破壊兵器ヨミド

@VRN

第1話

いました、奴です!」

 「よし、出撃!新型弾を何としてもぶち込むんだ!」

 「艦載機接敵!…駄目です、近づくことすら出来ない!」

 「化け物め…」

 「空間圧縮反応あり!また逃げられます!」

 「ルート解析急げ!宇宙の果てまで追いかけてやるんだ!」


 西暦2020年9月16日。東京ではオリンピックが閉会し、平年通りの残暑に人々が辟易している。そんな平凡な日常は突如として終わりを迎えることとなる。午後8時22分。

「おい、何だありゃ?」

「流れ星?でかくね?」

「近づいてるような…」

その黒く巨大な何かは突如として空から落ちてきた。隕石であろうか?だとしてもあれほど巨大な隕石は誰も見たことはない。人工衛星であろうか?まさか、あんな巨大な人工衛星など存在しない。ともかくその何かは地表に落下しつつある。落下地点は…東京湾のようだ。

「おい…おい!」

「やべえ、やべえよ!」

「逃げねえと…」

「どこにだよ!」

「高ぇとこだよ、どこでもいい!」

 巨大な構造物が海面に落下すれば何が起きるか。言うまでもなく、津波が起きる。

大津波が東京湾沿岸を呑み込む。あまりに突然の出来事に人々は逃げる間もなく波に呑まれた。一体この瞬間だけで何人の命が奪われたのだろうか。

巨大構造物は東京湾に落ちてきたが、あまりの巨体ゆえにその上部は海に沈んではいなかった。構造物の上部は人間の上半身のようにも見える。すると、構造物が東京に向かって動き始めた。陸に近づくにつれ、その全体像があらわになっていく。構造物の下部は人間の脚に酷似している。まさに巨大ロボットと言うべき風貌であった。

そのロボットは東京へ上陸する途上で足を止める。ロボットが向き直ると、その先にはレインボーブリッジがある。そしておもむろに足を振り上げると、ロボットはレインボーブリッジの中心に向かって足を振り落とした。レインボーブリッジは無惨にも真っ二つに砕けてしまった。

レインボーブリッジを破壊したロボットはついに東京に上陸した。その全長はあまりに大きく、スカイツリーさえも遥かにしのぐほどの巨体であった。ロボットは何かを物色するかのように東京を歩く。その一歩一歩が小さな建物を踏み潰していく。

ロボットは東京タワーの前で止まった。レインボーブリッジの如く破壊するのかと思いきや、ロボットは東京タワーの基礎に手を突っ込む。基礎を破壊された東京タワーは、その形を保ったまま倒壊した。そして、ロボットは倒壊した東京タワーを拾い、棒きれのように振り回す。ロボットは意気揚々と東京タワーを振り回しながら、スカイツリーに向かって歩いていく。スカイツリーの前で歩をとめると、ロボットは野球選手のように東京タワーを構えた。しかしロボットの大きさと比べると東京タワーをバットと呼ぶには短すぎるように見える。ロボットはそのまま何度か素振りをする。そしてしっかりと東京タワーを構え直すと、ロボットは東京タワーをフルスイングでスカイツリーにぶつけた。東京タワーはめちゃくちゃにひしゃげ、スカイツリーもぶつかった頂上部分が折れて地表に落下した。東京タワー、スカイツリー共にまだ多くの人が残っていた。ロボットはひしゃげた東京タワーを数回地表に叩きつけ、その後投げ捨てた。その様子は駄々をこねる子供のようである。

東京タワーとスカイツリーを破壊したロボットはしばらく静止していた。すると、突如として空高くへと飛び上がった。このまま宇宙へと戻っていくのか。かと思いきや、ロボットは唐突に上昇を止め、再び地表へと落下してくる。地表にぶつかった時、そこには大きな穴が空いた。地下鉄が通っている位置までロボットの体は沈んでいった。ロボットは足を地下へと沈めながらまた歩き始めた。

次に止まったのは都庁の前であった。これをどう壊してやろうか。ロボットはそう思案しているかのように都庁の前で静止している。にわかにロボットが屈みこむ。ロボットは都庁の前で右手の指をデコピンするかのように構える。そしてその指をロボットから見て右側の棟に放った。たったそれだけのことで、右側の棟は吹き飛んでしまった。残った左側の棟に対しても同様に吹き飛ばす。あっという間に都庁は中央部分のみになった。ロボットは立ち上がり、都庁の残りを踏み潰しつつ都庁前を後にした。

ロボットによる破壊は止まることを知らない。東京ドームは天井を指で押し潰された。国会議事堂は中央塔以外が慎重に踏み潰され、その後中央塔も都庁の時と同様に指で吹き飛ばされた。雷門は大提灯を取り外されそうになったが、うまくいかずに破かれてしまった。ロボットはそのことに腹を立てたかのように雷門を粉砕した。フジテレビの社屋は球体展望台を剥ぎ取られ、それを投げつけられた。社屋、展望台共々ひどい有り様となったが、更にロボットの目から発せられた光線によって完全に焼き尽くされた。

東京をことごとく破壊していくロボットはまたしても静止した。しばらくするとロボットは西へと向き直る。そして右腕を正面に構えると、その右腕は前方に発射された。まさにロケットパンチと言うべき代物である。放たれた右腕はまっすぐに飛んで行く。その先にあるのは富士山のようだ。右腕が富士山の中腹に衝突する。富士山はロボットの右腕に貫かれ、その穴からはマグマが流れ出る。右腕はUターンすると、再び富士山を貫く。富士山に二つの風穴を空けた右腕はロボットの元へ戻ってきた。ロボットはスピードが落ちた右腕を左腕で掴み、右腕を発射前の状態に戻す。

東京に加えて富士山までも破壊するロボット。日本は、いや世界はこのロボットに破壊し尽くされてしまうのか。その時である、空から小さな人型ロボットが大量に飛来してきたのは。

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