華やかな王宮の裏側なんてこんなもんです。

阿野根の作者

プロローグ 華やかな王宮の裏側何てこんなもんです。

父さん、もう限界です。

王宮の仕事きついよー。


華やかな王宮の裏側は重労働です。

麗しい王子殿下の執務室は今日もオーバワーク気味です。

先輩たちの目は血走ってるしさ。


私は今年入った新人なので荷物運びくらいしか役に立ちませんしね。

書類置き場の山に遠い目を向けた。


「新人……なに遠い目している、ちょっと買い出し頼む」

あこがれのエアリ先輩が血走った目を私に向けた。

少し発熱してるらしく潤んだ目が色っぽい。

「なんですか? 」

私は書類を抱えながらエアリ先輩を見た。

腕がもげそうなくらい重いよ。


「売店で栄養剤と平熱符買ってきてくれ」

エアリ先輩は額に手を当ててから視線を書類に戻した。


あ~医者かかる間もないんですね。


「私はパンツの替えをお願いします」

容貌的には麗しいリカ王子が銀の長い髪をうっとうしそうにかきあげながら緑の目で私をみた。


ああ、綺麗な王子様もパンツはかえるんだ。

私は妙に感心した。


洗浄符センジョウフもおねがーい」

マーシェ先輩がヒラヒラ手を振った。


ここのところ修羅場でお風呂はいれなかったもんね。


他の先輩方を見るとなんか訴えていたのでなんですか? 

と聞くと口々にお口の友達のチョコ豆バーとかトマト炭酸水とか頼まれたので帰りの重いと内心ため息をついた。


アルムレシア大陸のムーラア帝国と地下にあるルーアミーア王国とここ島国ブルー・ルリーナ王国の平和と交流の為に夏に大夜会を毎年持ち回りで開くんだよね。


今年はその夏夜会がこの国で開催されるのでリカ王子殿下の執務室は仕事が前倒しで忙しいです。


私は今年の新人であまり役にたってません。

お使いくらい頑張らないとね。


本当に役立ってないよね……

財務局に書類を届けた帰り道私はため息をついた。


回廊から夏の庭に黄色や赤い花咲いてるのが見えた。


ブルー・ルリーナの王宮は木造でその組み木構造とかが美しいと言われていて観光コースにはそこそこ人が来てるらしい。


王宮の売店にはその王宮見学の観光客目当ての土産物がそこそこあるんだよね。


『王宮見学しました。』クッキーとか

『玉座のミニチュア』とか

『王族写真クリアファイル』とか

あの『伝説の王子クミ・ルリーナ殿下』人形って需要があるのかな?


その片隅に王宮官吏御用達の便利グッズがおいてあるって先輩方に教えてもらった。


これで冷却OK平熱符や

無限に勤務出来ますララビタンZみたいな栄養剤

お風呂に入れない時のエチケット☆洗浄符

着替え用の下着や衣類栄養補給用食品。

はては薬までおいてある。

ちょっとした24コンビニみたいです。

24時間あいてるし……私もここにお世話になるのかな?


「いらっしゃいませ」

売店のお姉さんが棚を掃除しながら愛想笑いを浮かべた。

「あの……チョコ豆バーとトマト炭酸水と洗浄符と平熱符と栄養剤と……男性用パンツお願いします」

「ああ、リカ王子ですね、ルリの実柄一択ですよ」

お姉さんが棚を指差した。


棚にはルリの実柄のパンツが色違いでおいてあった。


ルリの実っていうのは青紫色の5から10センチくらいの甘酸っぱい実でルリの木に生るブルー・ルリーナの象徴で名物だ。


ルリの実の種が瑠璃の宝石になるので実は再利用かたがた様々な料理になってるんです。


ピンクの地に紫のルリの実柄のパンツを手にとってかごに入れた。


早く買い物してかえんないとね。


「はい、あわせて2と半バンです」

売店のお姉さんに言われて魔化マネーを端末で支払い機にかざして料金をはらっていると疲れてるみたいですね、新人さんと心配された。


そんなに顔色悪いですか?

「大丈夫です」

「目の下にくまさんがいっぱいいるよ。」

お姉さんが自分の目の下を指差した。


目の下クマ牧場ですかー? 繁殖期ですよ~。

「いきてます」

私は目線をそらして笑った。


もう、笑うしかないよね、ハハハハ。


お疲れさま新人さんとお姉さんが瑠璃の実飴を一つくれたのでありがたくいただいた。



「行ってきました」

私は扉を開けた。

「新人、平熱符とドリンク剤をよこせ」

「は、はい大丈夫ですか? 」

エアリ先輩に渡すと平熱符とドリンク剤をひったくった。

平熱符を出して額に貼ってドリンク剤を一気飲みして口元を拳で拭った。


やっと人心地ついたようにエアリ先輩は私をみた。


「悪いな新人」

「医者行ったほうが……」

私が言いかけると今は無理だと視線をそらした。


「とりあえず、めしでも食おう」

「そうだよ新人」

他の先輩たちが私に手招きした。


応接セットのテープルを見るとフィッシュバーガーと野菜スープとルリ茶が来ていた。


王宮社員食堂にデリバリー頼んだのか……

ついでにチョコ豆バーくれトマト炭酸水もよろしくお願いしますと言われたので渡すと直ぐに代金を魔ネーウォレットに端末から送ってくれた。


「一緒にいただきましょう」

テーブルについたリカ王子が微笑んでいる。

残念王子のくせに相変わらず美形だ。


とりあえずみんなで夕飯らしい。


王宮務めるまでは地方出身だし王子様とこんなにそばで食事するなんて思わなかったよ。


でも、朝はさすがにいないけど昼夜ほぼ一緒に社員食堂か

仕事場で一緒に同じメニュー食べてるとありがたみが薄れるな……


「今日の中身はサーモンフライですね」

リカ王子はやぎ乳と砂糖を大量にルリ茶に入れながらおしながきをみた。


この王子、超甘党なんだよね。

普通山羊乳とか砂糖とか入れずに飲むもん。


「これパンツです」

「あ、ピンク出たんですね」

ありがとうございますと次はバーガーにルリの実の砂糖漬けをはさんでたべた。


「おいしいの殿下? 」

マーシェ先輩がひきつった笑いを浮かべた。

「おいしいです、新人さんも早くたべてください、パンツ代はいくらですか? 」

次はスープにオリゴ糖とかしてるよ……この甘党王子。

「2/10バンです」

「ありがとうございます」

「洗浄符は1バンだよね。」

リカ王子とマーシェ先輩から魔ネーウォレットに入金を確認して今にも倒れそうな先輩を横目に見た。


「8/10バンです、エアリ先輩」

悪いけど新人なんで貧乏なんだよね。

「わかった」

エアリ先輩がぼーっとお粥をスプーンにすくった。

先輩だけ白粥に海苔つくだ。


「すぐ、払いなさいよ、新人に」

マーシェ先輩がエアリ先輩を横目で見た。

「わかったよ」

エアリ先輩がふところから携帯端末を出してだるそうに送信した。

携帯端末の魔ネーウォレットにチャリンと入金をあらわすマークが出た。


あ~当然の権利だけど守銭奴みたいで心が痛いよ。


「エアリさん……言っても無駄だと思うけど……」

リカ王子がエアリ先輩をみた。


エアリ先輩は大丈夫だと手を上げて席に戻った。


リカ王子はため息をついて食べ終わった人から再開しましょうと微笑んで席に戻った。


私は慌てて詰め込んだ。


とうさん……今日は私、帰れるのでしょうか?


「新人、10倍部屋で仮眠とっとけ」

深夜になりエアリ先輩に声をかけられた。

エアリ先輩こそ大丈夫なんですかと聞くと大丈夫だと答え返ってきた。


「先に寝ておいてください」

リカ王子が端末を見つめたまま言った。


まあ、役に立たない私からのほうがいいよね。

席をたって遠慮がちにみんなにお辞儀して10倍部屋の扉を開けた。


10倍部屋はその名の通り10倍速で時間がながれる部屋で執務室の一角にあります。


どういうしくみかわからないけど、はいってる間は10倍で歳はとらず外と同じ速度で歳はとるらしいです。


とたいそうなこといってもただ単に仮眠ベッドが置いてある小部屋(といっても6畳はあります。)なんですけどね。


布団に入ると少し眠れないけどしばらくして眠気が襲ってきた。


起きると同じ姿勢でリカ王子が端末に打ち込んでいた。

まあ、たいして外は時間たってないしね。


「新人、起きたか?じゃあ、端末にこれ打ち込んでくれ」

エアリ先輩が立ち上がった。


今度はエアリ先輩が仮眠するらしい。

うんゆっくり休んでください。


とうさん、ここでは1日は32時間あるらしいよ、フフフフ。


なんかナチュラルハイの気持ちで仕事をこなしていく。


一週間後執務室は死屍累々の状態とかしていた。

「なんとか間に合いましたね」

死にそうな顔でリカ王子が机に顔をうつ伏せた。


1週間頑張ったら何とかなったらしい。

私もお風呂入れないから額に洗浄符はってすませちゃったし……

爽快感ないけど清潔になりますね、マーシェ先輩。


バンザーイと先輩たちが万歳している。

エアリ先輩は疲れ切った顔で10倍部屋のベッドに倒れ込んでる。


私も万歳したくなって腕を上げかけたところでリカ王子が私のスーツの裾をつかんだのに気がついた。

「明日は楽しい夏夜会です、盛装をもってきてくださいね、フェリアさん」

リカ王子が机に突っ伏したまま横を向いて私をみた。


「はい? 」

「ファリアさんと一緒に夏夜会に出ます」

リカ王子はむにゃむにゃ言って寝息たてはじめた。


え……どういうこと? それに新人としか呼ばれなかったのに名前よばれた。


「3年に一度の夏夜会年入社組は、この修羅場で脱落が多いからおわるまでは、新人としか呼ばないことにしてるんだよ」

エアリ先輩がふらふら出てきて医者よって帰るといいながらカバンを持った。


そうなんだ...…え? 夏夜会でるの?


「ああ、出席して、殿下をお嬢様方から守るのも仕事だ、あと、ボーナスでたら、もうひとつ盛装作っとけよ」

エアリ先輩が振り向いて爆弾を落として出ていった。


ええー夏夜会なんて無理だよ~。


まだ、リカ王子殿下は恋愛する間はないらしい。


ボーナスは確か夏夜会のあと出るはずです。

そんなぁー盛装なんか一枚あればいいじゃない。


「いつも、同じ格好と言うわけにいかないからね。」

マーシェ先輩がポンっと私の肩を叩いてちょっと~一人で大丈夫? と言いながらエアリ先輩を追って出ていった。


いつも出るの?

パーティ出席も仕事なの~?


あとに残るのが茫然自失の私と死屍累々な先輩とリカ王子だったよ。


まあ、俺達も出るからと先輩方に言われた。

いざとなったら頼りますからね~。



夏夜会はたしかにリカ王子殿下が優雅にエスコートしてくれましたよ。

銀の長い髪を複雑に編み込んで瑠璃の飾りをつけて瑠璃絹の正装をしたリカ王子は日頃の行いはどこ行った並に麗しく綺麗でした。

隣が平々凡々の私ですみませんということで。


ええ、ご令嬢やら王女方等女性となぜか男性に嫌な目で見られましたが。


わーん仕事だもん〜私のせいじゃないもん。

第一リカ王子って跡取りじゃないじゃん。

上に王太女確定の長姉と優秀な次姉としたに頭のいい妹君がいる残念王子にどこが需要があるのさ。


美貌か? 身体めあてか?

エスコートされたけど案外筋肉あってガッチリしていて優男じゃないですよ。


だから私をにらまないで〜


そして先輩がたも確かに夏夜会に出席してました。

ずるいよ、先輩方目だってないじゃん。

盛装もシンプルな感じだし……


なんで私こんな可愛い系の盛装を先輩たちとリカ王子の口車にのって作っちゃったんだろう?


次は別の人でお願いします。


「セレストさん、次はあちらへ」

麗しい王子殿下が私の手を握って微笑んだ。


あのへんの禍々しい空気読んでくださいよ。


父さん、私、この職場でやっていけるのかな〜

今日も空を…...いや最近は見てないよー。

(仕事で王宮こもってるから。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る