世界の果てに見えるもの

翠簾

エピローグ

「じゃ、行ってくるね。」

「あ、兄様…」

妹・リリーに呼ばれ青髪の青年・リオンは振り返る。

「どうかした?」

「い、いえ、なんでもありません…」

リリーはうつむく。

「そう?じゃ、俺はもう行くから、留守は任せた。」

そう言うと、リオンは、家を出ていった。





ここは、光ノ国。

王様・アルと、王女・ハルの治める一つの国。

決して裕福な国、とは言えないが、それなりに国民は幸せであった。

そう、何年か前までは…




「おおー!リオン!」

「あ、どーも。」

リオンが振り返ると、いつも手伝って働いている店の店主である、ニコラだった。

「よく来たじゃないか!今日も仕事は沢山あるよ!」

「マジすっか〜!頑張ります!」

そう、リオンは宣言し、腕まくりをした。

「バリバリ売ってやりますか!」





ところかわって、ここは、光ノ城。

窓辺に1人の少女がいた。

「今日は、いい天気ですね!」

そう言って振り向いたのは、この国の第一王女・ルナだ。

「そーだな。こんな日は、うたた寝でもしたいところだ。」

続いて緑の髪の青年・ミーフェスが答える。

彼は、ルナの付き人の1人である。

「ふふ。今日は、お仕事も落ち着いていますし、街にでも行きませんか?」

「おおー!いいじゃあねぇか!行こうぜ!」

ミーフェスが叫ぶ。

「全く、君って、子供なの?いい年ししてまだそんなに喜ぶの?」

そう言ってやってきた金髪の青年・オリエルが呟く。

「あ、オリエル!仕事は終わったのですか?」

「え?あ、ああ。今日は、書類の整理だったしね。僕にとっては、簡単な仕事だよ。」

「あー、嫌味にしか聞こえない…。俺、こーいうの嫌だわー。俺より年下のちびっこのくせに。」

「うるさい。おっさん。」

オリエルは、睨む。

「何か言った?」

「ち、ちょっと!やめてください!どうして喧嘩するんですか!仲良くしてください!」

ルナが間に入る。

「る、ルナ…。」

「はいはい。すいませんでした、姫さん?」

「全く、もう…!」

そう言ってルナは微笑む。

「で?街だっけ?行こうぜ?」

「はい!」

ルナが返事をするとともに1人の兵士が飛び込んできた。

「る、ルナ様!」

「おい、どうした?」

「や、奴らが…。闇ノ国のモノがやってまいりましたっ!」

「…っ!」

ルナはミーフェスとオリエルをちらりと見る。

「行くか。おい、お前。」

「は、はい!」

「街か?」

「そうです!もう、市民たちも騒ぎ初めて、騒ぎになりつつあります!」

チッ、ミーフェスは、舌打ちをして言う。

「おい、兵士全員を集め今すぐ街へ。

撃退を始める。俺達は、先に行く。リーダーは俺の代わりにアルジェイ、レイラに任せる!以上!急げ!」

「はい!隊長!」

1人の兵士は、急いで部屋を出ていった。

「私たちも行きましょう。」

「ああ。」

「さくっと終わらせるぞ。」



誰もこの時予感なんてしてなかった。

悪ノ国がなんで来たのか。

ルナと、リオンが運命の鎖に絡まることも。

裏切りと、希望の先に見えるものは何なのか、この時は誰もまだ知るはずがない。

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世界の果てに見えるもの 翠簾 @Siera

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