ナイーブなパイオニア編
第1話「元気です!」
皆さん、こんにちは!
異世界転生者のケン・ユウキです。
……俺ケンが、最後の嫁たる亡国の王女ベアトリスの転生者ベアーテと結ばれ……
早いものでもう約1年が経っている。
あの時は、いろいろとあった。
メフィストフェレスを始めとして、それまで暗躍していた悪魔が地上へ進攻しようとする寸前だった。
人間を食料用の家畜にした上で、完全にゼロにはしない……
つまり「100%滅ぼさなければOKさ」という『魔王の理』を逆手に悪用。
大悪魔バエルを首魁にした悪魔どもが陰謀を企み、地上の世界を支配しようとした。
それを俺と、後に人間になったベアーテ、つまり当時の魔王アリスとで阻止したんだ。
世界の行く末を決める決戦は地の底、魔界で行われた。
だから、その間、表向きの地上世界の様相は変わっていない。
災厄もなく、何事もなかったかのように時間だけが流れていた。
だが……
悪魔侵攻に対抗した準備を呼びかけた俺のとりまとめで、普段付き合いが無かった各種族の首脳は結束した。
これは
または雨降って地固まるって事。
今までは助け合おうなんて誰も言い出さなかったし、種族によっては反目する間柄でもあった。
しかし「敵の敵は友だ」という言葉は本当であった。
悪魔という共通の敵を前にして、人間とアールヴ、そして妖精族はそれぞれのトップが理解し合えたのだ。
そして……世界滅亡の脅威が完全に去った後も、他の種族も加わり、世界の平和維持と発展に向け、相互協力は続いている。
というわけで、仲介役となった俺は相変わらず忙しい。
ベタな言い方ではあるが、身体がいくつあっても足りない。
実際、ボヌール村のユウキ家にず~っといるように見せかけ、世界各地を飛び回っている。
たまに異界アヴァロンへも赴く。
転移魔法によって、距離と時間の壁はほぼない。
だが、さすがにひとりではきつすぎる。
体力気力は何とかなるが、先述した通り、いわゆる手が足りなくなるのだ。
俺はこれまでボヌール村村長、オベール家宰相を務めながら、
地域の守護を担う『ふるさと勇者』として生きて来た。
俺が転生した際、心に決めた第二の人生を送る趣旨があった。
いわゆる「世界を救う勇者」になどならない、
「ローカルなふるさと勇者」として生きて行く。
のんびり生きて行く、スローライフしようとしたはずなのに。
しかし……
いろいろな経緯があり、そのようには行かなかった。
勇者どころか!
更にその管理神様の命で、人間族、妖精族、アールヴ族は勿論、そして元悪魔の人魔族、更にドワーフことドヴェルグ族の各顧問役の業務まで加わった。
ローカルどころか、ワールドワイドな活動となってしまった。
最初に転生した時、異界において管理神様の前で『ひきこもり』を宣言したのが、真逆な人生となってしまった。
まさに言うは易く行うは難しだ。
話を戻すと……
どうにも手が足りないので、秘密を共有する嫁ズに助けて貰う事にした。
それゆえ、今までやっていた様々な仕事を嫁ズに引き継いで貰った。
また補佐役としても入って貰ったのだ。
主なものでは……
俺は代理から長年務めたボヌール村の村長職を辞し、リゼットに引き継いで貰った。
オベール家も、表向きは俺が宰相のままで、
血縁関係のあるふたりにほぼ任せる事となった。
それ以外の振り分けは、分かりやすく一覧表にしてみた。
表にしたのは嫁があまりにも多いから。
魔王アリスこと転生した亡国の王女ベアトリス……
更に彼女は人間に再転生。
つまり最後の嫁ベアーテが来てくれて、さすがにもう『打ち止め』
そんなこんなで、結局嫁ズは11人にもなった。
こんなに嫁が居る主人公は、ラノベでもそうは居ない。
念の為、全員がボヌール村村長代理補佐を担って貰っている。
俺達家族の『ねっこ』は、やっぱりボヌール村だもの。
新たに村長となったリゼットを助け、しっかりやって行かねばならない。
リゼット⇒ボヌール村村長。アールヴの国イエーラ顧問補佐。
クッカ⇒ボヌール村村長代理補佐。アールヴの国イエーラ顧問補佐。
クーガー⇒ボヌール村村長代理補佐。人魔族顧問補佐。
レベッカ⇒ボヌール村村長代理。ヴァレンタイン王国顧問補佐。
ミシェル⇒ボヌール村村長代理補佐。エモシオン宰相代理。妖精の国アヴァロン顧問補佐。
クラリス⇒ボヌール村村長代理補佐。ヴァレンタイン王国顧問補佐。
ソフィ⇒ボヌール村村長代理補佐。エモシオン宰相代理。
グレース⇒ボヌール村村長代理補佐。ヴァレンタイン王国顧問補佐。
サキ⇒ボヌール村村長代理補佐。妖精の国アヴァロン顧問補佐。
アマンダ⇒ボヌール村村長代理補佐。アールヴの国イエーラ副顧問。
ベアーテ⇒ボヌール村村長代理補佐。人魔族顧問補佐
そして我が子の中からは、
長女のタバサが妖精の国アヴァロン顧問補佐として加わったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
皆さんは、先ほど一覧表であげた種族の中で、ひとつだけ聞き慣れない名前があるのに気が付いただろう。
そう、「さくっ」と先述したが、『人魔族』である。
この『人魔族』は、偉大なる創世神様の御業で生まれた最も新しい種族だ。
つまり、怖ろしい悪魔族が違う種族に生まれ変わり、つまり強制的に転生させられ、人間の魂や血肉を喰らう捕食者の慣習を捨てさせられた者達なのだ。
この人魔族のイメージとして簡単に言えば、ダークエルフかなと思う。
つまりエルフことアールヴ族を少しだけダークサイドへ寄せた感じ。
そう言えば分かりやすいだろう。
ちなみに不死たる悪魔族とは違い……
創世神様により、人魔族の寿命は200年から300年強と設定された。
これはドヴェルグ族とほぼ同じ寿命。
それに肉体も人間族より多少強いくらいのレベルとなった。
急所にダメージを受ければ死ぬし、病気にもなるのだ。
悪魔族から人魔族へ……
違う種族となる、種族変異はどんな感じだったのか……
人魔族のリーダーとなった元悪魔のアガレスに、興味本位で聞いた事がある。
アガレスは苦笑しながら答えてくれた。
俺が反乱の首謀者バエルとメフィストフェレスを倒した数日後……
アガレスが目覚めると……
まるで、どこかの某有名小説のように、「朝起きたら私は〇〇になっていた」という。
起きたら、自分が自分ではない、違う生き物になってしまうとは!
改めて、創世神様の
ありえない事だった。
これは一種の『転生』だとも俺は思った。
ラノベの転生は、死んで別の人間に生まれ変わるという概念がほぼお約束。
でも……
よくよく考えたら、生きたまま別の人間に生まれ変わるという可能性だってゼロではないという事だ。
さてさて!
嫁と一部の仲間以外、公にはしていないが、俺は転生者。
アガレス達悪魔や、その某小説のように生きたままではないが、知らないうちに死に、いつのまにか自分が他者になっていたのは経験済み。
アガレスから種族変異の話を聞いた際……
自分の転生経験や歩んで来た人生も話したら、話が一気に盛り上がった。
心の距離が縮まり、
人魔族に転生したアガレスは、顔の半分以上がぼうぼうの髭におおわれていて、いかめしい風貌はそのまま。
でも、少しだけ砕けた性格となっていたから、話も弾んだ。
この時、アガレスの本音も聞いた。
見た目は肝の太いアガレスにも深刻な悩みがあるのだと。
これまでトップに立った事のない参謀タイプのアガレスは、
人魔族を率いて行くプレッシャーが半端ないという。
俺は〇〇になったその小説の顛末も、アガレスへ話した。
主人公が恵まれずに死を迎える事を話したら……
「お互い不幸にならぬよう頑張ろう」と決意し合ったのである。
そのアガレスから、突如「たってのお願いがある」と呼ばれ……
ある日、俺はクーガー、ベアーテという補佐役を伴い……
妖精の国アヴァロンにある人魔族の入植地へ赴いたのである。
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