第124話プラムの花が咲いていた

 午前中に調子がよかったので、正午に飲み物を買いに行った。

 地面を見つめながら歩いてくる人がいる。

 五メートル先から精一杯、笑顔で挨拶した。

 その人は一瞬だけ顔をあげて、どこか疲れたような笑顔で「こんにちは」と言ってくれた。足元が気になるのか、心が沈んでいるのか、また視線を落してしまったけれど。


 自販機に小銭を入れ、トロピカーナ二本買ってしまうと他にはなんにもない。

 いや、眩しい太陽があった。きれいな青空。

 大きく息をついて、胸を一杯にしながら家に帰った。

 薄紫色の芝桜とプラムの木が花をつけていた。

 うん、季節を告げない花はないね。

 桜のような可憐な花びらをつけた芝桜。

 まばらな緑の中に、ささやかな白い花弁をつけたプラム。


 その他にはボケの赤い花々や、白い房をなびかせた花、黄色い小ぶりの花が密集して咲き乱れ、桜は散ったはず、と思っていたら八重桜が花弁を風に舞い散らして。

 ちょっと桜餅みたいって思ってしまった。まあ、近所の夜桜見物もやかましくなくなった。

 今がちょうど平和だ。

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