周回プレイの裏事情

此の人

本文

なんてことだ。

今朝、村の者から連絡がきたた。

娘がなくなった とな。

「なぜ、お前が死ななければならなかっ ▼」

私は涙をこらえることができなかった。

「なぜだ、何故神はこの若い娘の命を奪った。何故だ。 ▼」

私は一晩中泣きじゃくった。

娘は村で一番賢かった。

娘は歳もあまり重ねていなかったがそれでもわかるほど端麗な容姿を持っていたため将来の婿にと言い寄る男は多かった。

私は娘を守るため肉体改造をしてゴリゴリの頑固な親父を演じた。

私におびえて娘を諦める程度の男なら婿には入れないと。


しかしある日、娘は突然姿を消した。

私は必死に娘を探した。

娘に言い寄っていた男たちにも探すように言ったが最後に見かけたのが精霊の神殿の近くだと告げると あそこは魔物が多いから と言って誰一人行動しない。

半年が過ぎたある日、その男は風のように現れた。

私に娘を探してやると言い、私の家からありったけの薬草とポーションを買い取り仲間を連れて神殿へと足を進めた。

ひどく場違いに優秀な装備を身に着けている彼の名は勇者だと言った。

魔王との因縁に決着をつける旅の途中だそうだ。

私はこの勇者という男を娘に紹介してやりたいと思っていた。

これが二日前。

そして今日。

彼は娘が帰ってきた。

シスターに黄泉返りの呪文を唱えてくれと頼んだが、魔物に侵食されすぎていたのでもう手遅れだと告げられた。

体中には剣や呪文で負わされたであろう傷があった。

痛かったろうに。苦しかったろうに。

娘の姿は私が知っているものとは違い肌の色が青いところをはじめ、様々なところが違っていた。

が、小さいころに私がプレゼントした守りのネックレスをしていたので私はそれが娘であることを悟った。

私は、そのネックレスを勇者に渡した。

彼はさっそくそれを身に着け教会へ一度立ち寄った後、風のように去って行った。


次の日、たくさんの村の人たちが私にお悔やみの言葉を言いに来ていた。

私は、無心で座っていた。

たくさんの人がベルトコンベヤーのように私に声をかけていた。

その日の夜

私は教会へ言った。


「失礼する。シスターはいらっしゃいますか」

私はドアを開けて言った。

聞くまでもなくいつもの場所に神父はいた。

「こんな月も出ていない夜に何か用ですか?」

机に置かれたろうそくの明かりがあたりの暗さを一層引き立てていた。

「私に聖書を貸してもらいたい。この世の理不尽さについて知りたいのだ」

「わかりました。」

シスターは顎に手を当てて少し考えを巡らせたあと

「あなたも理解できないことがあるのですね。私にも理解できないことがあります」

その声には少しばかり怒気が込められていた。いや、呆れたというべきか。

シスターは机に開かれている本をそのまま私に差し出した。

「私はあなたの行動が理解できませんよ。何故私の本へこんなことを書かれたのですか」

「書いた?私が?」

シスターは顔をしかめて言う。

「娘がいなくなっただの勇者が死んで蘇生だだの。…。ずいぶん前に書いたものですよね。気づいたらこんなことがたくさん書かれていましたよ。いつかいたのか。呆れたものですあなたはこのことを予言していたのですか?」

「ちょっと見せてくれ」

私は本を取り上げてそのページを探した。

そこにはこう書いてあった。

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セーブデータ1:2016/06/02 18:06

クリアデータ

セーブデータ2:2016/06/06 15:34

王の城(城下町)

セーブデータ3:2016/06/09 08:12

精霊の神殿

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そしてその前のページ


紙が貼りつけてあった。

その紙には

私の字で

娘がいなくなってから今日までのことが書かれていた。

「なんだ…これは」

シスターがいぶかしげな顔で言う。

「なんだって、あなたが書いたんじゃないですか」

「私はこんな事書いていない!!」

は?という声が聞こえた。

「本当なんですか?」

「ああ」

そんな受け答えをしながら読み進めていくと一枚の紙が挟まっていた。

その紙の裏にはこんなことが書かれていた。

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この世界はまやかしだ。

この世界は神ではなく人間の手で作られていた。

しかしその人間とは私やあの娘についてしつこかったアレックス君や、ましては娘などではない。

この世界は誰か大きい人間たちの観賞用なのだ。

ああ、もうすぐ終わる。

終わってしまう。

私はもうここで消えてしまうのだろう。

所詮私たちは観賞用。

その大きな人間たちが飽きてしまったらそれまで。

何故世界が終わるのがわかるのかというと。

嫌な予感がするのだ。

魔王城の近くに黒い壁が現れて、その壁の上から下に向かい白いどこかの文字が流れていく。

そしてどこからともなく音楽が聞こえてくるのだ。

ああ、もうその音楽も終わろうとしている。

私はこの文章を教会にあった不思議な本の中にしまっておこうと思う。

しばらく眺めているとどこかの文字がある一瞬でパッと変わってしまう不思議な本だ。

最後に、シスターは娘の葬式の夜。

誰かに犯されて殺されてしまう。

お前は…

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ここで途切れていた。

なんだこれは。

この字は紛れもなく私の字。

どういうことだ、さっぱりわからない。

葬式の夜、シスターが?

「なぁ、シスター。この後誰かに会う予定はないか?」

「私ですか?いえ、ないですけど」

「それならば私と一緒にいてくれ」

きょとんとした顔でシスターは私を見ていた。

そして何かに気付いた後顔を赤らめて言った。

「そんなっ。私達…。まだ早いとは思わないの…?娘さんが死んで心の穴を埋めたいのはわかるけれど…。その」

扉がノックされた。

「静かに。」

そして扉が開き中から男が出てきた。

アレックスだ。

「シスター、いますか?」

アレックスが声を張り上げて言う。

咄嗟に私たちは机の下に身を隠していた。

小声でシスターがいう。

「アレックス君ですよね。何故隠れるんですか?」

「いいから黙っていろ」

それでもシスターはうずうずしていた。

この教会にはたいてい頼みたいことがある者がくる。

シスターは人に頼られることが好きなのだ。

「私、行ってきます」

手を伸ばした時にはもう遅かった。

シスターは立っていた。

「こんばんはアレックスさん、なにかようでしょうか」

私は机の下から彼女を見てみた。

「あ、シスターさん」

アレックスが言った。

次の瞬間シスターがおびえた表情で一歩引いた。

「いやね、道具屋の娘が死んでしまったでしょう?あの女は将来私の嫁にするつもりだったのですが。」

「そ、そうだったんですか」

「だからね、代わりにあなたを俺の嫁にしようと思いましてね?」

「っ…。聞きたいことが二つあるわ。何故私なのか、その刃物はなんなのか」

刃物!?

「何故って、君は可愛らしいじゃないか。まだ年端もいかなかったあの娘よりは別の魅力がある。それと、これは君が俺の言うことを聞かなかったらその考えをただしてあげるためにね。」

どうにかしてシスターを守らなければ。

しかしどうやって。

先ほどから風を切る音が聞こえる。

あれはアレックスが刃物を振り回している音だろう。

察するに刃渡りは私の腕よりも長そうだ。

どうする、決死の覚悟で突っ込むか?

ふと、手元にある本を見下ろした。

本の隙間からはらりと一枚の布が出てきた。

「さあこっちに来て、シスター」

「誰が行くもんですか」

「そうかい、じゃあまずはその考えをただしてあげないとねぇ」

アレックスだと思わしき足音が近づいてくる。

「いや、来ないで!!」

アレックスが机の近くまで来た。

私は無心で立ち上がった。

「アレックスウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」

アレックスは一瞬ひるんだ。

が、すぐに攻撃態勢に入った。

「くくっ、生身で剣に敵うか!!」

確かに、アレックスの剣の腕は相当だと聞く。

だがっ。

「残念だったな!!」

右から降り降ろされた剣を腕で受け

「こちとら生身じゃぁないのよっ!!」

左手でさっき本から出てきた布をアレックスの胸に押し当てた。

「インスタントマジック!!ヒートボムッ」

私がそういうと左手の布に刻まれた五芒星が光り。

爆発した。

アレックスの断末魔と爆風が教会を埋め尽くした。


直後。

シスターの横にある大きな本棚が倒れだした。

「シスター!!避けろぉおおおお」

シスターは腰が抜けて立てなさそうだった。

くそっ


ドッ!!!!

私は本棚を背中で受け止めた。

やっと、娘を守るためだけに着けていた筋肉が初めて威嚇以外の効果を発揮した。

「ぐっ。右手が」

さっき斬られた腕の傷が痛む

シスターは…。

良かった。逃げているじゃないか。

「ここまでか…。」

今度は私が逃げられなくなっていた。

我に返ったシスターは一度逃げたくせにまた私のところへ来ようとしていた

「来るなッ!!!!」

シスターはひるんだ。

本棚は重たすぎて一瞬でも気を緩めれば死んでしまうだろう。私では戻すのは無理だ。

「娘よ、私もいくぞ」


大きな音とともに本棚が倒れた。

私は死んだ。




シスターは私を魔法で生き返らせた。

私は結局娘のところへ行けなかった。

それとあの不思議な本も見つかった。傷一つなかったそうだ。

教会も本棚が爆風で倒れただけの被害だったそうだ。

アレックスは右腕を失い療養中だそうだ。

娘がいないことに目をつむれば至って幸せである。

しかし、この世界はまやかしに過ぎなかった。

あと何日でこの世界がおわるのだろうか。

私はこれからどんな気持ちで生きていけばいいのだろうか。

「大丈夫ですか?」

後ろから誰かが話しかけてきた。

「ああ、シスターか」

「私達もう夫婦なんですよ?いい加減リザってよんでくださいな」

「わかったよ、リザ」

リザが毛布を掛けてくれた。

「リザ、私たちはこれからどんな気持ちで生きていけばいいと思う?」

「どうって?」

「このまやかしと分かった世界で…。私たちはまるで金魚鉢の中の金魚。そんな中で何を目指して生きればいいんだ」

「そうですね…。」

リザは私の隣に腰かけて言った。

「目指すものがなくなったからと言って、考えるのを放棄しますか?いろんなことを積み上げていくのを放棄して死にますか?まぁ、それでもいいと思います。だから…。」

私の顔を押さえつけて真正面から言った。

「死ぬ前にやりたいことをさがしてやってみませんか?」

私は大切なものを娘から、リザからもらったのかもしれない。

「そうだな。まずは次の私にむけて我が家の鍵付き宝箱に入ってるであるインスタントマジックの生産でもするかね」



1カ月後のある日

勇者が来た。

「私達結婚しました。  ▼」

私が言った。

「これから教会と道具屋は一緒になります  ▼」

リゼが言った。

そして勇者は道具屋の販売品一覧を見て言った。

「へぇー、このクエストクリアしたらこんなんになるんだ。」

私は言った。

「この前はありがとうございました。これはお礼です  ▼」

インスタントマジックを渡した。

「ちっ、ヒートボムかよ」

勇者が言った。

「俺はカオスフレアがほしかったのに。畜生もう一回だ!丁度いいところに冒険の書があるしな」






セーブしますか

○はい

 いいえ


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セーブデータ1:2016/06/02 18:06

クリアデータ

セーブデータ2:2016/06/06 15:34

王の城(城下町)

セーブデータ3:2016/06/09 08:12

精霊の神殿

セーブデータ4:2016/06/09 09:32

神殿近くの村(クリア済み)


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ロードしますか

○はい

 いいえ






なんてことだ。

今朝、村の者から連絡がきたた。

娘がなくなった とな。

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周回プレイの裏事情 此の人 @Epi1629

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