⑨巫女めがねっ娘は頑張ってみる
「どうして土曜に透子と出掛けておったのじゃ?」
月曜の朝。
週末を挟み、高瀬の件に動きもない。
だから、ちょっとした話題のつもりで翼は土曜日のことを話したのだが、途端、
「い、いや、それは誘われたからだ。放課後の誘いを断ったところだったし、土曜は予定もなくて特に断る理由もなかったしな」
「そうかそうか。放課後デートよりも、休日デートを選んだのか……」
「デートじゃない。飽くまで『委員長と副委員長の親睦を深める会』だ」
辟易としながらも、とにかく事実を述べる翼。嘘は言っていない。
「はぁ……屁理屈ではあるが、主の方がそうとしか思うておらんのなら、それはそれでよいか……」
何かを諦めたように溜息を吐きながら、真萌。
「で、じゃ。週末に色々と考えておったのじゃが、安楽椅子探偵というわけにも行くまい。今日の放課後は、われも高瀬さんとやらに会ってみることにするぞ。その上で、またわれの神社で改めて落ち合って結果について検討しよう」
「え? でも、人づき合いは苦手なんじゃ……」
「まぁ、そこは、頑張ってみようと思ったのじゃ。せっかくヒーローに……主のホームズに、なれるのじゃから、の。ほれ、ホームズは時には潜入捜査も辞さないぐらいアクティブに足で捜査するタイプの探偵じゃろう?」
巫女魔法少女めがねっ娘となったことが、真萌の心境に変化を与え始めているらしい。孤立気味なことを委員長として心配していた翼は、その変化を嬉しく思う。
ワトソンに憧れた己の願望に合わせてくれたのであろう、ホームズに準えての動機の説明も、少々気恥ずかしくもあったが、やはり嬉しい。
そこまで真萌の気持ちを汲み取りながらも、微かに頬を染めて意味ありげに自分を見詰める視線には気付いていなかったのだが。
「はぁ……とはいえ、巫女魔法少女めがねっ娘絡みで主と連んでおることを他者に知られるのもよろしくないのでな、適当に居合わせるようにするからの。じゃから、近沢さんにもそういうことにしておいて欲しい。主の委員長の仕事が終わる頃合いを教えてくれれば、その頃に校舎入り口付近におるようにするからの」
少しばかり不機嫌になり続けられた言葉に、
「わ、解った、それなら大体……」
少々の疑問は感じつつも、先週野々花が蹲っているのを見掛けた時間帯を教える。
そこで、他のクラスメートが登校してくる気配があった。
「では、続きは放課後、じゃの」
真萌との朝の時間は終わり、翼は委員長として登校してくるクラスメートに分け隔てなく接し始める。
「おはようs、翼君!」
「おはよう、透子」
当然そこには透子も含まれるが、特別なことは何もなく、他のクラスメートと変わらぬ扱い。
「あはは、やっぱり、何も変わらないね。ま、いいけどね」
少々残念そうにしつつも、翼の反応を笑って流した透子だったが、
「……ん?」
何かに気付いたように首を傾げる。
「どうした?」
「あ、ううん、なんでもないよ! じゃ今日も一日宜しくね」
それだけ言って、自分の席へ。
気になって透子が見ていたと思しき方を確認すると、そこでは真萌が妙にスピーディーに一限の準備を進めている姿があるだけだった。
特にそれ以上は引きずらず、翼は引き続き登校してくるクラスメートと挨拶を交わしていく。
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