第4話 20-girls①

 サヨリはうかない顔をしていた。

 日本をたってからスプラッシュ諸島海域にシーキャットが沈底して一週間、食事に問題が発生した。

 不味いのだ。

 まさかうら若き乙女が20人も乗り込んでいるこの船で料理のできる者が一人もいないとは誰が予想できただろうか。


 三交代勤務で朝食、昼食、夕食、夜食と4回の食事。料理当番は全員ローテーションを組んで行う予定が、毎度糧食を温めただけときた。

 そもそも米の炊き方さえ一人も知らなかった。


 これまでは一日か二日の航海ばかりだったので気にならなかったが一週間ともなるとさすがにきつかった。

 みるみる艦内の空気がささくれだっていくのがわかった。

 精神的にタフで仲の良かったはずのクルーが衝突し、落ち込みはじめた。


「あーあ無敵の第七艦隊があっという間に全滅しちゃった」

 紺色のスクール水着を着た副艦長のユウが重大事を軽い口調でいう。

 複数の飛行ドローン、イカ天からの情報を解析した結果は空母はじめおよそ3分の1が沈没、やはり3分の1が行動不能だった。

「ブローアウト兵器ね」

 サヨリは腕組みした。


「艦長、漂流者がちょうどシーキャットの真上あたりにいますが」

 イカ天からの映像を切り替えてチューブトップビキニのスズが報告した。


「気の毒だけど今回のミッションは情報収集よ。人命救助はAPTO軍にまかせましょ」

 隠密行動が原則の潜水艦は簡単に浮上できない。サヨリの判断は真っ当だった。

 とはいえ漂流者が助かる可能性は万に一つもなかった。


「あれー、この人コックさんかな」

 拡大された漂流者は白い服を着ていた。


「エビフリャー発進。ただちに漂流者を救助して」

 サヨリの決断は早かった。

 小型潜水艇のエビフリャーが分離した。

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