第9話やなせいのりさんの『僕のそばにある彼方』を読了。

 フォロワーさんが増えてびっくりしたけれど、なぜか、このエッセイのPVは一ページもめくられてはいないのだから、このエッセイはやなせいのりさんは読んでないはずである。

 が、やなせいのりさんのスケジュールなんて知らないのだから、文句を言う筋合いでもない。わたくしは寝る前の貴重な一時間を、近況ノートではなく、読書感想文に費やすことに決めた。わたくしは作文は書けないが、読書感想文はそつがないのだ。個性がないともいう。

 さて、とりあげたいのが『僕のそばにある彼方』。素直でつつましやかで、時々コピペがあったりでほほえましい。しんみりしてるところで、ボケボケの主人公がツッコミに回るという、奇妙なアンバランスさに違和感を覚えたが、キャラ崩壊とまではいかない。他の読者さんは「主人公の成長」ととらえていた。そうでしょうとも。


 最初にでてきた桜ちゃんが、何ものぞ? というあやふやさが、うまく神秘的に演出できていたと思う。丘でしか会わないお友達……そしてそれは幼くしてみまかった幼馴染の「丘の上の木への願い事」で生まれた奇跡というから、ラストは見もの。

 三人目のヒロイン、観鈴さんは純粋で行動的で魅力ある。ただ、こういう立ち位置って、アニメなんかではヒロインというよりライバルキャラのような気もしないでもない。

 急速に近づいていく二人に対し、姿を消すことで対抗する桜。

 当然主人公は気になって探し回るが、それまで桜のことをいっこも知らないし関心がない、一方的な関係であったことを思い知る。

 どうなるのかな?

と思っていたら、突然第二のヒロインが出てきて、冒頭にあった主人公の謎の行動の意味がぼんやり浮かんできた。

 すべては「これからいなくなる幼馴染」が、主人公を想って祈った結果――「桜」という友達がその時生まれた、ということだった。

 これは少女漫画だったら、読んでもいいなアと思う。作者が文学少女的だから。

 などと言いつつ、「かなた」のおいのりシーンで、しっかり泣いてしまった。自分が死んでゆこうというときに、残していく者への純粋な想いが、とても胸をうった。

 わたくしはこういう作品が読みたいし、書きたいんだと思った。

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