第11話『魔術士ギルド』
「えーっと、魔術と魔法の違いってなんすか?」
「うーん、説明が面倒だから魔術士ギルドで訊いてくれる?」
「あー、はい。あと、魔術士ギルドって、冒険者ギルドに登録してても大丈夫です?」
「もちろん。魔術士ギルド、治療士ギルドは最低限登録しておいたほうがいいよ。ギルド同士お互い助けあっている仲だしね」
「へええ、そうなんすね」
「ショウスケくんもよく知ってるダジギリ草の根は魔力回復薬の原料なんだけど、依頼主はほとんど魔術士ギルドなんだよ?」
「ああ、そうだったんですねぇ」
そういや納品しまくったな。
ダジギリ草の根は結構高値で買ってくれるから助かるんだよな。
掘るのが大変だけど。
「カード貸して。連絡しとくから」
フェデーレさんにカードを渡すと、例のごとく台座に乗せて手続きを始めた。
異なるギルド間でもネットワークが出来てんのかね?
やっぱハイテクだわ、この世界。
「はい。とりあえず魔術士ギルドと治療士ギルドに連絡しといたから。生活魔術を習得できたら治療士ギルドで簡単な回復魔術も教えてもらっときな」
「あざーっす!」
**********
魔術士ギルドは冒険者ギルドのすぐ隣の建物だった。
冒険者ギルドに比べて小さいのは、宿泊施設が狭いのと、解体施設がないから、らしい。
「いらっしゃい。ショウスケちゃんね?」
受付にいたのは色気全開のおねいさんだった。
いかにも魔女って感じの三角帽子を被り、マントを羽織っている。
服はこれ、ビスチェっていうんですか? 肩紐とかない感じのやつ。
マントとビスチェの間から見える谷間が……、こりゃいい目の保養になります。
インドアな人なんだろうか、お肌真っ白だわ。
「ちょっとぉ、そんなに見られるとおねーさん照れちゃうわぁ」
いやいや、それ完全に見せてるよね? 隠そうと思えばマントで隠せるよね? ってか今ちょこっとマントの位置ずらして肌色面積増やしたよね!?
「あ、すいません」
でも一応謝っておこう。
「じゃ、早速だけどカード出してもらえる?」
「ええっと、冒険者カードでいいんですか?」
「ふふ。それはギルドカードっていってね。どのギルドでも兼用できる仕様なのよ。冒険者の人は冒険者ギルド以外に登録しない人が結構多いから、冒険者カードって呼ぶ人が多いけどねぇ」
そうだったのかー!!
とりあえず俺はおねいさんにカードを渡す。
おねいさんは例のごとく台座にカードを乗っけて手続きを始める。
「じゃ、血をいただくわね。……痛くしないから怖がらないでね」
いや、わざとエロい感じで言ってるよね、この人。
一滴だけ血を提供する。
例のごとく採血による傷は瞬時に治療されている。
「じゃ簡単に説明するわね」
ってことで魔術士ギルドについて簡単な説明を受けた。
ここ魔術士ギルドでは魔術の習得や魔術訓練補佐、あと魔術の研究なんかが行われていて、冒険者ギルドみたいな依頼もあるみたい。
ランクシステムも冒険者ギルドと変わらん感じだった。
「じゃあ、ショウスケちゃんは事前貢献が結構あるから、登録料免除でFランクからのスタートにするわね」
「えっと、事前貢献?」
「ほらぁ、ダジギリの根をたっくさん納品してくれたでしょ? 冒険者ギルド経由でも魔術士ギルドからの依頼を受けたことになってるから、ショウスケちゃんは充分ランクアップの条件を満たしてるのよぉ」
へええ、そうなんだ。
「じゃあ、例えば魔術士ギルドの依頼はこっちで直接受けたほうがいいとかってあります?」
「それはないわねぇ。どっちで受けても報酬や貢献度は変わらないわよ」
「そうですか」
そのへんはマジできっちり提携とってんのな。
「ショウスケちゃんは魔術を覚えたいのだったわね?」
「はい、そうなんですよ」
「じゃあ基礎魔道講座はサービスしちゃいましょ」
「マジっすか? ありがとうございます!」
なんかよくわからんけど、タダってのはありがたいことだ。
フェデーレさんが言ってた魔法と魔術の違いってのも、その基礎なんちゃら講座で明らかになるはず!
「あら可愛い」
やべぇ、笑顔がエロい……。
と思ったらおねいさん、急に真顔になって俺のことじっと見だした。
やばい、ドキドキが止まんねぇ……。
10秒ぐらいでおねいさんの表情が和らぐ。
「ショウスケちゃん、魔力に鈍感なほう?」
「あー、えっと、魔力とか感じたことないですねぇ」
そうなんだよなー、俺ってば<魔力感知>スキル持ってないんだよなぁ。
覚えるにしてもSP全然足りねぇし。
でもこれまでの経験上、スキル習得は努力でなんとかなるって分かったし、魔法も使えると思いたい。
「そ。じゃあついてきて」
おねいさんが立ち上がり受付卓から出て歩き始める。
ミニスカートにロングブーツ、真っ白な魅惑の絶対領域! ってのを期待してたけど、床に着くぐらいのロングスカートだったよ……。
あ、でもこれはこれでありかも。
俺はおねいさんに連れられて、四畳半ぐらいの小さい部屋に入った。
部屋の中には木製の椅子が一脚あるだけで、他には何もなかった。
入った瞬間、なにかに圧されるような感覚を受け、軽く眉をひそめたところを、おねいさんに見咎められる。
「ふふ、なにか変な感じした?」
「そうですねぇ。なんかこう圧迫されるというかなんというか……」
「そ。じゃあ素養はあるのね」
「はぁ」
「この部屋はね、特別に魔素の濃度を上げてるのよ」
「魔素……ですか?」
魔素というのは魔法の原動力=魔力の素となるものらしい。
この世のあらゆるものに含まれ、空気中にも漂ってるらしい。
もちろん人の体の中にも魔素は流れている。
そういや俺のこの体は、こちらの世界に合わせて作られてるとかなんとかお稲荷さんが言ってたな。
じゃあこの体の中にも魔素は流れてるんだろう、きっと。
「なにか感じ取ったということは、魔力感知の素養があるって証拠よ。じゃ、そこに座って」
俺は部屋の中央にある椅子に座った。
おねいさんは背後に立って、俺の肩に手を置く。
「それじゃ、今からおねーさんが魔力を流すから……、ちゃんと感じて?」
ムム……、魔力以前にその言葉遣いに下半身が反応しそうです……!
ジャケット越しに伝わるおねいさんの手の感触が……、ほとんどねーよ豚野郎の皮のせいでよ!!
クソっ!! ジャケット脱いどくんだったぜ!!
「どうかしら?」
いかんいかん、気を取り直して……。
うーん、なんとなーく何かが流れてきてるような……。
【スキル習得】
<魔力感知>
お! スキル習得!!
と思ったらなんかすげー事になってるぅ!?
おねいさんの手から流れ込んでくる魔力が体の中をぐるんぐるん巡ってんのがすげーわかる!!
しかも部屋の中の魔素? それがなんか目に見えるぐらい漂ってんのもわかるわー。
「あら? もう大丈夫みたいね」
そういうと、おねいさんは肩から手を離した。
うう、名残惜しい……。
「じゃあ次は魔力操作ね。体の中を巡る魔力は感じ取れたと思うから、今度はそれを動かすようにイメージしてみて」
「これを動かすんですか?」
うーん、何となく言わんとしていることはわからんでもないなあ。
「そ。体の中の流れを変えてみたり、体の外に出してみたり、出したものを取り入れてみたり。あとは部屋の中の魔素を取り込むようなイメージもね。これはちょっと時間がかかると思うから、しばらく1人で頑張ってみてね」
そういうと、おねいさんは部屋を出て行ってしまった。
名残惜しい……。
とりあえず俺は、おねいさんの期待に応えるべく、魔力操作の訓練に励んだ。
《スキル習得》
<魔力操作>
**********
気が付くと見知らぬ天井が見えた。
周りを見てみると、ギルドの寝台っぽいけど、なんか雰囲気が違う。
荷物なんかは全部置いてあったので、とりあえず全部持って出る。
やっぱ寝台の外の造りも冒険者ギルドとはちょっと違うな。
階層の広さ自体半分ぐらいだし。
階段を見つけたので下りてみると、何となく予想していたがそこは魔術士ギルドだった。
受付には例のエロいおねいさんがいた。
「あら、気がついたのね?」
「えーっと、どうも」
「ふふ……。驚いたわよぉ、昨日なかなか出てこないから様子を見に行ったら、ショウスケちゃん倒れてるんだもの」
昨日ってことは、日付変わってんのか。
「あの、すいません。じゃあおねいさんがあそこまで……?」
「ハリエット」
「はい?」
「おねーさんの名前。ハリエットっていうの」
おお、なんかドイツの舞台女優みたいな名前だな。
なんつーか、この妖艶な感じにぴったりだ。
「えっと、じゃあハリエットさんが運んでくれたんですか?」
「まさかぁ。職員に運んでもらったわよぉ」
「俺はなんで倒れてたんすかね?」
「魔力切れじゃないかしら? 魔力操作に精を出しすぎたのね」
そういやMP0で気絶ってステータスの説明にあったな。
「でも、魔力切れを起こしたということは、魔力操作も出来るようになったってことよね?」
「ええ、おかげさまで」
「ふふ。ウチの寝台でお休みしたから、今はもう元気でしょ?」
「はい。やっぱここ寝台は冒険者ギルドのとは違うんですか?」
「そうね。冒険者ギルドの寝台は肉体的な疲労に効くのよ。そしてウチのは精神的な疲労や魔力消耗なんかに効くの。もちろん体の疲れもある程度はとれるけどね」
「そうですか。助かりました」
「10Gね」
おねいさんが俺に向けて手を出す。
「はい?」
「ウチの寝台、1回10Gなの」
「あ、ああ。そうなんですね」
まあしょうがないかな。
スキル習得の対価と考えれば安いもんだろ。
とりあえずギルドカードを渡した。
「ごめんなさいねぇ。サービスしてあげたいんだけど、こればっかりはねぇ」
「ああ、いえ、いいっす」
「さてと。じゃあ基礎魔道講座に進んでもいいかしら?」
そういうと、ハリエットさんは俺を見て艶やかに微笑んだ。
……でも、俺の視線はもうちょい下の方に釘付けなんですけどね。
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