イチノセカズマの運行記録

蓮咲蓮

Mission.0 あの日の空――GCT.105.7/30――

 僕はいつも丘で父さんが乗っている飛行機が飛ぶ空を見ていた。

父さんはいつも空に一筋の飛行機雲を見て、見るたびにあんなふうに飛んでみたいと思っていた。

あの日の空を見るまでは…


空が…紅い。悲鳴と銃声が交互に鳴り響いている。母さんとははぐれてしまって今はどこにいるか分からない。みんなが逆方向に走っているのに僕はいつもの丘を目指した。

父さんが助けてくれる…。

そう信じて丘を駆け上がって僕に待っていたのは…黒い煙を上げて落ちていく父さんの機体だった。いつも青い空に白い綺麗な一直線を引いていた父さんの機体は、今日に限って紅い空に黒いもやもやとした黒い線を描いて落ちていく…。

『いつもの日常』がいとも簡単に崩されるもの。この時そう『戦争』という言葉を理解たような気がする。同時に夢にいたような浮遊感から現実に引き戻され、現状を理解した。ミサイルがこっちに向かってきている。

逃げなければ…。しかし人間に避けられるはずもない。背中に死が迫っている。

(―――もうだめか)

その時、銀髪の少女が僕とミサイルの間に割って入り手を前に出してこう言った。

『死ぬその瞬間まで生きることを諦めちゃいけないよ、少年』


これは目の前の少女ととある船団についての物語…いや『記録』である。

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