第81話『とにかく布石を打ちまくる』
<薔薇の戦士連隊・隊員任命権>がどうやら攻略の鍵になりそうだ。
コンちゃんを攻略する上で重要なのは、やはりダンジョンコアの停止だろう。
そのための布石を出来るだけ打っておかないとな。
まずはダンジョンを有する州の州牧あたりか。
心当たりのある俺は、エムゼタに行き冒険者ギルドのメンバー募集記事を見ていく。
「ゴードン……たぶん、これだな」
----------
前衛・後衛・斥候急募!!
当方剣士2人(Fランク長剣+Fランク細剣)とCランク魔術士の3人パーティー
前衛職で防御に長けた方、弓や投擲、魔術で後衛を務められる方、斥候として罠の解除や索敵を行ってくれる方を募集してます
Eランク以上希望
Fランク以下でもやる気のある方は大歓迎です!
最終的には5~6人パーティーでダンジョン制覇を目指しています
まずは一度エムゼタシンテ・ダンジョン浅層を一緒に探索してみませんか?
当方もまだまだ冒険者としては未熟ですので、一流の冒険者を目指して頑張りましょう!!
----------
……なんだこのアマチュアバンドのメン募みたいなのは。
まぁいいや。
たぶんこれがエカナ州牧のお孫さん、ゴードン君のパーティーだろう。
剣士の内の細剣使いはジータさんに違いあるまい。
「あのー、この人たちと連絡取りたいんですけど」
というわけで、俺はその募集記事をギルド受付に提出した。
2日後、さっそくエムゼタシンテ・ダンジョンに入ってみよう、ということで午前中の早い時間に現地集合となる。
なんか「とりあえずスタジオ入ってみましょうか」っていうアマチュアバンドのノリだよな、これ。
「はじめまして。Fランク冒険者のゴードンです」
まずは屋台で合流し、簡単な自己紹介を済ませる。
「えっと……なぜSランクのお二人が僕らなんかと? いや、僕らとしては凄く嬉しいんですが……」
ここは正直に話しておこうか。
それで断られたら別の方法を考えよう。
「ゴードンさんに対しては失礼な申し出かもしれませんが、俺たちは州牧とのコネを作りたいと思っています」
そこでゴードンくんと魔術士のじいさんんが険しい表情になる。
ジータさんは困惑しているようだな。
「……そのために僕を利用しようと? そのような申し出を僕が受けるとでも?」
「見返りとして、ダンジョン探索と、そして強くなるためのお手伝いは出来るかと」
「強く……?」
ゴードンくんの目に興味を示す色が灯る。
じいさんの方は複雑な表情だ。
俺たちがどこの馬の骨とも知れぬ有象無象なら一喝して終わりなのだろうが、一応Sランク冒険者であり、俺たち『ヤマオカズ』が皇帝に謁見したことも、このじいさんなら知っているだろう。
権威主義者なじいさんとしては、俺たちの背後に見えるものがあまりにも大きすぎるので、どう接していいかわからないんだろうな。
もちろんゴードンくんに危害を加えるようなことになればしっかり動くとは思うけどね。
「俺が薔薇の戦士連隊の連隊長代理だということはご存知で?」
「……ええ、まぁ」
「皇帝陛下と冒険者ギルド本部ギルドマスター、そして
「ええ……」
ちなみに相国ってのはあの宰相っぽい人の役職。
政務だけでなく軍務も取り仕切ってるすげー人らしいわ。
頑張り過ぎて体壊しちゃいけないので、<HP自動回復>を追加しといたよ。
ちょっとでも疲れがとれますように……。
「どうです? ゴードンさんも薔薇の戦士連隊に入隊されては?」
「え?」
そこからは手八丁口八丁で説得し、連隊への入隊と、共にダンジョンを探索することを了承させた。
こんな事もあろうかと<交渉術>を習得し、最大レベルまで上げてあったのだ。
ゴードンくんだけでなく、ジータさんと魔術士のじいさんにも入隊してもらう。
ゴードンくんは<長剣術>、ジータさんは<細剣術>、じいさんは<詠唱短縮>のレベルをそれぞれ上げ、余ったSPで全員の<魔力操作>も上げておく。
入隊直後に天啓が降りたことに、3人は驚いているようだった。
簡単な打ち合わせを終えてダンジョンへ挑む。
俺とデルフィは事前に10階層までを攻略しており、ほかの3人に合わせて転移陣を使うことに。
どうやらすでに5階層は攻略しているらしいので、5階層再アタックからのスタート。
俺とデルフィが同行する場合に限っては階層規制を行わないことにしてもらった。
ダンジョン攻略は基本的にゴードンくんら3人を中心に行ってもらい、俺とデルフィは補佐に回る。
入隊してもらった以上、彼らには経験値とSPを稼いでもらいたいからね。
SPが貯まるごとに適宜スキルを習得させたりスキルレベルをアップさせたりしていくと、3人とも面白いように強くなっていったよ。
特にじいさんのはしゃぎっぷりは凄かったな。
自身は魔術士としての限界に達していたと思っており、今回も足手まといになりそうだと判断したらパーティーから外れるつもりだったらしい。
ところがバンバン天啓が降りてどんどん魔術の腕が上がっていくもんだから、楽しくってしょうがないみたいだ。
<魔力操作><詠唱短縮><多重詠唱><MP消費軽減>のレベルを上げていけば、魔術の腕は面白いように上がるからね。
剣士の2人も各剣術スキルだけでなく、<魔力操作>を上げ、あとは俺が適宜アドバイスすることで、体内魔力を操作して身体能力を上げることも出来るようになったし。
一週間で一気に20階層まで攻略。
21階層からの荒廃エリアはさすがに『聖』魔術がないと厳しいので、エムゼタに行ってもらった。
前衛二人には『聖纏剣』等の魔術剣と魔術紋の入った装備を揃えてもらい、魔術士のじいさんには『聖』属性の攻撃魔術を一通り覚えてもらう。
そしてさらに一週間をかけてダンジョンを完全攻略した。
さすがに最後のドラゴンはちょっとお手伝いしたけどね。
そこで俺たちは、ダンジョンコアである真島裕太と再会。
ダンジョン制覇の実績を得たお三方には先にお帰り願い、俺は真島と対峙する。
「やあ、久しぶり……かな?」
「うん。前回は散々な目にあったみたいで」
「いやホント、大変だったよー。最終的に倒してくれてありがとね」
「あー、前回は俺がやったわけじゃないけど」
「はは、そうだったね。で、今回は君が僕を倒してくれるのかな?」
「いや、今回は残念ながらお預けだ。一応聞くけど、DP貯まってる?」
「うん、すごい勢いでね」
「まあ、出来るだけ使わずに貯めこんどいてよ」
「わかったよ。次は期待していいんだよね?」
「おう」
余談だが、このダンジョン制覇の実績で、ゴードンくんとジータさんはBランク冒険者に、じいさんもBランク魔術士となった。
ちゃんと実力も伴ってるから3人だけでも充分活動できると思うし、実績のおかげで仲間も集めやすくなるだろう。
**********
「ショウスケ殿、孫が大変お世話になったようで。礼を言わせてもらおう」
で、俺は当初の目論見通りエカナ州の州牧とコネが出来た。
<交渉術>LvMaxを利用した手八丁口八丁で、薔薇の戦士連隊へ入隊してもらう。
なんだかんだで皇帝と相国が入隊したってのがデカいな。
そこから俺は『友達の友達はみな友達だ。みんなで作ろう友達の輪』作戦と称し、コネを広げていろんな州や国、機関の偉いさんを口説いていく。
深淵のダンジョンとタバトシンテ・ダンジョンを有するトウェンニーザ州の州牧は少し不機嫌だった。
深淵のダンジョンを制覇したことに対しては凄く感謝してくれていたのだが、皇帝との謁見のあと、てっきり自分のところにも挨拶に来ると思っていたのに、なぜかエカナ州牧の元を先に訪れ、しかも薔薇の戦士連隊へ入隊させてしまった、ということでヘソを曲げてしまったらしい。
これに関しては完全に俺のミスだが、思わぬ所に解決の糸口があった。
州軍総大将がラザフォード男爵といい、前回基礎戦闘訓練で1日だけ一緒だったあのダリル・ラザフォードの父親だったのだ。
とりあえずダリルの居所を探し当て、ゴードンくんと同じように口説いて入隊させる。
あとは活動を手伝いつつスキルを上げてやればすぐに懐いてくれたので、そこからラザフォード男爵を口説き、トウェンニーザ州牧に辿り着いた。
会って話さえ出来れば手八丁口八丁で口説くのは簡単だ。
奇縁はさらに続く。
あの駄犬ことアルダベルトの奥さん、フェドーラさんの父親が、国際ダンジョン協会のお偉いさんらしいのだ。
ダリルもアルダベルト夫妻も今回は初対面なのだが、俺的には一度会ったことがあるってことで、赤の他人よりは随分と接しやすかったよ。
アルダベルト夫妻も同じように入隊してもらい、そこからダンジョン協会の偉いさんを数名口説き落とした。
これはかなりでかいな。
さらにヘグサオスク共和国の評議員や、前回も回った獣人の国、鬼人の島、竜人の国でも同じように、権力者や周りに影響のある名士なんかをどんどん入隊させていく。
もちろん、そのついでに未発見のダンジョンを再攻略。
若くて小規模なダンジョンはダンジョンコアの復活も早いらしく、復活の度に訪れては停止していく。
魔石の採取にくる冒険者もいないので、出来るだけDPを貯めこむようお願いしておいた。
あと、今回もネサ樹海でデルフィのご両親に挨拶をしたが、ご両親に関してはデルフィの希望で入隊させなかった。
いろいろ思うところはあるんだろう。
ただ、親父さんの紹介で、ネサ樹海の偉い人を数名紹介してもらい、入隊してもらったけどね。
結果、我が薔薇の戦士連隊は100名以上の隊員を得ることに成功。
その大半は各国の皇帝や国王等の最高権力者を始めとする、大人物たちだった。
あ、それから前回お世話になったガンドルフォさんパーティーやクロードさん、カーリー教官、フランツさん、フレデリックさん、ハリエットさん、トセマ冒険者ギルドのフェデーレさんとエレナさん等々、その辺りの人たちも入隊してもらってる。
あと、せっかくくっついていい感じになってるヘクター夫妻に、二人の事情を忘れると面倒なので『淫魔の館』のママ、それから、あんまお世話にはなってないけど開始直後に事情説明が必要なトセマの門番のアディソンさんもついでに入隊してもらった。
そして俺たちは2度目の百鬼夜行を迎えることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます