華麗な王宮の裏側なんてこんなもんです。
父さん……限界だよ……いつ倒れるんだろうね。
から笑いしか出ないよ。
「書類をフキイロ様の執務室に届けてくれ」
憧れのレギ・エアリ先輩にどーんと書類を押し付けられました。
えーとどのくらいまで積めるのか限界を確かめてるんですか?
憧れの政治官……うんそれだけです。
「帰りに、社員食堂でるり茶ポットでもらって来てください、あと砂糖とミルク」
リカ王子は端末から顔も上げずに言いやがりました。
相変わらず甘党ですね、かなりの。
ブルー・ルリーナ人は普通ルリ茶にミルクも砂糖も入れませんよ。
私はこのブルー・ルリーナ王国の王宮に今年入った新人セレスト・フェリアです。
一応政治官でリカ王子の執務室配属になりました。
「あと、洗浄符もお願い」
デルフィーヌ・マーシェ先輩がすごい勢いで入力しながら依頼した。
エアリ先輩の婚約者だよね……洗浄符命だけど優しいです。
「売店いくならランシャツもお願いします」
リカ王子が安定の残念ぶりをはっきした。
ランニングシャツですね。
綺麗な王子の下着はランニングシャツですか。
もう何でも驚きません。
もうすぐ真王様がご訪問されるので仕事はまた前倒しです。
過労で倒れる自信があります。
行き倒れたら労災出るかな?
父さん、ルリの木の世話の方が楽です。
好きで選んだ道ですが時々嫌になります。
うちの実家ケエラリルの町でルリの果樹園してます。
結構大農場ですね。
さすがに王宮の裏に広がるルリの魔王が住んでる。
『ルリの森』よりは小さいです。
魔王は自然の管理人だからいるともきゅもきゅ増えるんですよね。
あそこは特に天然魔王だしね。
異世界の人に説明すると『魔王』は『万能型地域密着型精霊王』です。
わー関係無いことも出てきたよー現実逃避? 現実逃避なの?
そんなことを思いながら木製の廊下を歩いていく、王宮だけあってルリの木のよく手入れされている。
つかれるけどたまにはルリの世話したいなぁ。
「フキイロ様、書類が参りました」
取り次いでくれた政治官がドサっと書類をおいた。
ここも目の下クマ牧場が大繁殖中だよ。
「いつもお疲れ様……リカとデートどうだった? 」
「デート……ではないとおもいます」
私が答えるとリカ……どういうアピールしたのかしらとリカ王子の一番上のお姉さん。この国のお世継ぎのフキイロ様がため息をついた。
ここんちの王族は顔だけはいいんだよね。
綺麗な王女殿下も仕事中はメガネにひとつくくりの髪なんだ。
目の下クマ牧場大繁殖してるしね。
「これだけよろしくね」
「はい」
リカ王子の執務室より確実に多い書類に筋肉つきまくりと内心ため息を付いた。
今度書類用のリュック持ってこようかなぁ。
こういう時はリカ王子のところで良かったと思うよ。
お次は社員食堂だよね。
お城の社員食堂はとっても大きくて一説には収容人数によって大きさを変えてるという噂がある。
食券方式で職員は給料から食べた分だけ天引きだけどそんなに高くないしお茶なんかは無料だ。
ミルクとか砂糖とかハチミツとかもね。
「すみません、ルリ茶ポットでください、砂糖とミルクつけてください」
私はカウンターで食堂のおばちゃんに声をかけた。
お茶はカウンターで直接もらうんだよね。
小柄な中年女性がハイよ~と答えた。
確か、ドバータさんだったっけ?
「リカちゃんだねその注文、全く超甘党なんだから」
ドバータさんがワハハと笑いながらルリ茶と砂糖瓶と山羊ミルクのパックをトレーにおいた。
「ありがとうございます」
「あんたも、疲れてるみたいだね、飴でもなめな」
ドバータさんが大きなルリ飴をトレーに落とした。
「ありがとうございます。」
私は飴をポケットにいれた。
「はい、気を付けてもってお行き。」
ドバータさんがトレーをわたしてくれた。
あとは売店だよね。
ランシャツあるかな……
相変わらずよくわからない
「リカ王子だよね、はい、白一択だけどね」
売店の販売員ギーファルさんがまるでおっさんが着るようなランシャツを出してくれた。
天嵐木綿使用とかかいてある。
今度実家に帰るとき父さんにも買って帰ろうかな?
残念王子、ブレない残念さだよ。
あの顔でおっさんランシャツ……
ランシャツとルリ柄トランクスで扇風機の前でくつろぐリカ王子に父さんと同年代かいと私が思ったのはかなり後の話である。
「まあ、いつも、タマイロ王女が買うのはこれだからあってると思うよ」
ギーファルさんが表示をみた。
妹に買ってきてもらってるんかい。
タマイロ様はリカ王子の妹です。
王家には今、上から、
フキイロ王女(跡取り、既婚、子供二人。)
ベニイロ元王女(臣下になってアルファンガスの家名を賜る、娘一人。)
リカ王子(独身、恋人確認されず。)
タマイロ王女(婚約者あり。)
の4人子供? がいます。
みんな夢のように麗しい王族です……対外的には。
開かれた王族ですが、開かれすぎて残念感に溢れてると思うのは私だけではないはずです?
リカ王子が一番残念王子なんじゃないかな?
マーシェ先輩の洗浄符も購入して帰途についた。
「ただ今戻りました」
「おかえりなさい」
戻るとリカ王子が疲れた顔で微笑んだ。
ルリ茶と砂糖とやぎミルクを渡した。
すみませんといいながら残念王子はどっさり砂糖とミルクいれた。
一口飲んでホッとした様子は信じられないくらい綺麗だけど……口の中ジャリジャリしませんか?
「相変わらず、個性的な飲み方ですね」
マーシェ先輩が魔ネーウォレットに代金を送りながら横目で見た。
「美味しいんですか? 」
うげーと思いながら私もおもわず見た。
「美味しいです、飲みますか? 」
リカ王子がうっとりと微笑んで差し出した。
私は思わず受け取って口に含んだ。
好奇心は……猫じゃなくて味覚を絶滅させたよー。
あ、甘ー、甘過ぎる~。
ルリ茶の繊細な風味を消してる。
この人、ブルー・ルリーナ人じゃないんだ、きっと。
「美味しいでしょう? 」
駄々甘王子がもう一口といいながら飲んでうっとりしてる。
「水飲んできます」
後味わるーと思いながら給湯室で水をがぶ飲みした。
ルリ茶のティーパックならここに常備されてるけど……やっぱり食堂でもらってきたほうが美味しいよね。
砂糖とミルクで台無しだけどね。
駄々アマ(党)王子はやっぱり残念王子だ。
「好奇心は災いのもとってね、駄々アマなのよね」
帰ってくるとマーシェ先輩が片目をつぶった。
マーシェ先輩も飲んだんだ。
「話してないで、仕事しろ! 」
エアリ先輩が端末から顔を上げずにさけんだ。
この仕事オバケとマーシェ先輩がつぶやいたのを思わず笑いそうになってあたりを見ると他の先輩たちも忙しそうだ。
「次はどこに書類運びますか? 」
「ルリの研究所に頼む」
先輩の一人が封筒を差し出した。
げっ遠いじゃないかー。
行ってきまーすといって廊下を駆け出した。
わーんここも忙しいよ〜。
今日も十倍部屋で仮眠かな。
寮に帰りたいよ~。
父さん、帰れなくてごめんね〜。
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