第12話 ニンゲン狩り②
一条斗真は食事当番のサキナと食堂でまかないを作っていた。
大量の生鮮野菜が使われないまま
狭いキッチンでやたらとサキナの大きな尻が当たる。
水着にエプロンは正面からは裸エプロンに見えてこれまた水着以上にエロく思春期の斗真を惑わせた。
どうして水着なのか尋ねると、
「だって暑いんだもん」
とのことだった。
たしかに蒸し暑く不快指数は高そうだった。
省エネとエアコンの作動音を抑えるためだろうか。
料理ながらも斗真はこの潜水艦について考察していた。
素性はわからないが若い女子ばかりに見える乗組員たち。
女性ホルモンのエストロゲンによりストレス耐性は女の方が高いと聞いた覚えがあった。
また成年男子に比べると小柄で酸素や食事の消費量が少ないのは明らかだ。
同じサイズの艦ならば単純に1.5倍近く行動時間が増える。このメリットはかなり大きいと思えた。
逆に人間が必要するスペースを切り詰めダウンサイジングも可能だろう。
潜水艦に乗ったことはないが通路や水密扉は13才の自分にしても狭く感じた。
小型潜航艇を搭載しているところからすると居住区画は最小限にして余剰空間は有効利用しているようだった。
「あら、いい匂い」
声がしてサヨリたちが入ってきた。
サヨリは一人だけ水着を着用していない。
薄手のブラウスにタイトミニのスカートだ。
胸のボタンは三つ目まではだけていて水着より目の毒だった。
サヨリ、信号長チエコ、看護長イク、エビフリャー艇長チヅル、サキナと斗真の6人が腰掛け水雷長マサエと機関長ヒトミが立っている。
これだけで食堂の人口密度はマサエの言葉を借りるなら、
「マシマシのミチミチ」
である。
「どうして空母に乗っていたの?」
サヨリが口を開いた。
「軍事機密です」
斗真がしれっとかえした。
「でも軍人じゃないでしょ」
「あなた方もね」
それにはこたえず、
「どうやって沈没から助かったの?」
「よく覚えていません」
「チヅルが人魚を見たと言っているわ」
斗真ははっとチヅルに顔をむけた。
「人魚なんているはずがない。なにかの見違えじゃ……」
「そう」
サヨリはカードを取り出した。
「天才ですってね」
「IQは140です」
カードをバラバラに並べはじめる。
左下に置き次は右上というように向きもそろえず配り終えるとデジカメで撮影しすぐに片付けて斗真に手渡した。
サヨリは斗真の処遇を迷っていた。
たとえば潜航艇からシーキャットに移るとき殻の厚さを見ただろうか。見たに違いない。ではどれくらい正確に覚えているだろうか。
シーキャットからすぐに下ろすわけにはいかなかった。かといって色々と覚えられても面倒だ。
斗真は迷うことなくカードを同じ順序で同じ配置に並べなおした。デジカメの写真で確認して感嘆の声があがる。
やはりとんでもない記憶力だった。
「いろは歌ですか」
嘲るように斗真はサヨリに言った。
たしかにサヨリは52枚のカードをアレンジを加え50音になぞらえて置いていた。
「わかよたれそ、から始めて順番を変えるあたりおばさんなかなかの策士だね。ぼくには通用しないけど」
サヨリの
(魚雷発射管から放り出そう)
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