帰る故郷はスローライフな異世界！レベル99のふるさと勇者

第７話「歓迎会」

　ロヴィーサがボヌール村へ来た夜、いつもの事ながら歓迎会が開かれた。

　今回はいろいろな成り行き上、ティターニア様に、ベリザリオ、アルベルティーナの妖精3人にも参加して貰った。

　アガレスから愛娘の相談を受けるとは思わなかったし、

　ロヴィーサは急な来訪となったから、事前の準備は全く出来ていない。

　だから、選り抜きの素材を使う凝ったご馳走は出せない。

　いつものユウキ家の夕食が、豪華になった程度である。

　しかし、歓迎の気持ちを込め、あるものを使い、精一杯の料理を作った。

　俺も厨房に立ち、料理をすると聞き、ロヴィーサは大層驚いた。

　そして自分もと言い、おずおずと遠慮がちながら一生懸命に手伝ってくれた。

　秘書としての共闘宣言をしたサキを筆頭に嫁ズも、そしてタバサが引っ張る形で子供達もロヴィーサをフォローする。

　お客であるティターニア様も懐かしいを連発しながら、アルベルティーナと共に加わった。

　その結果、メニューは下記の通り。

　今や村の名産品となったハーブの料理。

　兎、鹿、猪などのジビエ料理。

　村の鶏が生んだ卵料理。

　湖で釣った鱒の各種料理。

　そして焼き立てのパンにこれまた名産のはちみつ、

　野菜をたっぷり使ったスープとサラダなど……

　配膳もロヴィーサは、一生懸命手伝った。

　人魔族の食生活は、ある時好奇心から聞いたが、管理神様から得た知識しかない。

　それも「アールヴとほぼ同じで良いよ～ん」とか、適当に言われた程度。

　なので、ロヴィーサには「食べられるものを好きなだけお食べ」と伝えておいた。

　そんなこんなで、宴（うたげ）は始まった。

　まずは挨拶、俺が改めてロヴィーサを紹介する。

　しかし俺の隣席を希望したロヴィーサは、ガチガチで挨拶が上手く出来なかった。

　大勢を前にして、緊張してしまったからだ。

　でも、既にロヴィーサの性格は知れ渡っていた。

　極度の人見知りで、恥ずかしがり屋。

　そして甘えん坊の『ファザコン』だと。

　乾杯、そして頂きますの慣習もロヴィーサには初体験。

　ハーブティを飲み、「美味しい」と笑顔。

　恐る恐る手を出したハーブ料理をひと口ぱくり、「ぱああっ」と顔が輝いた。

「おおお、おいし～いっ！！　ケン様！　美味しいですよぉ！！」

「そうか、そうか。ハーブ料理以外にも、いろいろ食べてみれば良い」

「は、はいっ！」

　こうなるともう止まらない。

　ロヴィーサは旺盛な食欲を見せる。

　それも凄く美味しそうに食べる。

　こうなると俺もひと安心。

　衣食住のうち、人間の食事は無事クリア出来たのだから。

　そして相乗効果も。

　こうなると隣席、周囲からも「美味しい」とか「これも食べて」とか、会話とアプローチが一気に増えたからだ。

　大いに戸惑いながらも……

　かけられた言葉にひとつひとつ丁寧に、どのような内容も出来る限り対応して行く。

　そんなロヴィーサの様子を俺は微笑ましく見守っていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

　今夜の宴は盛り上がった。

　だが、明日俺はまたでかける。

　昨日は人魔族、今日は妖精族と来て、明日はアールヴの国イエーラへ赴くのだ。

　という事で、アヴァロンのオベロン様と打合せをした内容を共有する為の打合せを行っている。

　打合せのメンバーは、俺とクーガー、ベアーテ、

　嫁ズのリーダーで村長のリゼット、アヴァロン担当のミシェル、サキ、タバサ。

　そしてオベロン様の奥様ティターニア様。

　途中でイエーラ担当のアマンダとクッカが入れ替わる。

　いろいろなやりとりが行われ、アヴァロンの情報共有は完了。

　まずミシェルがフェードアウト。

「旦那様、お休み！　私、明日早いから寝る。クッカとアマンダを呼んで来るね」

　ミシェルが手を振って出て行くと、続いて、ティターニア様も。

「皆様、お疲れ様でした。じゃあ、お父様、おやすみなさい」

　ティターニア様はアヴァロンに妖精の商会を作り、各種族と商売を始める計画を持っている。

　その夢を叶える為に、ミシェルに師事。

　日々商人修業と準備の毎日で、俺と同じく多忙なのだ。

　さすがにもう慣れたが、ティターニア様は時たま俺を『父』と呼ぶ。

　彼女はオベロン様との仲が壊れそうになった時、父代わりとなった俺や、ユウキ家の家族に心身とも支えて貰ったと何度も感謝の言葉を口にしていた。

　だから今回の件も「恩返しだ」とロヴィーサの『伯母役』を快く引き受けてくれた。

「お先に」と、立ち上がったティターニア様は、柔らかく微笑むと、ロヴィーサを呼ぶ。

「ねぇ、ロヴィーサ」

「は、はい！　ティターニア様」

「私達妖精族と悪魔族とはいろいろあったけど、過去は過去。人魔族として生まれ変わったあなた達は新たな人生を歩むのよ」

「は、はい！」

「プレッシャーをかけるようで申しわけないけど……これから人魔族の歩む道は苦難の道よ」

「はい……」

「だからこそ！　リーダーの娘である貴女には、父アガレス殿を助け、支えて行く責務があるわ」

「は、はい！」

「見知らぬ土地へ来て、右も左も分からず、大変だろうけど……お父様……ケンと共に働き、ボヌール村で暮らす事は必ず糧（かて）になる。かつてこの村で暮らし、帰って来た先輩の私が言うのだから、間違いないわ」

「はいっ！」

「うふふ、　何か困った事があればケンへ、もしくは私を含め、誰にでも気軽に相談しなさい。……頑張って！」

「あ、ありがとうございます！　が、頑張りますっ！」

「私も夢に向かって頑張る！　これからも助け合って行きましょう！」

「は、はい！」

　ティターニア様から熱いエールを送られたロヴィーサは思わず涙ぐみ、大きく頷いていたのである。