第23話 「とりあえず……ハッピーエンドで帰ろう③」

 そんなこんなで……

 ほぼ全てが上手く行き……

 とりあえず俺とアマンダは結婚を許して貰った。

 遅ればせながらの報告だが、当初掲げた大目的は果たせたのだ。

 

 結婚おめでとう!

 皆さんから、そう言って貰えれば嬉しい。

 凄く嬉しい!

 

 え?

 嫁の数が多すぎるって?


 リア充大爆発しろ!

 いい加減にしろ!

 そう言われてもノープロブレム

 全然平気。


 と、いうわけで俺とアマンダは幸せな気分で大空を飛ぶ。

 

 しかし好事魔多し。

 また一寸先は闇ともいう。

 

 未来は……

 相変わらず不透明且つ不確定だ。

 突如降りかかった、俺の運命的な転生と全く同じなのである。

 

 今回改めてその思いを強くした。

 いずれ来るであろう、恐るべき悪魔の軍団の脅威を。

 奴らの侵略という大きな懸念と不安があるから。

 

 けれど……

 いつもと同じ。

 びくびく怯えて暮らしていても始まらない。


 開き直る!

 そして、常に完全燃焼、全力投球。

 俺にやれる事を全てやる。

 それしかない。


 ああ、そうそう……

 ボヌール村で俺達の帰宅を待つリゼット達嫁ズには、

 「結婚問題は無事解決した」と伝えたら、とても喜んでいた。

 

 他の懸案事項は村へ帰ってから、じっくり相談しよう。

 俺とアマンダだけでくよくよ悩むより、嫁ズ全員と話をしよう。

 ほら、比喩が適切かどうかは分からないが、3人寄れば文殊の知恵って言うじゃない。

 ちなみに3人寄れば文殊の知恵とは……

 たとえ各自が凡人であっても3人集まって考えれば、すばらしい知恵が出るものだという意味。

 

 しかし俺とアマンダが相談出来るのは、3人どころかその3倍、9人も居る。

 凄く心強いじゃないか。


 後、もうひとりの可愛い嫁、『旅行中』の元王女様もいつか必ず天から還って来る。

 そう、絶対再会出来ると信じている。

 

 さてさて!

 飛翔魔法フライトで飛ぶと、吹き抜ける風が凄まじい音をたてる。

 だから普通の会話では上手く話が出来ない。

 その為、ふたりは心と心の会話『念話』で話している。 


『なあアマンダ』


『はい、何でしょうか、旦那様』


『これからは、お前の故国イエーラも俺のふるさとだ』


『はい! ありがとうございます』


『でも人間とアールヴ、全く違う環境で暮らして来た異民族がもっと分かり合う為には、お互いの文化を尊重し、且つ認め合う事が重要だな』


『はい、旦那様の仰る通りです』


『俺、アマンダはその事をしっかり理解していたと思う。だから人間の住まう王都へ出て、白鳥亭で実践していた。とびきり美味しいハーブ料理の提供&心からのおもてなしという形でね』


『うふふ、私の作るハーブ料理は完全にアールヴ向けで独特の味付けですけど、皆さん喜んで食べてくれました。改めて料理に国境はないと感じました』


『そうだな。実際アマンダの料理がリスペクトされて、ウチの村やエモシオンでも広まり、今やオリジナルと思われるほど名物になっている』


『素晴らしい事です。光栄です、料理人冥利に尽きますよ』


『ありがとう! アマンダにそう言って貰えれば本当に嬉しい』


『うふふ』


『オリジナルのアールヴ特製のハーブ料理も、それをリスペクトした人間の作った料理も両方美味しいと俺は思う。これから世界へどんどん広がって行くだろう』


『はい! 私も一層頑張ります。これからはボヌール村とエモシオンから、家族と仲間で力を合わせ美味しいハーブ料理を世界中へ発信しますよ』


『おお、頼もしいな、アマンダ頼むぞ』


『はい、任せてください。そうそう……頑張るといえばアウグストお兄様も凄く気合が入っていたわ』


 こちらの家族の事を話す時、フレッカはアマンダの表情と口調になる。

 あ、そうそう、念の為。

 皆さんは当然ご存じでしょうが、フレッカの言うお兄ちゃわんとお兄様は違う。

 

 お兄ちゃわんとは愛する俺の愛称。

 そしてお兄様とはこの世界に転生したアマンダの兄アウグストの事なのだ。

 

 そのアウグストの、商人となる夢もまもなく叶う。

 故国の為に貢献するとイルマリ様に更生を誓って許された上、実家とのしがらみから解放されるのもあり、彼が張り切るのも無理はない。

 但し見習いという下働きからだから、上手く行くかどうかは本人の努力次第だけれど……


 アウグストをオベール家所属の『見習い商人』にする為に、ボヌール村へ戻ったらふたりでエモシオンへ出向く。

 オベール様一家にアマンダとの結婚の挨拶がてら、アウグストの事をお願いするつもり。


『うふふ、ちょっと心配です。アウグストお兄様は理想に走り過ぎる性格だから……良い面ばかり見て憧れているみたいですけど、実際に商人になってみたら苦労するでしょう。厳しい現実に直面してショックを受けるのは間違いないわ』


『ああ、でも挫折ざせつしたって、全てが人生の良い経験になり、糧となる。このまま座して何もやらないより納得出来る筈さ』


『ええ、考えすぎて何もせず、後悔するよりも、失敗を恐れず、まずは行動する事ですよね』


 でもこのままアウグストを商人にして良いのかって?

 ウルズの泉の管理人の仕事はどうなるのかって?

 はい、ノープロブレム。

 

 確かにアウグストは『ウルズの泉』の管理人だが、こちらもイルマリ様に許可を頂いている。

 これからアウグストが不在がちになるので、補佐役としてエルヴァスティ家の一族の中から新たな人材を選び『副管理人』を立てる事にしたのだ。


 商人見習いとして、アウグストがエモシオンに居る間、副管理人がウルズの泉を守る手筈となっている。

 もし折り合って、アウグストが望み通り一人前の商人になれたら、副管理人がそのまま仕事を引き継ぐ。


『ようし、また燃えて来ました。ボヌール村へ戻ったら、私もお兄様に負けないよう頑張る! 実は、お料理以外にもやりたい事がいっぱいあるの』


『おお、その意気だ。頑張れ、フレッカ! 俺が全力でフォローするぞ』


『はい! ハーブ料理を含め国境を持たないものが、いろいろな形で受け入れられ、それを機に理解し合えて行ったら、世界中の人達がもっと仲良く出来るでしょう』


『ああ、そうして確かな絆が出来れば、メフィストフェレス達悪魔どもにも強い心で対抗出来る。何が起こっても地上の民が一致団結して戦えると思うんだ』


『同感です。それに……やがて生まれて来る旦那様と私の子供がア-ルヴと人間の素敵な架け橋になると良いですよね』


『ああ、だな! その為には俺達が素晴らしい社会を作って、次の世代を担う子供達へ良いバトンタッチが出来るようにしたい』


『はい! 旦那様、一緒に頑張りましょう!』


 大きく頷いたアマンダ。

 彼女の笑顔は、美しい花が咲くように素敵だ。


『旦那様、重ねてお礼を申しあげます。今回は……いえ前世に引き続き今回も本当にありがとうございました。どちらの世界でもアールヴ達の素敵な未来が開けたのはふるさと勇者である旦那様のお陰なのです』


 しかし俺は首を横に振る。


『いやいや、今回はアマンダがイルマリ様をしっかりと説得してくれた事が大きかったよ。こちらこそ本当にありがとう』


『うふふ、どういたしまして』


 ああ、まだ結婚式をあげていないのに……

 俺達ふたりはもう夫婦として、『息』がぴったり合っている。

 とても嬉しい!


『改めて聞いてください、旦那様』


『何だい、アマンダ』


『私、あきらめないで本当に良かった! 最後まで望みを捨てないで本当に良かったと思っています』


『アマンダ……』


『前世での記憶を完全に失い、転生に転生を重ねた、気が遠くなるような長い旅でしたけれど……とうとう目的の地へたどりつきました。旦那様、貴方に出会う事が出来ました』


『そうだな、アマンダ……いや、偉いぞフレッカ……』


『ええ、フレッカはお兄ちゃわんに会う為、長き旅をして来たクミカさんと同じ! 全く同じなのっ!』


『ああ、そうだな! フレッカはクミカと同じだ』


『ケルトゥリ様の神託を信じて良かった! 自分の真っすぐな想いを信じて良かったのです。こうして旦那様……いいえ! 大好きなお兄ちゃわん、初恋の人に再び巡り会えたんだものっ! 凄く凄く嬉しいっ!!』


 クミカと同じ……

 そう、長い長い気の遠くなるような時間と空間の旅を経て、俺とフレッカは再び巡り会った。


『フレッカ! 俺だって、凄く凄く嬉しいぞっ! 可愛いお前が大好きだっ!』 


『うふふ、お兄ちゃわん、私もだ~いすき! これからもず~っと頼りにするよっ! あんなに怖い悪魔も戦わずして去るなんて……やっぱりお兄ちゃわんは世界最強だね』

 

 おお!

 俺が『世界最強』って!

 アマンダの前世、フレッカがささやいてくれた、勇気が出る魔法の言葉だ。


『よっし! フレッカ、俺はお前の為にもっともっと頑張るぞ』


『うん! ありがとう! これからも家族全員、助け合って行こうねっ!』


 アマンダ……

 否、フレッカは口調を変え、とびきりの笑顔でそう言うと、俺の唇に熱くキスをしたのであった。


※『異国のあの子へプロポーズ』編は、今回の話で終了です。

 ご愛読ありがとうございました。


 『第5回カクヨムコンテスト』に当作品は、エントリーしております。

 もっと上を目指せるよう、より多くの方に読んで頂けるよう、ご愛読と応援を宜しくお願い致します。


 皆様の更なるご愛読と応援が、継続への力にもなります。

 暫く、プロット考案&執筆の為、お時間を下さいませ。

 その間、本作をじっくり読み返して頂ければ作者は大感激します。

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