男子めぐりあい旅編
第1話「呼び出し」
悪魔が創世神様の
現在は妖精の国アヴァロンの片隅でひっそりと暮らしている。
その人魔族リーダー、アガレスの娘ロヴィーサが秘書としてボヌール村へ来て、1年が経った。
俺をひたむきに慕うロヴィーサから想いを告げられ……
彼女の優しさと誠実さに、想いを受け入れた俺は、彼女と結ばれ、先日結婚した。
ロヴィーサは、俺の12番目の嫁となったのだ。
そんな中……
毎日毎週毎月赴いていた各国の会議もひと段落。
俺は『とんでもない多忙さ』から解放されつつあった。
毎日各所へ飛び回る日々は終わりを告げ……
現在は、宰相を務める領主オベール男爵家のエモシオンのみ、週一ペースで赴いている。
最近はリモートワークというべきか、レイモン様、イルマリ様、オベロン様が月1回に俺の『夢の中』で全員が集まって会議を行う。
いわばドリームワーク会議を行っている。
ちなみに通常連絡は魔法水晶を使ったホットラインで事足りた。
万が一、何かトラブル行き違いがあった場合、神たる俺が出て行って仲裁を行うのだ。
各国首脳が元魔族人魔族が共存する時代に慣れて来た事。
相互の交流が円滑に行われている事等々。
いくつか理由はあるが、簡単に言えば、世の中が平和になり上手く行っているという事。
と、なれば俺の軸足は当然ボヌール村に置く事となる。
村運営の実務は俺の跡を継いで村長となったリゼットが仕切っているけど……
後回しにした俺のやるべき事が、結構な数で目白押しとなっているのだ。
え?
何それ?
と言われそうだが、一番大事な事が後回しになっている。
一番大事な事とは!
子供がまだ居ない嫁、サキ、ベアーテ、アマンダ、それと結婚したばかりのロヴィーサ。
彼女達との熱い子づくり……ではなく!
そう!
子供達へのカミングアウトだ。
これまでに話したのは、我が子では長女タバサのみだから。
あ、そうだ。
オベール様の息子、俺の義弟フィリップにもある程度、話していたっけ。
さてさて!
ここで俺の言うカミングアウトとは……
俺ケン・ユウキがどうしてこの異世界へ来たのか?
初恋の想い人クミカと、クッカ、クーガーの事。
最初に出会ったリゼットを始めとした嫁ズとのかかわり。
……全てを話す事は出来ないかもしれない。
しかしこのまま隠しておく事など出来ない。
但し、年齢や持つ常識、価値観により告げる内容は変わって来る。
という事で、単純に年齢順ではないのだが……
次に俺がカミングアウトする我が子は、クーガーの息子長男のレオとレベッカの息子次男イーサンなのである。
ちなみに、これまでのユウキ家オール嫁ズが参加した家族会議で………
タバサの次にカミングアウトする子供は、レオとイーサンのふたりで了解を貰っている。
そしてカミングアウトする「GO!」のタイミングは俺に任せると事になっていた。
仕事の負担が減った今こそがそのジャストタイミング。
思い立ったが吉日。
その日の夜、レオとイーサンを呼び出し、俺の私室で一緒に寝ようと誘ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……………」
「お父さんと寝るのは久々だね」
普段から寡黙なレオはむっつり。
明るい性格のイーサンはにっこり。
ユウキ家の長男と次男は好対照の表情でやって来た。
そしてふたりとも、どうして俺から呼ばれたのか、薄々勘付いていたらしい。
レオが口を少しとがらせ、イーサンも追随する。
「俺達に話があるんだろ、お父さん」
「うん、大事な話がさ」
「お前達、気付いていたのか」
「そりゃ、そうだよ」
「俺達ふたりだけ、部屋へいきなり呼ぶなんてさ」
「ははは、そうか」
「言っておくけど……我が家ではお父さんって、怪しい人だから自覚した方が良いよ」
「うん、凄く怪しい人だ! 俺もレオに激しく同意だね」
怪しい人って?
まあ、心当たりはあるけど。
「おいおい、凄く怪しい人なのか? お前達のオヤジの俺は」
「ああ、凄く怪しいよ。いっつも忙しそうで、家に居たり、居なかったり」
「神出鬼没だ」
「そっか」
「新しいママがどんどん増えてるし」
「それでいて、俺やレオのママを含め、全員と熱々でさ。何年たっても、とっても仲が良いし……わけわかんないよ」
息子達は、想像以上に俺の行動を細かく観察している。
まあ、無関心よりは嬉しいけど。
ここは苦笑するしかない。
「ははは、そうか」
「お父さんの事、知りたいと思って、お母さんやママ達に聞いても全然教えてくれない」
「うん、誰も教えてくれない」
ふたりの男子は秘密厳守の嫁ズから矛先を変え、口が固い姉のタバサを非難する。
ちなみにクッカの子タバサは、レオ、イーサンとは同年齢なのだが……
ウチの子の中では、最初に生まれた。
だからお子様軍団全員の『姉』となっている。
「何か、タバサ姉だけは、私は全部知ってるって感じでさ」
「そうそう、タバサ姉も、俺達がお父さんの事を聞いても、スルーされちゃうんだ」
「お、おお! そ、そうか」
「俺、この際だから言わせて貰うけど、お父さんはタバサ姉だけ、王都旅行へ連れて行ったり、超えこひいきって感じだから、正直腹が立った」
「うん、レオの言う通りだと俺も思う。でも一番上の姉さんだし、女子だし、怒って魔法使われてもイヤだし」
あまりタバサへ、非難が向くのも宜しくない。
こういうコメント対して、説明も考えている。
「分かった。お前達の言う通り、タバサにはある程度俺の秘密を話している。旅行にも連れて行った。どうして? なぜ? と聞きたいだろうが、これは俺とお母さん達の判断としか言えない」
「………………」
「………………」
無言となった息子達へ、俺は更に言う。
「今回、お前達ふたりへ俺の秘密を告げる時が来た。特別な魔法を使ってな」
「特別な魔法?」
「え? どうやるの?」
レオとイーサンは、俺が夢を自在に制御出来る事を知らない。
言葉で説明するより、夢を見せる。
かつてレイモン様が管理神様から夢で神託を受け、俺の人生を理解したのと同じ方法を取るのだ。
「お前達に、今夜、魔法で夢を見せる。俺が何をして来たのか分かる夢だ。但し、お母さん達やタバサがしゃべらないのと同様、他の子や他人には内緒だ。それは絶対に守って貰う。その条件で夢を見せるが約束を守れるか?」
俺の真剣な口調と表情を見て察したのだろう。
息子達は、居住まいをただした。
「はい! 約束します!」
「はい! 守ります!」
レオもイーサンもまじめな表情で、大きく頷いたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます