第10話「4者会談開催!①」
『トライアル』も無事に終わり……
各自から出される議題のすり合わせも、スケジール調整も、
全てが終わった2週間後……
遂に4者会談が開かれる事となった。
今回行う会議は、俺の前世的なイメージならばサミット。
いわば『先進国首脳会議』だ。
俺の前世ではいろいろと横文字のついた名の世界会議が、
いろいろな思惑が絡み、
ただし、こちらはさすがに異世界。
会議の規模は……
つまり参加者は全然少ないのだが、スケールはデカい。
なんたって、種族を超えた会議なのだから。
会議に参加するのは、人間族のレイモン様だけではない。
今や神となった俺、妖精王のオベロン様、アールヴ族の長イルマリ様も加わるという画期的なものだ。
これから参加者は増やして行きたい。
ヴァレンタイン王国以外の他国は勿論、
アールヴ族とは犬猿の仲であるドヴェルグ族とかも。
私見だけど……
会議って、やはり必要に迫られて実施する事が多いと思う。
今回の会議の趣旨として、種族を超えた相互理解は勿論なのだが……
悪魔メフィストフェレスが存在を漏らした大いなる主なる悪魔の王……
つまり魔王の地上侵攻に対し、どうやって対処するかを具体的に話し合うのが、最も重要なテーマである。
このように大層な会議だが、前世行われていた会議より、
段取りは遥かに上手く行った。
俺の存在が、あらゆる不可能を、容易に可能としたからだ。
元々各首脳とは、いろいろな案件でよしみを通じていた……
という親しみやすさがあった。
それゆえ俺が呼びかけたら、まず前向きに参加を考えてくれた。
更に神となった今、仲介役たる俺へ真っ向から反対し、逆らうという前提がない。
いかに名誉職とはいえ、神は神。
創世神を信ずる敬虔な信者が殆どのこの世界。
眷属神たる俺には従うという教えが基本となるのだ。
更に……
例え意見が食い違っても、議論により理詰めで相手を理解させ、
更に説得しなければならないと徹底してある。
俺の魔法により、政策とスケジールのすり合わせが円滑に運んだのは勿論の事、
様々な原因により難儀する開催場所も俺の夢の中と相成った。
当初は、空間魔法&転移魔法を使った亜空間での開催も考えた。
実際に会って話した方が、意思疎通も円滑だからだ。
しかし、一時的でも各首脳が不在となる事が露見するといろいろまずい。
時間の関係もあるし、心身にかかる負荷の問題もある。
その点、夢を使えば種々の問題は一切解消される。
警備問題さえもノープロブレムだ。
せっかくだから、会議場も凝った。
参加者がびっくりし、感嘆すると同時に落ち着く場所であれと考えたのだ。
まあ、俺の個人的な趣味であり、サプライズだから、
一切前振りはしていない。
なあに、所詮夢の中。
万が一不評ならば瞬時に建て替えが可能。
ちなみに空間はボヌール村近郊とした。
さあて、どうなるのか……
各首脳の夢とつなぎ、俺は来場を待ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最初にやって来たのはレイモン様である。
時間厳守をモットーのひとつとするレイモン様。
現世でも最低10分前には支度をして待つという徹底ぶりらしい。
実兄のリシャール様がのんびりし過ぎている方だと聞いたから、
弟の宰相レイモン様がきっちりやるのがバランスがとれるという事なのだろう。
草原から現れたレイモン様。
歩き方を見れば、いつもの堂々とした感じと少し違う。
先日のトライアルで慣れたとはいえ、まだ戸惑っているみたい。
『お、おう、ケン、来たぞ。ここはボヌール村に似ているな』
『ようこそ! お疲れ様です、レイモン兄貴。はい、兄貴の言う通り、ボヌール村近辺を参考に創りました』
『だな! す、す、素晴らしいっ!』
『兄貴、少し緊張してますか?』
『うん! まあ会議の参加メンバーがメンバーだから、さすがにって! あああっ!?』
『あれ? どうかしましたか?』
『何言ってる!! おおおお!? な、な、何だ、この建物は? 初めて見るぞ』
レイモン様が驚くのも無理はない。
今回、俺が会場として用意したのは……城なのである。
それも異世界に、普通にある城とは全く違う。
サプライズ大成功!
俺は笑いをこらえながら、「しれっ」と告げる。
『はい! この建物は、今回の会議を行う会場、俺の前世、日本の城です』
『な!? し、城だと? 我がヴァレンタイン王国の城とは全く違うな、何と言うか神秘的で、美しい! 素敵だ!!』
『ありがとうございます』
ボヌール村風な周辺の大草原の中に……
忽然と現れる3層4階建て、陽に反射し、光り輝く白漆喰の天守閣。
武骨な造りの高い石垣で囲まれ、青々と水をたたえた深い堀が目立つ。
日本で国宝になった某有名城いくつかをベースに、俺が創った優美な趣きの城なのである。
ちなみに……
あくまで、会議場なので実際の日本の城とは構造を変え、簡略化してある。
堀にかかった木造の橋を渡り、正門を超え、すぐに本城、天守閣となる。
天守閣の1階へ入ってすぐに魔導昇降機――つまりエレベーターが設置してあり、
2階へあがると、俺を含め4名分の
ハーブティと焼き菓子を用意してある。
夢の中で飲食というのは不可思議だが……
食品飲料の食感や味も再現してある。
そして、控室の真上3階が、畳100畳の広さがある大会議場だ。
ちなみに一番上の4階は、展望台となっている。
満足の行く出来だと、俺が悦に入っていたら、レイモン様が尋ねて来る。
『で、ケン、この城の名は?』
『名?』
『名前さ。当然、命名してあるよな?』
城の命名?
『あ、……そこまでは』
『では! 私が命名しよう』
おお、何かレイモン様。
目がきらきらしてる?
やる気満々。
『ぜ、ぜひお願いします』
『夢の中の城……この高さなら、さぞや眺めが良いだろうな』
『多分……一番上は、展望台になってますし、中々だと思います』
『うむ! 緑一面の大草原、現世のエデンともいえる王国の素敵な景色を見ながら、私はエリーゼと……愛する亡き妻との再会を想う……何と、ロマンティック。うん、素晴らしい!』
『は、はい! 仰る通りです』
『うん、決めた! この城の名は……夢想……レヴリー城だ』
『レヴリー城?』
『ああ、レヴリー城だ! ケン、
『ええ、ほぼそういう意味ですね』
『うん、ならぴったりだ。レヴリー城に決定!』
『成る程、了解でっす』
という事で、俺が夢の中で創った純日本風の城は……
『夢想……レヴリー城』に決定。
さてさて!
会場へのアテンドをするのは……
ユウキ家の有志一同である。
レイモン様の担当は「ぜひ!」と志願したクラリスだ。
『ようこそ! レイモン様、こちらです』
『おお、クラリスさん、先日送って貰った亡き妻の故郷、エスポワール村の風景画をありがとう! 早速、執務室の一番目立つ場所に飾ってある! 貴女の絵のお陰で、毎日張り切って仕事が出来る!』
『ええっ! そうですか! 凄く嬉しいです!』
という事で、すっかり緊張感がなくなったレイモン様は、
クラリスに導かれながら……
うきうき気分で『レヴリー城』へ向かい、歩きだしたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます