未ダ恋ナラズ
人生
プロローグ 未田花与、17歳。
明るく活発で男勝りな性格とは裏腹に、見た目は可憐で女の子らしいが、やっぱりその性格が影響するのか、誰もが振り返るほどの容姿ではないものの思わず二度見してしまうくらいにはボーイッシュな印象があった。
今も、写真の中でひだまりのような、心に温度があるのならその熱を見る人の中に滲ませるような、そんな笑顔を浮かべている――
……交通事故だった。
学校からの帰宅途中、飲酒運転の車が歩道に乗り込んできたらしい。
未田花与、享年17。
突然の死だった。
厳かな雰囲気、読経、呼吸することさえはばかられるような、息のつまる空気――
葬式だ。
顔を上げると四角い枠の中で微笑む幼馴染みがいて、苦笑したくなってしまうけどそうすることさえ許されないような気にさせられる。
「…………、」
彼、
悲しくないわけではない。
相手は幼馴染み、近所に住む年上のお姉ちゃん。いろいろ傍迷惑な人だったが、家族ぐるみの、そして家族同然の付き合いをしてきた。
(……ハナ姉……)
それが突然、だ。
――戸惑いばかりが胸の内を支配する。
未だ現実を呑み込めない自分がいた。
目を落とし、胸に当てた手に返るやわらかな感触。
「なんかねぇ……」
この場の雰囲気にそぐわないような、暢気で間の抜けた声が聞こえる。
場違いな台詞は背後から。
「コメントしづらいよねぇ……自分のお葬式って」
まったくだよ――とは、思っても口には出来なかった。
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