新人政治官の楽しい休日2
連日のご婚約者は新人美人政治官のファリアさん報道は誤報ですよ〜父さん。
私、新人美人政治官じゃないしね、くすん。
「お姉ちゃん、これ本当? 」
目をキラキラさせた妹が目の前にいます。
手には端末が開いて握られている。
画面には『リカ王子熱愛宣言! お相手は政治官のセレスト・フェリアさん! 』と書かれてて私の頬をキスするリカ王子の映像が写ってた。
私はルリジュースをむせ混んだ。
プライバシーの侵害を訴えてやる〜。
「大丈夫? 」
妹のミリアは私の背中を慌てて叩いた。
「だ、大丈夫」
お姉さんもう歳だよ~死ぬかと思ったよ。
今日は歓迎会の次の日で休みなので妹と王都のムギット本店内で会っているんです。
妹といってもお母さんが再婚後に産んだ妹なんで異父妹なんだけどね。
仲良くしてるんだ。
お母さんと会うより妹と会うほうが多いんだよね。
疑問が一つあってさ同じ母親の血を引いてるのにこの女子力の高さはなに?
私と同じ金の髪は信じられないくらいつやつやと可愛くハーフアップシニオンになってるし。
明らかに化粧をしてる唇はプルルンとしてる。
大きさが普通の灰色の目(私は青です。)は大きく強調メイクだよ。
顔も似てるのに明らかに可愛い。
お姉ちゃん完璧負けたよ…そんなにミリアのお父さんカッコいいのかな…。
父さんより背が低いと思ったけど……ひょろひょろだし。
ミリアはお姉ちゃんは頭が良くてずるい〜って言うけどね、王宮政治官はエリート職だもんね。
「お姉ちゃんがリカ王子と結婚したら私も王宮にいってすてきな貴公子様とか騎士様とかと出会えるかな? 」
ミリアが両手の指を組んだ。
素敵な貴公子風の残念王子とかなら紹介できるよ、すぐに。
「王宮くらいいつでも案内してあげるよ」
観光コースあるしね。
パンフレットもらっとこうかなと思いながらルリジュース緑をすすった。
王宮いったことないのかな? 王都に住んでるのにさ。
玉座の間とかダンスホール、議会の議事堂とかさ。
「観光コースをでしょう? 」
「バックヤードがよければいくらでも案内するよ」
観光コースはもう体験済みなのかと指を顎に当てた。
バックヤードはさ、倉庫とか十倍部屋とか雑多な休憩所とか、ドバータさんがしきってる食堂とか……色々あるよね。
リカ王子の執務室もバックヤードだよね。
「バックヤードってどっかの水族館じゃ無いんだから」
ミリアが不満そうにふくれた。
ふくれる顔さえ可愛いってなに?
「それにしてもお姉ちゃん、全然騒がれないね」
こんなに大々的に報道されてるのにとミリアが小首をかしげた。
「平々凡々だし……紛れ込んでわかんないんじゃない? 」
私はルリ焼きメニューをみた。
私の地味さ加減でわかるじゃないさ。
「別に、嬢ちゃんってわかってるけどね……ルリ焼きおまち! 」
店主におじさんがルリ焼きルリソースと生クリームホイップをカウンターに出してくれたので受け取りに行った。
「美味しそう」
ミリアがきらきらした目で生クリームホイップのルリ焼きにフォークを入れた。
紫色の生地の中から柔らかいルリの実がでてくる。
「あんまり騒ぐと嬢ちゃんも動きづらいだろうって商店街では話し合ったな」
騒がないように決めたんだと店主さんが笑った。
ありがたいです〜店主さんかっこいい〜。
ま、リカちゃんがたまに女の子連れてるのはいつものことだしなと店主さんがカウンターの中から出てきた。
そうか……そういやエスコートされちゃった被害者が他にいるんだった。
本命はラズレイダ夫人だし。
「やっと、リカちゃんも身を固める気になったんだね」
店主さんが楽しそうに笑って手を振った。
ミリアもフォークを手にもって固まってる。
「ええ、そうです、セレさん迎えに来ましたよ」
聞き覚えのある声が後ろからした私は恐る恐る振り返った。
銀の長い髪が日光を反射してキラキラとかがやいてる。
麗しい残念王子が緑の瞳を輝かせて私服でたっていた。
「私は休みでプライベートです」
わーんなんでいるのさと思いながら緑のルリジュースをストローですすった。
「知ってます、私はいつものをお願いします」
リカ王子がかってにとなりにすわった。
い、いつものってあれですか……。
「はいよ」
店主さんがそういってオープンキッチンの方へ行った。
ルリジュースのミキサーを回す。
ムギットのジュースは生ジュースだから沈澱されてたルリの実が混ざるのが見えた。
「ほ、本物ですよね」
ミリアがうわずった声を出した。
「本物ってなんですか? 」
リカ王子が足を組んだ。
偽物のリカ王子……ちょっと見てみたいかも……残念じゃないのかな?
足組んで座ったところとかは妙に様になるよね。
「本物のリカ王子殿下ですよね」
綺麗です〜とミリアがキラキラ指を組んだ。
あんた、王都出身じゃ無かったっけ?
よく王都に出てるリカ王子にあってるんじゃないの?
騙されちゃダメだよ、それ残念王子だからね。
「リカ王子、王都を徘徊してるんじゃないんですか?」
裏道抜け道回り道ってよく知ってるしなぁ。
「セレさん、徘徊って私をなんだと思ってるんですか?それにあんまり王都には最近でてません、私の行動範囲なんてムギットと下町くらいですよ」
リカ王子が心外そうにぼやいた。
仕事が忙しくてどこもいけないんですと残念王子が妙に色っぽくため息をついた。
「お姉ちゃん……姉と婚約するんですか? 」
「ええ、そのつもりです」
リカ王子が極上の笑みをミリアに向けた。
「もちろんそうですよね! やーんお姉ちゃん! 本物綺麗だわ! 」
真っ赤になってミリアが私の背中をパンパン叩いた。
「痛いよミリア、残念王子のどこがいいのさ」
ミリアだって知ってるじゃない、パンツとかランシャツとか購入の事、この間なんかズボン下だよ! おもわずミリアにメールしちまったじゃん。
あんたはじいちゃんかい?
「セレさんは私のことわかってませんね、一応花嫁希望者外国には居るんですよ、私でも」
リカ王子が微妙な顔をした。
カウンターに例のルリジュース紫(極甘)にガムシロップがついたのが出たに気づいたリカ王子は取りに行った。
「そうよ! 例え変わってると評判でも綺麗なものは綺麗なのよ!」
ミリアが拳を突き上げて宣言した。
他の客が何事か言う顔でみてリカ王子に気がついた人が指差してる。
ついでに端末で写真とられてるけどのいいかな?
ムギットって外国向けのガイドブックにも乗ってるし外国人の観光客もいっぱいだもんね。
「あなたたち姉妹は配慮って言うものがないんですか? 」
戻ってきたリカ王子がため息をついた。
「すみません」
私は頭を下げた。
「まあ、いいですけど」
そういいながらリカ王子が再び腰掛けて少し椅子を私の方へ寄せた。
「いいですけど」
ルリジュース紫にガムシロップを入れて残念王子が一口のんだ。
「すごく甘そうね」
「いつもの事だよ」
私はルリやきをフォーク刺した。
「ええ、いつもの事です、セレさんはよくわかってます」
リカ王子が私のすぐそばに顔をよせた。
何してるんだろう?
「これからデートです、広報課から厳命されました」
リカ王子が私が持ったフォークに刺さったルリやきを食べた。
「ええ?私、休みですよ? 」
勝手に人のルリ焼き食うなとおもいながら皿を向こうに置くとミリアがランランと目を輝かせていて少し怖い。
「代休はとれますので見せつけてこいと広報課長に言われました」
リカ王子がそういってルリジュースを飲み干した。
ええ?困るよ。
「お姉ちゃん……仕事? デート? 」
「仕事っぽい」
ミリアが嬉しそうにきいた、私はため息をついた。
本当にエスコート被害者友の会つくろうかな?
「ええ、まごうことなく仕事です、申し訳ありませんが妹さんと会うのは次回にしていただいて行きましょうか? 」
リカ王子が私の手を握って立ち上がった。
「え? 妹って一言も言ってないですよ」
「もちろん当てずっぽです、よくにてたのでそうかなとおもっただけです」
リカ王子が笑った。
私と妹が似てる?
「ええ? 似てないですよ」
ミリアは不満そうだ。
まあ、地味な姉と似てるって言われたことないもんね。
「セレさんの方が優しい顔をしていますが、骨格がよくにてます」
リカ王子がわけのわかんない事を言った。
そのまま引っ張られて立った。
「では、失礼しますいずれ義母上にはご挨拶に伺います」
リカ王子は爽やかに手を振った。
ええ?お母さんに挨拶?
「店長、会計を」
残念王子が私たちのぶんの伝票までレジに出した。
「はいよ」
店主がカウンターで頑張れと笑った。
商店街で応援してるぜとか聞いた気がするけど……気のせいだよね。
「どっかいい行きたいところ有りますか? 」
魔ネーウォレットからお金を払いながらリカ王子が言った。
え?どっかっていわれても困るよ。
今日は妹にお任せの日だったし。
「リカちゃん、ちゃんと方向性決めてからデート誘いなよ」
「星見の塔でも上りますかね……」
リカ王子が呟いた。
「え?あの階段はちょっと」
私は星祭りの恐怖を思い出した。
「そうですか? 」
疲れたら抱き上げるのにとリカ王子がフフッと嫌な笑いを浮かべた。
絶対に拒否します。
ふと妹の方に目をやると端末を構えて私とリカ王子の写真をとってるっぽかった。
あんた、私の不幸をなにとってるのさ。
リカ王子は手を離してくれないし。
ああ、どうしようこのままデートでさらしものになっちゃうの?
父さん……まともに休み欲しいです。
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