外章 光の中で

癒し神/終わりへの道のりは


 暗くも明るくもない空間。四方八方には白い靄がかかっている。

 その中で、人影が二つあった。


 一つは薄い浅葱色の着物の女性。そしてもう一つは、その女性の膝で眠っている桃色の着物の少女だ。


 浅葱色の着物の女性は、膝で眠る少女の頭を慈しみを込めて撫でている。少女は静かな寝息を立ている。


「今回も、あなたはよくやりました」


 女性は少女へと話しかける。静かに呟くように……まるで独り言のように。


「あなたなら大丈夫ですよ」


 女性の仮面の下から、涙が一筋流れ始めた。それは彼女の頬を伝い、一粒が少女へと零れた。少女の瞼が僅かに揺れる。その滴を、彼女はそっと拭う。


「あなたならきっと」


 彼女は一度言葉を切って。


「〝救う〟ことができますよ。あの猫神ねこがみ様を救ったように……」


 彼女は微笑んで、仮面を外す。


「〝誰か〟を救えます。それは……私かもしれませんね」


 彼女の微笑みは、少女がどこかで見たことのあるものであった。それに少女は気付くことはない。彼女の本当の微笑みは、常に仮面に隠されているのだから。


「さぁ、起きなさい。〝私〟の癒し神」


 彼女はまたそっと少女を撫でる。


「あぅ」


 その声を聞いて、彼女は仮面を付けた。


「おはよう、癒し神」

「おはようございます、女神様」


 少女はゆっくりと起き上がった。目をこするその姿はとても愛しい。


「さぁ、行きましょう」

「はい……」


 また彼女らは癒し続けていく。

 その旅の果ては、彼女らにとって絶望しかないというのに。

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