中世における「悪魔」の正体と魔除けの効用

食器としての毒殺避け以外でも、人間の身体に有毒な硫化ヒ素に強く反応して黒く変色することから、銀は「害悪を避けるアイテム」として経験的に考えられました。


ここで留意しておきたいのは、伝説上の「悪魔」や「モンスター」というのは、つまり「病」そのものだという可能性です。


中世ヨーロッパにおいて、街の周りの森は暗闇の世界であり、「魔」の領域でした。


人ならざるものの支配するそこから、「死」が運ばれてくると考えられていたのです。


公衆衛生や細菌学の概念が発達する以前のこと。

これはつまり、森の自然の中からもたらされた雑菌・細菌が、「未知の力で死をもたらす怪異や呪い」として認識されていたのではないでしょうか。


だからこそ、銀の装飾品を身につけることで、それを避けることができると考えられたのでしょう。



さらに、銀イオンには、実際に高い殺菌効果もあります。


現代でも日本では、温泉や公衆浴場の殺菌に、実際に銀イオンが使われているそうです。


上記のような魔除けの効果と共に、こうした殺菌効果もまた当時の人々の間では経験的に知られ、だからこそ「魔の世界からもたらされる、見えざる未知の脅威」=細菌を抑え込む力として、「銀の武器」が有効であるという伝説が生まれたのではないでしょうか。

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