌール村へ来た経緯まで見せて……

 次はエモシオンのアンテナショップ、ソフィことステファニーの従士達……

 子供達とした旅行。

 オベール様の息子フィリップが村へ遊びに来た事……

 ユウキ家に飾ってある奇跡の再会、奇跡の邂逅という、クラリスが描いた名の絵の経緯……

 そして第二部のフィナーレ、アマンダことフレデリカとの再会……


 息子達と夢を見ながら、改めて感じる。

 クミカから始まり、俺の半生は宿命で結ばれた嫁ズとの出会いの歴史なのだと。


 そして、夢の魔法第二部は無事に終了した。

 第三部をお楽しみに!

 乞うご期待!


 レオとイーサンはそのまま眠っている。


 と、ここで俺は何者かの気配を感じた。

 人数はふたり。

 ひとりはひどく懐かしい気配。

 そしてふたりとも、今はこの世に亡き者の気配……だ。


 ハッと目が覚めた俺が見上げれば、俺が寝る部屋にふたりの男女が浮いていた。

 以前初めて会った際のベアーテ、……亡霊状態のベアトリスを見たから分かる。

 目の前のふたりの男女は実体のない亡霊なのだと。


 ひとりは若い女性だが……面影に見覚えがある。

 すぐに分かった!

 この人は……若かりし頃、20代のオディルさんだ。

 若きオディルさんは、日焼けしたたくましい、短髪の若い男の人に寄り添っていた。

 この人が……オディルさんの夫に違いない。


 俺の心へ、ふたりの声が聞こえて来た。


『ケン様、今夜はご報告とお別れに参りました。私、とうとう夫に会えました。この人、私の事が心配で天国へ行けず、ず~っと王都のお墓に縛られていたみたい。ケン様と息子さんがお墓を清めてくれたから、再会する事が出来たんです。本当にありがとうございます!』


『初めましてだな! ケン様よぉ! 俺はオリヴィエ・ブラン。オディルの亭主だ。嫁がえらく世話になった! それと俺の墓もきれいにしてくれてありがとよ! その上、俺の鍛冶の技まで継いでくれて、本当に嬉しいぜっ!』


 ああ!

 昼間、オディルさんとオリヴィエさんの墓参りをして良かった!

 死して一旦別れ、やっと再会したふたりは、わざわざ俺へ会いに来てくれたんだ。


 オディルさんは本当に嬉しそうだ。

 オリヴィエさんにぴったり寄り添い、満面の笑みを浮かべている。


『ケン様! これから私たち旅立ちます。全く違う世界へ行き、生まれ変わり、また結ばれるんです!』

『おうよ! 俺と嫁はまた一緒だ! 絶対離れねぇ! 腐れ縁ってやつだぜ!』


 歓びの声を聞き、思わず俺は声を張り上げ、ブラン夫妻ふたりへ呼びかける。


『オディルさん! オリヴィエさん! 良かった! 本当に良かった! 再会おめでとうございます! これで俺も安心です! 出来るものなら、ウチの家族全員の夢枕に立ってお別れを告げてください! 皆、おふたりの行く末を案じていましたからっ!』


 俺の声がしっかり届いたに違いない。

 心の中へ『了解した!』という肯定の強い波動が伝わって来た。


 オディルさんとオリヴィエさんは笑顔で頷き、手を大きく振ると、

「す~っ」と、消えてしまったのである。

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