新人政治官は思い悩む1

煌めくクリスタルのシャンデリア、ルリカラーにはえる白からピンクのフラワーアレンジメント……美しい装飾の数々……

ため息が出るくらい洗練された歓迎会場に笑いざわめく人々。


隣には美しい王子様……はっきり言って赤札セール品には見えないよ。


さまざまな青から紫のルリ絹を何枚の重ねたまるで神話の神々が着るような正装と略式の一部結いあげた髪型のリカ王子は本当に麗しい。

そして、やっぱり隣の貧相な水色の盛装ドレスを着た私は外国人の高貴な人々にとってめざわりらしい。


自国の貴族の令嬢とかは気の毒そうな顔で見られたんだけどね。


「あら、ごめんなさい? 」

の美しい御令嬢がさりげなく私の足を踏みつけた。

「いいえ」

愛想笑いを浮かべるのもいい加減疲れてきたよ。


隣の残念王子を目当てにまるで光に集まる虫のようにの高貴な方々が集まってくる。

ついでに目障りな私に攻撃を仕掛けないでほしいです、エスコートされちゃった被害者ですから。


こんどリカ王子に偽造頼まれた被害者友の会作ろうかな?

城内にいそうだよね。


後日さがしたら偽装デート? まではいたけどエスコートされちゃった被害者は私だけでした、なんでさ〜。


「…リカ王子、痛いです」

私は諸悪の根源に囁いた。

後一張羅のパンプスが汚れた。

「そうですか、後で埋め合わせいたします」

残念王子が愛想笑いを浮かべて囁き返した。


うーん、誰がどう見ても私たち出来てないよね。


「リカ、お父さんに婚約者の紹介はしてくれないのかい? 」

当代国王陛下のチアキ・ルリーナ様がとんでもない事を言った。


チアキ国王陛下も夢見たいに綺麗な方だけど残念王子だったらしい。

食堂のおばさんドバータさんが言ってた。


「父上、私の執務室付きの新人政治官のセレスト・フェリア嬢です」

リカ王子が微笑みながら私を前に押し出した。

挨拶しろってことかな?


新人政治官把握しておいてくださいよ。


「セレスト・フェリアでございます」

一応政治官の礼をしておいた。


後ろでクスクス笑ってるのご令嬢はこの際無視だ。


「息子をよろしく」

極上の笑みをうかべた麗しき国王陛下に手を握られた。


どうに反応すればいいんだ。

父さん、どうしよう。

一応ブルー・ルリーナの最高位のひとだよね。


「はい」

いっちゃったよー。

でもこの場でお断りは不味いよね。

「真王様、息子がついに婚約しました! 祝福してください」

国王陛下が真王様の方をみた。

「そうですか、おめでとうございます、末長いお幸せがお二人ありますように」

真王様が祝福の微笑みを浮かべたとたん宴会場はなごやかなムードに包まれた。


は、いけない! 流されたら残念王子と結婚と言うことになってしまう。


「いいですね、若い人たちは。」

真王様は穏やかな笑みを浮かべてルリワインを飲んでる。


国王陛下が祝杯をと命じて配らせたものだ。

ご婚約おめでとうございます〜とあちこちで声が聞こえる中の令嬢に射殺さんとばかりににらまれた。


恐怖のあまりリカ王子にすりよるとため息とともに肩を抱きしめられた。

「せっかく逃げ道を残してあげたのに、セレさんうかつですよ、まあいいですけどパンツかってもらう仲ですし」

残念王子が私の耳元でささやいた。


逃げ道? そう言えばリカ王子は婚約者って一言もいってない。

パンツは業務で買ってるだけです!

この間ランシャツも買ったじゃないですか!


まあ、口説きやすくなったし良いかとつぶやいてるのも聞いちゃったよ。


「それでいつ頃結婚するんですか? 」

いつのまにか記者にとりかこまれていたよ!

「公式発表をお待ちください」

残念王子がニコニコいって私をさりげなく記者たちからかばった。


こう言うところはスゴいと思うけどさ。


「セレスト・フェリアさんの親御さんにもうご挨拶はされたんですか? 」

記者の一人がマイクを私に向けた。


そうだ、うちの両親離婚してるし。

実家はケエラリルのしがないルリ農家だし。

それを理由に逃げよう。


「あのうちは」

私がいいかけたのを残念王子が目で制止した。

「セレさんのうちには挨拶にいってません、質問は王室つきの広報担当官にいってください」

リカ王子がかっこよく見えるよ。

「ありがとうございます」

「あとでルリジュースおごってくれればいいです」

私の囁きにリカ王子が微笑んで囁きかえしてくれた。


あ~あの超甘いやつですね。


その様子がなぜか写真にとられる。


ああ、今日も心配で寝られないよ。

明日も熱愛報道とか婚約とか確実に出てるよね。


「ラズレイダ夫人とのロマンスはどうなってるんですか? 」

記者の一人がリカ王子にマイクを向けた。

ピアリさんと……ラブロマンスあったんだ。


心が少し痛いです。


リカ王子が私の頬にキスした。


「ただ今熱愛中で他の人を想ってるなんてあり得ません」

リカ王子が私の手の甲にさらにキスを落としながら言った。

「そんなこと言ってどうするんですか? 」

驚いてリカ王子を見上げた。

「自分でも驚いてます」

リカ王子が微笑んだ。


フラッシュがたかれる。


「皆様、王室広報担当官です、お二人の取材は私を通してなさってください」

広報担当課のオスミアさんやって来て前に出た。


遠巻きにしてたご令嬢の一人がちかづいて……ああ、タマイロ様だよ。

ルリの実研究所の白衣着てないから気がつかなかったよ。


「お兄様、フェリアさんこちらへ」

タマイロ様がそっと手招きしたのでそちらに二人でいくとルリカラーのカーテンの影に導かれた。

「タマイロ様」

私は政治官の礼をした。

「フェリアさん、お兄様、おめでとうございます」

可憐な王女殿下に今日は見える人が綺麗な王女の礼をした。


ルリの実研究所でルリ汁のシミがついた白衣来てる人と別人だよ。


「ありがとう、ケエラリル市のファリア家に婿入りします。」

残念王子が意外なことを言った。

「端末さえもっていってくれれば構いませんよ」

タマイロ様は人差し指を立てた。


たとえ残念王子でもリカ王子がきたら大騒ぎだよ。


「あの、ケエラリルに帰る予定は今のところありません」

それどころかリカ王子と結婚なんてする予定もないよ。

「セレさんは一人娘ですよね」

どこでその情報仕入れた……履歴書か……履歴書だな。

「農家の方は叔父さん一家も共同でしてるし、従兄が何人もいるので大丈夫なんです」

そうお兄ちゃんたちがいるから政治官目指せたんだしね。

そこまでは書いてないもんね。

「そうですか……」

リカ王子が私を見つめた。

「な、なんですか? 」

私はたじろいだ。


何だかんだいってこの人は綺麗で対外的には完璧な王子殿下なんだよね。

この間もおんぶしてもらったし。


「決めました」

リカ王子が爽やかな笑みを浮かべた。

「お兄様、ついに決めたんですね」

タマイロ様が嬉しそうに微笑んだ。


「ええ、本気にセレスト・フェリアさんを落として見せます! 」

極上の笑みを浮かべてリカ王子が言った。


今まで本気じゃなかったんかい?

というか真王様まで巻き込んでるんですが?


「お兄様、まだオッケーもらってなかったんですか? 」

タマイロ様がビックリした。

「ええ、これから頑張ります! 」

リカ王子が小学生みたいなことを言った。


頑張らないでください。


さっき端末確認したらもうリカ・ルリーナ王子殿下ご婚約みたいな速報入ってたよ。


父さん、どうしよう?

お願いだから本気にしないでね。

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