あなたが愛する玩具の庭は 07
厳重な監視体制の中王城へ連れ戻されたアビスは、謁見の間で王と対峙していた。
「どういうことなの!?なぜフォルトにあんな酷い事を!」
噛み付くように王へと歩み寄り眼前で睨み付ける。息も触れる距離で王の視線は万華鏡の瞳を穿つ事なく宙へと放り投げられていた。
何故かいつも王は視線を逸らす。それがアビスは嫌いだった。
「フォルトは、自らの誇りを取り戻すために、必死で僕に尽くしていた!なのに何故!?」
「……あぁ、ああそうだったな、だからあれをお前の騎士にしたのだった」
半歩ずれたようなタイミングで王が思い出したかのように返答する。
「ならば!」
「えらく、今回は食い下がるな」
不意に、王の手がアビスの剥き出しの下腹をゆっくりと撫でた。愛撫するような優しい手つきにアビスの身体が少しだけ震える。
「あの騎士と寝たか?」
王の言葉にアビスが勢い良く首を振った。
「天に誓ってそのようなことはしていない!僕は、貴方の后なのよ!?」
アビスの即座の否定を見て、王が酷薄に笑う。
「――そうだな、やはりお前を妻に、あれを騎士にしておいてよかった」
滅多に無いお褒めの言葉にアビスの顔に喜びが差す。だが次の言葉にその表情が凍りついた。
「王の妻という肩書きでも無ければ、お前の貞操などすぐに汚れていただろうからな」
「――え?」
「やっと、やっとだ」
王がアビスを抱き締めた。まるで壊れ物を――希少な宝を扱うかのような手つき。初めての抱擁にアビスの心は急速に冷えていった。
やっと、気付いたのだ。遅すぎるほどだったが。
そこに、愛が無いことに。
「すべてが揃った。お前の魂にやっと役目を与えられる」
王は恐怖に絡め取られ固まるアビスの白い頬を撫でる。何度も何度も。
「ディオサを私に還してくれ」
アビスの首に王の手が巻きついた。
アビスの意識はそのまま闇に落ちていく。
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