星祭り準備中の裏側

お父さん、星祭りの準備恐ろしいです。


リカ王子は外交とかイベント関係を任されることが多い。


星祭りはブルー・ルリーナ王国最大のイベントで守護神白金シロガネ様をたたえるのを理由にしたお祭りだ。


別名を『ルリかぼちゃ祭り』という。


「セレさん、その書類、姉上のところに持っていくついでにパンツ買ってきてください」

麗しい王子殿下は今日も遠慮会釈なくパンツを要求した。


黙ってれば超美形なのに相変わらずもったいない人だ。


「ルリ柄しかありませんけど」

なれてるきてる自分が怖い。

「いいですよ。」

大型端末の画面から目を離さず、ブルー・ルリーナ王国のリカ王子は答えた。


うーんリカ王子のタンスのパンツコレクション見てみたいなぁ……エロい意味でなく。


「ついでに洗浄符お願いね」

マーシュ先輩が顔を上げて手を上げた。


新人政治官のセレスト・フェリアです。

今日も忙しいです。


「セレ! カボチャの在庫量も倉庫に確認しておけ」

憧れのエアリ先輩が情け容赦なく視線も向けずに追加した。


今日は顔色は良さそうだ。


カボチャ菓子及びカボチャ風呂の準備ですね。


忙しい……忙しすぎる。


「いってきます」

書類を抱えて廊下に駆け出した。


忙しそうに王宮の廊下を人々が行き交ってる。

当たり前か、もうすぐ年に一度の星祭りだもんね。


星祭りは別名『ルリカボチャ祭り』と言われている理由はルリの実とカボチャのお菓子や料理を食べて、カボチャ風呂にはいるから。


メインイベントは星見の塔で星を恋人と見ることなんだけどね。

若い人たちは……って私も若いじゃん。


はあ…どうせ王都に来ても仕事三昧……

父さん、恋人欲しいよー。


出来ればエアリ先輩みたいなできる男がいいなぁ。


秋色になりつつある庭を見ながら回廊を通ってため息をついた。


「ファリアさんね、お疲れさま」

執務室の椅子で王太女のフキイロ王女殿下が微笑んだ。


綺麗な王女様も仕事中は眼鏡を装備しているらしいです。


ここでも目の下クマ牧場大繁殖だしね。

フキイロ王女殿下は次期女王陛下だからウチの残念王子よりいそがしそうだ。


「このあとはカボチャの在庫量の確認ですか?ついでにうちの子たち託児所からつれてきてくれませんか? 」

フキイロ王女が嬉しそうな顔をした。


「はい? 」

たしか倉庫のそばに託児所あったっけ?


王女様のお子さまも託児所利用するんだ。

たしかリサ王子殿下とハナ王子殿下だよね。

お母様似で将来有望そうな美幼児だよね。


配信でみた綺麗な幼い王子兄弟を思い浮かべた。


リカ王子にもにてるか……おじさんだもんね。

あの人綺麗だけど残念王子だからなー。

そうにならないことを祈ろう。


「ついでにうちの子もいいかな? 」

ベニイロ一級政治官も便乗いいかしらと微笑んだ。


フキイロ王女殿下の妹でアルファンガスという家名を賜って臣下に下ったんだよね。


お嬢様はたしかクレハ姫だよ。

配信でみたけどお人形みたいに可愛かったな。


「えっと、私でいいんですか?」

王家の子供を連れ出して? 私は小首をかしげた。


誘拐とか思われたら嫌だなぁ。


「連絡しておくからお願い! 」

ベニイロ一級政治官に迫力満点で迫ってきた。

美人は迫力ありすぎる。

「わ、わかりました」

わーん、仕事増えちゃったよー。


「カボチャは大丈夫だったし……託児所か……」

三人も面倒見られるかな?


とぼとぼと託児所の方にいくと元気な子供たちの声がした。


木製の遊具が並ぶその一角は別世界みたいだ。


「シーローガーネさーまはー♪ 」

星祭りの歌を歌ってるらしい。

私も父子家庭だったから保育園通いしてたよ。

いつでも最後まで居残りで寂しかったなぁ。


あの歌も歌った……

まあ、メロディになってないのは子供だからかな?


ポップなルリの実の壁飾りが窓の外から見えた。


お誕生日おめでとうってかかれたしたのきり絵の可愛いルリの羊さんに誕生日の子供の名前が書かれてる。


保育士さんと目があったので頭を下げて私は声をかけた。


「すみません、あのフキイロ王女殿下とベニイロ一級政治官に頼まれたのですが」

「はーい、聞いてますよー、リサちゃん、クレハちゃん、ハナちゃんお迎えだよー。」

先生が部屋に叫ぶと可愛い三人がかけてきた。


正確にはクレハ姫はハナ王子と手をつないで。

リサ王子はそのまま突っ走って。


「お母さん、あのねー」

リサ王子が目の前で固まった。


わー本当に美幼児さんだぁ。


びっくりしてるのかな?

お母様フキイロ様じゃないもんね。


「クレハ、お母さんじゃないです」

リサ王子がクレハ姫の方を向き直った。

「リサちゃん、おバカですね、きょうはお母様たちじゃないのですわ。」

クレハ姫が両手を腰に当てた。

「パーパ? 」

小さいハナ王子がちょこちょこ走ってきて私を見上げた。

わー天使だよ……この子が何十年もたつとウチの残念王子みたいになるのかな?

「政治官のお姉ちゃんはお母様たちに頼まれてきたのよ」

先生が荷物を背負わせながら三人に笑いかけた。

「お母さんにハロウィンの事教えてあげようと思ったのにな。」

リサ王子が寂しそうな顔で床を蹴った。


やっぱり寂しいよね。


「お姉ちゃんに教えてください」

ハロウィンってなんだろう?

どっかの土着のお祭り? それとも妖しい風習?

そんなことないか、子供に教えるんだし。

「うん! いいよ! 」

リサ王子が可愛く笑った。

この美幼児が何十年後に残念王子になるのかな? 

「あのねー、お化けが来るのー」

リサ王子が私の手を握りながら言った。


「お化けがくるんだ? 」

ハロウィンって危ない? やっぱり妖しい風習?

私は思わず手を握りしめてリサ王子に痛いって言われてあわててゆるめた。


「二次界のお祭りです、リサちゃん、クレハちゃん、ハナちゃん、バイバイ」

先生が手を振った。

二次界の妖しいお祭りなんだ。

オバケが出るんだもん。

「あい!」

ハナ王子がちっちゃい手でバイバイした。

「また明日ですわ」

小さい姫が可愛く手を振った。

「さよーならー」

リサ王子が力一杯バイバイした。


うーん、いまんとこ単なる子供だよね。

王子だからと期待した私が悪かったよ。


まあ、職場に元祖残念王子が待ってるし。

お子さまをおくって売店よって帰ろうか?


「あのね、お化けに仮装してお家をめぐってお菓子くれなきゃイタズラするぞっていうのー」

リサ王子が手を振り回した。

「そうなんだ」

お化け仮装で脅かしてよそさまのお宅でお菓子を強奪するお祭りなんだ?


お菓子あげないとイタズラまで!

二次界の祭り不思議だよね。


お菓子強奪祭りなんだね。


「お姉さまはお母様の部下じゃありませんよね」

もうかたっぽの手を握ってるクレハ姫が見上げた。

「私はリカ王子のところのものです。」

クレハ姫、しっかりしてるなぁ。

見透かすような目に少し震えが……悪いことしてないもん。


「リカおじさまの? そういえば、夏夜会でリカおじさまにエスコートされた政治官さん? 」

クレハ姫が急にキラキラした目をした。


忘れてくれないかなあの黒歴史。


「……売店よっていいですか? 」

お菓子かなんかで口止めしよう。

「いいですわ」

それまでにリカおじさまとの馴れ初めをとクレハ姫に上目づかいで見られたけど……出会いは今年の春の部署配置が最初ですからー。


色っぽい話じゃないですよー。


売店につくまでに私の生命力はつきかけていた。


「今日はチビッ子連れなんだ……まさかリカ王子との子じゃないよね」

売店の人がニヤニヤした。


からかってるな……


「ちがいますよー、僕はフキイロお母さんの子ですー」

リサ王子が真に受けて拳をつきあげた。

「あい!」

ついでにハナ王子も手をあげた。


「もちろん知ってますよ、王子様たち」

爆笑しながら売店の人がリサ王子の拳をなでた。


「全く単純ね」

クレハ姫が呆れた顔をした。


女の子の方が成長が早いよね……


「お菓子何がいいですか? 」

売店を見ると一応星祭り仕様になってるみたい。


「いいんですの?」

クレハ姫が目をキラキラさせた。

「いいですよ、その代わり例の件はあまり言いふらさないでください。」

しばらく記者に追いかけられたんだよー。


あとご令嬢と御令息? に詮索されてさ。

残念王子の癖に人気半端ないんですが?


「僕、そのカボチャ君がいい! 」

でっかいカボチャケーキをリサ王子が指差した。


カボチャ型をしたケーキででかい。

値段もそこそこするしね。


「あい! 」

ハナ王子が手をあげた。


お兄ちゃんがすること何でも真似するんだね。


「そりゃ、でっかいから、こっちのルリカボチャマドレーヌにすれば? 」

売店の人が紫色のマドレーヌを出してみせた。


美味しそうだなぁ。


「ええー、カボチャ君ー」

リサ王子がごねた。


「たくさん食べるとご飯が食べられなくなりますわ! それに遠慮というものがないと行けませんわ! 」

クレハ姫が諭した。


やっぱり女の子の方が大人だなぁ。


「わかったよ、ルリカボチャマドレーヌで我慢する」

リサ王子がしぶしぶうなずいた。

「がみゃんする」

ハナ王子が真似した。


将来がみえたね…クレハ姫にしきられるんじゃないかな?


「あとは、今日もリカちゃんのパンツ?」

「はい……」

バレてる……いつも頼まれるしな。

そうだよねと売店の人が棚をみた。

「洗浄符一ダースお願いします。」

マーシュ先輩も定番の頼まれごとだな。

「パンツはどの柄がいい?」

売店の人が珍しい事を聞いた。

「ルリ柄一択なんじゃ無いんですか?」

「星祭り仕様のも仕入れてみた。」

そういって売店の人がパンツ(男性用)を出した。


『星見の塔の上で愛を叫ぶ』ってプリントされてますが?

カボチャと星の総柄ですよね。


「リカおじさんのパンツそれがいいよ!」

リサ王子がルリカボチャマドレーヌを持った手を上げた。


リカ王子、甥子さんの意見を尊重します。


お子さま方を送って部屋にやっと戻ったよ。


「遅いぞ、セレ! カボチャはちゃんとあったか? 」

エアリ先輩が開口一番怒鳴った。


まずカボチャですか? 

すみませんねぇ遅くって。


「はい、きちんとありました」

ええ、でっかいカボチャがどーんとね。


「そうか、ルリの実の在庫量も調べておいてくれ」

エアリ先輩が端末に目を戻した。

「今度はルリの実研究所ですね。」

ハア、城外行かないとかぁ。

「ルリの実はタマにたのんだから大丈夫です、セレさんパンツください」

姉たちがすみませんとリカ王子が立ち上がった。

連絡言ってたんじゃないか……怒鳴られぞんだよ。


風呂セットを持ってるから執務室に備え付けられてる一瞬入浴部屋にいくらしい。


あれもでてきて全然時間たってないのが微妙なんだよね。


ちなみにタマさんはタマイロ王女殿下でリカ王子の妹です。

ルリの実研究所の所長で婚約者ありの美女です。


「ああ、これです、値段はいつもと同じです」

例のパンツを渡した。


「………わかりました、星見の塔の上で愛を叫びに行きましょう」

リカ王子がふっと笑った。


「ご冗談を……」

星見の塔にまでいったらどんな噂たてられるか

記者とかご令嬢とかその他の人たちに殺されるー。


「え?冗談じゃないわよ、ご令嬢とかよけのためにセレには星祭りデートをリカ王子としてもらう予定よ」

マーシュ先輩が洗浄符を受け取りながら携帯端末を取り出した。


魔ネーウォレットに送金される音を聞きながら私は思った。


ええ?いやだよー。

麗しい王子殿下の偽装デートなんてさ。


父さん、私にプライベートは無いのでしょうか?

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