第15話『暦と時間と度量衡』
収納屋を後にした俺は、一旦ギルドに戻った。
いつものように日替わりランチを注文する。
「あれ、今日は人少ないね」
正午に近い時間で、いつもならごった返してるのに、今日は半分以上空席だった。
「今日は無曜じゃからの」
カウンターに居るのもいつもの元気なオッサンじゃなく、ちょっと覇気のないじいさんだった。
「ああ、それでか」
いつもより人が少なく、思いの外静かだったので、メシでも食いながらいろいろと情報の整理をすることにした。
**********
まずは暦のこと。
収納庫の契約が月極めなので、そのへんのところはしっかり理解しておかないとな。
この世界にも一週間という概念がある。
ただ一週間は7日じゃなく8日で、七曜の代わりに八曜がある。
いや、八曜とか曜日ってのはたぶん<言語理解>さんがいい感じに翻訳してくれてるんだろうけど。
で、各曜日だが、属性が割り当てられている。
『地』『水』『火』『風』曜日が平日、『空』曜日が半休、『光』『闇』曜日は一応平日で『無』曜日は全休って感じ。
ギルドは年中無休だけどね。
とはいえ「無曜は休み」って認識はみんな持ってるから、職員はともかく冒険者は休みとる人多いみたい。
あと、『光』と『闇』曜日はイベントに割り当てられることが多く、光曜に結婚式なんかの祝い事、闇曜に葬式なんかの忌み事を行うのが一般的なんだとか。
とはいえそこまで厳格に決められてるわけじゃないから、例えば闇曜を休んで無曜と合わせて連休にし、行楽に出かける、とかはみんな普通にやってるみたいね。
そして一ヶ月は28日。
一年は13ヶ月で、年始めに0月0日ってのが入って365日。
4年に1回の閏年みたいなシステムはないみたい。
月の数え方は普通に1
次に時間だが、1日を12分割した一区切りが『刻』。
時刻の場合は「こく」といい、時間を表す場合は「とき」という。
この1刻が大体2時間って感じかなぁ。
この辺の翻訳は2時間ひと区切りってことで、俺の中途半端な時代劇知識が影響してんのかなぁって思うけど。
じゃあそれより短い単位はというと、なんと『分』や『秒』も存在する。
1刻を120分割したのが1分で、1分を60分割したのが1秒。
分と秒に関しては元の世界の感覚に近いから使いやすいんだけどね。
ただ、こっちの世界の1秒と元の世界の1秒がぴったり同じかっていうと、どうなんだろうね。
多少ずれがあっても体感じゃわかんねぇや。
この分と秒についてはちょっと都合が良すぎると思ってんだよなぁ。
実際秒刻みの時計を見たことあるから、上手いこと翻訳されてるってわけでもないみたいだし。
もしかしたら、なんだけど、俺より前にここに来た異世界人がいたりすんじゃねぇの? って思っていろいろ聞いてみたら、やっぱそれっぽい感じだった。
500年ほど前に現れた賢者サンペーってのが提唱したらしい。
名前からしてちょっと怪しいよね。
このサンペーって人は当時大飢饉で滅亡寸前だったこの世界に農業革命を起こした人なんだとか。
その時にいろんな知識をこの世界に残していった。
勝手な推理だが、異世界人の内政チートって奴じゃないかなと思ってんだ。
こっちの世界で500年前っつっても時間の流れが違うから、現代人じゃないかと俺は思ってるんだよねー。
あと、時刻だけど、単純に
割り当てられる属性は新属性『空』を除く7つ。
一刻=地刻、二刻=地水刻、三刻=水刻、四刻=水火刻……って感じで進んでいく。
で、十一刻だけ闇地刻じゃなく無刻になる。
まぁ最近は属性割当てで時刻を表す人は少なくなったみたいだけどね。
ややこしいのが1刻120分てところかな。
まぁこの辺は慣れればなんとかなりそうだわ。
度量衡も賢者サンペーが残していったもので、なんとメートル法が採用されている。
温度も摂氏だしな。
長さの基準はサンペーが持っていた神の
ただし、転移した時にたまたま持ってた安物の定規とかだとその正確性に疑いはあるけどね。
温度は摂氏だから、水の融点を0℃、沸点を100℃として刻んでいくわけだ。
この摂氏てのは確か一気圧下ってのが基準だったがはずだが、正直こっちの世界と向こうの世界の気圧が同じかどうかなんてわからんのだよね。
で、4℃の水1
体感的にはあんまかわらんし、特に不便は感じないから細かいところは気にしなくていいか。
最初の内は<言語理解>さんが上手いこと翻訳してくれていると思ってたんだが、まさかメートル法が採用されているとはね。
いろいろ考え事してたら昼食時が終わったのか、食堂はほぼ空席になった。
俺は食器を返した後、2階の洗面所で歯を磨く。
さて、午後から何をすべきか……。
よし、どうせなら治療士ギルドに行くか。
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