椿の花は、落ちる為に咲いている

いなばー

第一話 笛の少女

 よく研がれた刃がもう僅かばかりとなった日の光を反射する。

 すぐに闇が押し寄せるだろう。

 それでも荒野に立つ二つのモノは動かない。

 一つは刀を正面に構えていた。

 赤黒く焼けた肌。伸びるに任せた髪や髭。

 袖はたすきで捲り上げ、袴は脛の辺りで絞ってある。

 ひたすら剣のみに生きる武芸者は、ただそこに立つだけで相対する者を圧迫した。

 日が沈み、男の持つ刀から光が消える。

 それを待っていたかのように武芸者の敵が静寂を破った。

 大きく吠えた真っ黒いヤツは、人に似て明らかに人ではない。

 背丈は武芸者の倍はあり、開けた口は人を丸呑み出来る程。

 そんな敵を前にしても男は揺るがない。

 気圧されているのは黒いヤツの方だった。

 ついに耐え切れなくなったか真っ黒いヤツが大きく踏み出す。

 振り下ろされた黒光りする爪を武芸者は事もなげにかわした。

 そしてついでのように刀を振る。

 地面に転がる闇色の腕。

 真っ黒いヤツの耳障りな叫び声が藍色の空に響く。

 それを聞き流すようにして武芸者は無情に刀を薙いだ。

 敵の黒い上体が横滑りして地に伏す。

 と、武芸者が身を翻してこちらを向いた。

 その場にはいない筈のこちらを、向こうは睨み付けている。


「いい加減目を覚まさんか、小僧!」


 底知れぬ気迫を放つ。






 目を覚ました尤磨ゆうまは見慣れた天井を眺めながらため息をつく。


「どうしろってんだ、ご先祖様はよ」


 一年くらい前から時々見るようになったこの夢は、土の匂いが分かる程リアルだった。

 夢の最初に本人が敵に向かって名乗るので自分の先祖の話なんだとは分かる。

 それ以外の事はまるで分からないがあえて調べようとは思わなかった。

 武芸者なんてものに興味はないし。

 ベッドから身体を起こして壁掛け時計を見ると九時過ぎだった。

 夕飯を食べて自室に引き上げてからすぐに寝てしまったらしい。

 茶色に染めた短めの髪を片手で掻きむしる。

 部屋の隅を見ると木刀が目に入った。


「また香那かなかよ。昨日物置に放り込んだとこなのに……」


 思わずため息をつく。

 どこへやっても姉である香那がいちいち戻すので、あの木刀は常に尤磨の部屋に居座っている。

 かつての尤磨は文字通り暇さえあれば木刀を振っていた。

 自分から望んでではなく無理矢理に。

 しかし尤磨を武術に縛り付けていたあの人はもういない。

 尤磨はベッドから下りて木刀を手に取った。


『遅い尤磨ゆうま! もっと速くだ! 何で香那のように出来ない!』


 あの人の非情な怒鳴り声を思い出してしまう。

 片手で持ったまま水平に振ってみる。

 一瞬胸の奥でちりっと火が起こりかけたがすぐに消えた。


「捨てちまった過去なんだよ」


 木刀を部屋の隅へ放り投げる。

 尤磨は落ち着かない心を鎮める為に外の空気を吸う事にした。

 部屋着にしているパーカーとTシャツを脱ぎ捨てる。

 姿見に映った尤磨の背中には、左肩から右脇にかけて細い一本の傷跡があった。

 それが目に入った尤磨は、当時中学生だった自分を斬り付けたあの人の事をまた思い出してしまう。

 背中に耐え難い痛みを感じて振り返ったら、あの人の持つ模造刀の切っ先から血が滴り落ちていた。

 その時、向こうがどういう顔をしていたのかは思い出せない。

 尤磨の傷が癒えた頃にはあの人は病床の人となり間もなく死んだ。

 最後まで詫びは聞けなかった。そういう人だ。




 ベージュのワークジャケットとデニムパンツを着て尤磨は部屋を出る。

 ちょうど香那が階段を上がってくるところだった。


「ちっ、香那か」

「姉に向かって舌打ちするな。どこ行くの、尤磨?」


 セミロングの癖毛をバスタオルで拭きながら聞いてくる。


「コンビニ」

「お気楽だよね。私は今まで庭で木刀振ってた」

「あっそ」


 階段を上りきった香那の脇を通り抜けようとしたら立ち塞がってきた。


「私は木刀振ってたの。毎日の日課」

「何が言いたいんだよ」


 尤磨は言葉を投げ捨てる。

 じっと見つめてくる香那から少し視線を逸らせながら。


「逃げちゃ駄目だよ、尤磨。あんたは一撫流いちぶりゅうの継承者なんだ。それから逃げちゃ駄目だ」


 香那のこういう真っ直ぐなところが尤磨は苦手だった。


「武術の継承者だとか母さんが勝手に押し付けてきただけだっての。一撫流は母さんが死んだ時に一緒に滅んだんだ。それでいいだろ?」

「よくない。お母さんは私じゃなくて尤磨を継承者に選んだの。その遺志をしっかり受け止めて、尤磨は頑張らないといけないんだ。もう十六才なんだし、ホントは分かってるはずだよ?」

「実の息子を背中から斬り付ける母親の考えなんて知ったことかよ」


 尤磨は顔を横へやって言う。

 あれ以前も木刀で散々打ち据えてきたのだ。

 あの人に対するわだかまりは一生消えないと尤磨は思っていた。


「模造刀の件は私もやり過ぎだったと思う。でも今思えばあの時のお母さんは自分の病気の事を知ってたんだよ。残された時間は少ないのに、尤磨は相変わらず泣き言ばっかり。だから焦って……」

「俺が悪いってのかよ。情けない俺なんて斬り殺させても仕方がないってのか?」

「そうじゃないよ。お母さんの気持ちをもうちょっと考えてあげて欲しいの。もっとシャンとしてお母さんを安心させたげようよ」


 香那が尤磨の腕を掴んで揺すってくる。

 でも、尤磨にとっては今さらな話だ。

 正面を向いて香那の目を強く見る。


「俺はもう武術なんて捨てたんだよ。母さんが死んで、アザだらけの毎日からようやく解放されたんだ。正直に言うとな、死んでくれてせいせいしたって……」


 言い終わる前に香那が尤磨の頬を張った。

 尤磨はわざと避けずまともに受ける。


「そういう事は嘘でも言っちゃ駄目。口にしたら心まで歪んじゃうの」

「俺の心はとっくに歪んでるよ。いいからどけよ」


 姉を押し退けようと尤磨が手を伸ばしたら、向こうは強く跳ね退けてきた。

 きつく弟を睨む香那。

 

「尤磨、木刀持って庭に出ろ。歪んだ性根をぶっ叩いて真っ直ぐにしてやる」

「何でだよ? 俺はもう稽古なんてしないんだ」


 怒らせたくない相手を怒らせたか?

 尤磨の中に焦りが広がる。

 と、香那の表情から険が消えた。


「尤磨ってさ、本棚の上から二段目の奥にエロ本隠してるじゃん?」

「え?」


 予想外の方向から攻められて尤磨の表情が強ばる。

 一方の香那は余裕の表情。


「興味津々で見てみたらさ、私に似た巨乳モデルが載ってたんだよね」


 さらに予想外な事を言ってくる。


「はぁ? 何言っての、お前!?」

「すごい似てるの。同じFカップでさ。あれ、明日学校に持ってくわ。『うちの弟は姉貴似のヌードグラビア見てハァハァしてるシスコンで~す!』って、思いっ切り言い触らしてやる」


 香那がにや~っと笑う。

 この人を怒らせるとどうなるか。

 尤磨は姉のタチの悪さを改めて噛みしめる。


「なぁ、香那。それはちょっと反則だと思うな?」

「尤磨君さぁ、せっかく髪の毛染めて色気づいたのに、残りの高校生活をシスコンのヘンタイとして過ごす事になっちゃうよ? どうするどうする?」


 実に嵩にかかった意地悪げな笑みを尤磨に向けてくる。


「分かった分かった! 組手五本な」

「十本だ。一本でも私から取れたら、もう尤磨のする事に干渉はしないから」


 そう言うだけの自信が香那にはあるという事だ。

 そしてそのたった一本を、尤磨はまるで取れる気がしなかった。




 尤磨がよろよろとコンビニから出る。


「散々ぶっ叩かれた挙げ句、好きなだけ奢らされるなんてな」


 香那の強さは相変わらず圧倒的。

 しかも寸止めをしないで骨が折れない程度の力で打ち据えてきた。

 痛む左肩を抑えながらとぼとぼと歩く尤磨。

 秋も深まり夜の町は随分と寒い。色付いた枯れ葉が舞う。

 尤磨はこの肌を刺す冷たさをもう少し味わおうという気になった。

 無様な負けを自虐的に噛みしめるのだ。

 特に寒そうな河川敷を目指しながら、尤磨は母に武術の稽古を付けられていた日々を思い出していた。


『泣くな尤磨! 泣いて強くなれるものか!』


 小学生の尤磨は泣きながら母の言う通りに剣を振ったものだ。

 今振り返っても、あの修行はトラウマしか生まなかったように思う。


「だからって、全部を母さんのせいにする訳にはいかないんだ」


 尤磨は顔を上げると左手を空に掲げた。

 手の甲には今さっき香那に付けられたアザが見て取れる。


「本気で向かっていったのにまるで相手にされなかった。香那との差は一層開いちまったんだな……」


 武術は捨てた。勝とうが負けようがどうでも良い話だ。

 そのはずなのに、尤磨はさっきから滲み出る焦りを抑え込めずにいた。

 今の尤磨には何もない。だから少し押されただけで簡単に揺らいでしまう。

 ずっと悩まされていた武術から自由になった時、尤磨は自分の中に何も残っていない事に気付いた。

 がらんどうみたいな自分の部屋を見て呆然としたものだ。

 だったら新しく何かを入れたらいい。

 今まで出来なかった事に手を伸ばしてみた。

 自転車に乗ってみたり、山に登ってみたり、ファッションに凝ってみたり。

 部活にもいろいろと首を突っ込んだ。

 しかしどれも長続きせずに終わった。

 何故かは分かっている。

 尤磨は逃げてはならないものから逃げた。

 だから何も得られないのだ。

 もうこれからは空っぽのまま人生をやり過ごすしかないのか?

 手を裏返して今でもマメが残る手のひらを眺める。


「どうすりゃいいってんだ」


 誰に言うでもなく呟いた。




 河川敷の歩道を歩く。

 川向こうの堤防の上を車が走るだけで、他に人影はない。

 この静けさが尤磨は好きだった。ぼんやりと川面を眺めながら歩く。

 と、どこからか旋律が聞こえてきた。


「ん? 笛?」


 高い音色は笛のようだが、どこから鳴っているのか分からない。

 前に見える鉄橋の下か?

 鉄橋の上を電車が走り、笛の音が聞こえなくなる。

 しかし騒音が去ればまた音が流れてくる。

 鉄橋の下まで辿り着いた尤磨が見渡してみても人の姿はどこにもない。

 耳を澄ますと橋桁を支える橋脚の方から音がする。

 橋脚は上の方で二股に分かれ、真ん中にスペースが出来ていた。

 その窪みに誰か寝転がっているようだ。横笛を吹いているように見える。

 ふいに調べが止む。

 橋脚の人影が身を起こして尤磨の方を向いた。

 外灯の明かりだけでは顔はよく見えない。


「何か用か?」


 若い女の声だった。

 用? 用か……。

 ちょっと不思議に思って音の出所を探しただけ。

 そう適当に答えて通り過ぎてもいいのかもしれない。

 でも尤磨はこのまま去るのは惜しい気がした。

 だから正直に言う。


「きれいだと思って」

「きれい!?」


 相手の驚いたような声。


「夜中に笛なんてのもなかなかいいもんだ」

「ああ、笛か……」


 なんだか安心したように言ってくる。


「ここで聞いててもいい?」

「駄目じゃ。さっさと向こうへ行け」


 すげなく断られたが、尤磨は彼女の笛の音をもっと聞いていたいと思った。

 姉のせいで胸の中に広がった焦燥感を、あの笛の調べなら消してくれるかもしれない。


「アイスあるけど、いる?」


 香那の分だけどこの際どうでもいい。


「アイス? この寒いのにか?」

「チョコだけど」

「……チョコ、か」


 彼女の声には迷いが感じられた。

 どうやらチョコのアイスが好きらしい。


「仕方ないのう」


 そう呟いて、少女はひょいと橋脚から飛び降りた。

 五メートルはある高さなのに、難なく着地して近寄ってくる。


「君、すごいね」

「ん? 何がじゃ?」


 赤いスカーフのセーラ服に黒いタイツを穿いた少女が首を傾げた。

 小柄で地味な格好をしているのに妙な存在感がある。

 少し釣り上がった切れ長の目から向けてくる視線が力強いからだろうか。

 やや不揃いの前髪は眉を隠す長さで、腰近くまである艶やかな黒髪は後ろで一つにまとめている。

 そして言葉遣いが変。


「こんな時間にこんなとこで、どうしたの?」

「質問は好かん。チョコを寄こせ」


 手を出してきたのでチョコアイスを渡す。


「ほほう……これはいいもんじゃ」


 にんまりと笑みを浮かべる。

 言葉遣いや眼光からしてきつい性格なのかと思ったが、意外と簡単に懐柔できたようだ。

 少女は近くに転がっていたコンクリートブロックに腰を下ろすと、いただきますを言ってからアイスに口を付けた。

 尤磨も自分用に買っておいたチョコ菓子を立ったまま食べる。

 こっちのチョコにも興味があるらしく、少女がちらちらと視線を寄こす。


「いる?」


 箱を差し出すと、少し躊躇ためらってから手を伸ばした。


「お主、いい奴じゃのう」

「そうかな? まぁ、女の子には親切にしないとね」

「あ、先に言っておくが、わしはとてつもなく強いぞ? よからぬことは考えんことじゃ」


 自分の事、儂って言うんだ? まずそこが気になった尤磨だが、あらぬ疑いを晴らしておかないと。


「大丈夫、俺は下心なしだから。あくまで笛に興味があるだけだよ」

「ならばよい。女一人でいると、いろいろと苦労が絶えなくてのう。一昨日も不良どもが絡んできたから全員の金玉を蹴り潰してやった」


 うんざりといったふうにとんでもない事を言う。

 尤磨は男としてぞーっとなりつつも、彼女の口ぶりが気になった。


「女一人って……今日はここで野宿する気なの?」

「そうじゃ。あそこなら余計な邪魔も入るまい」

「危ないなぁ……。なんだったら、俺んち泊まる? あ、俺んちは親父と姉貴がいるし、余計な心配は無用だよ?」


 尤磨なりの親切心からそう提案してみる。

 若い女の子が寒空の下で野宿するというのに放置する訳にはいかない。


「はぁ……。そうやって家へ引きずり込もうとする男のなんと多い事よ。大抵、こうやって食べ物で釣ろうとする。それで、『いやぁ、今日はたまたまみんな留守なんだぁ』とか言うんじゃ」


 そう言いながらもアイスは味わい続ける。


「まぁ、そこまで嫌がるんならいいけどさ。でもお風呂とかどうしてるの? 女の子は清潔にしてないといけないんだよ?」


 そう言うと、ぎろりと睨んできた。

 鋭い眼光。


「ちゃんときれいにしておる。毎日毎日身体は拭いておるし、髪も洗うておる。洗濯もしっかりしておる」

「それは失礼」

「まったく。乙女を汚い扱いするでない」


 ぶつくさ言いながらもあくまで食欲が優先のようで、スプーンを動かす手は止めようとしなかった。

 どうも放浪生活をしているようだし、アイスなんかは贅沢品の部類に入るのかもしれない。

 そして少女はアイスをきれいに食べ終わる。

 尤磨はそれを見届けてから自分の要望を少女に伝えた。


「じゃあさ、笛を聴かせてくれる?」

「仕方ないのう。言っておくが儂のはあくまで我流じゃからな。ただ好きに吹くだけじゃ」

「うん、それでお願いするよ。さっきのはすごくきれいだった」


 尤磨が素直に褒めると、少女は照れたように少し首を傾げる。

 少女は肩にかけていた胴体くらいの長さの筒を下ろし、上に被せてあった蓋を開けると中から笛を取り出した。筒に比べると笛はずっと細い。

 もう一つ風呂敷包みをたすき掛けにして背負っているが、あれは生活用品なのだろう。随分少なく見えるが。

 そして少女は立った状態で笛を横に構えた。

 口を笛に添えてまずはよく通る一声を放つ。

 そこから奏でられたのは緩やかでどこかもの悲しい旋律だった。

 先祖の叱責に対する戸惑い、死んでもなお残る母へのわだかまり、どうしても勝てない姉への劣等感。

 そういう胸の内に鬱積したものが流れていき、尤磨の心は軽くなっていった。

 どれくらいの間聴いていたのか分からない。

 すーっと余韻を残して演奏が終わった。


「ま、こんなもんじゃ」


 笛から口を離して少女が言う。

 尤磨は素直な気持ちで拍手をする。


「いいね。心に染みたよ」

「ふふ……本来は人に聞かせるものでもないんじゃがな」


 少女が照れくさそうに頭をかく。


「じゃあ俺は運が良かったね」


 寒い中気まぐれに寄り道したらこうして出会えた。

 こういうのを縁と言うのかもしれない。


「お主はお主でいろいろと訳ありなようじゃな」

「ん、分かるの?」


 いきなり指摘されて尤磨はちょっと驚いた。


「今時、あんなふうに声を掛けてくる奴なんぞそうはいまい。ましてやこんな時間、こんな場所で」

「まぁ、そうか。ちょっと気持ちが塞いでたんだよね。君の笛に助けられた」


 少女に笑みを向けたら向こうも微笑みを返してくれる。

 野蛮な組手で荒んだ心を、静かな時間が癒やしてくれた。

 こういう心穏やかな時こそ自分が求めていたものではないだろうか。

 尤磨はそういう気がした。


「手慰み程度の芸で人助けが出来れば儂もうれしいぞ」


 満足げに少女が頷く。

 ちょっと変わっているけど優しい心を持った子のようだ。

 尤磨はこの子となら良い友達になれる気がした。


「そういえば、まだ名乗り合ってなかったね」

「ん? そうじゃな。儂は彼方椿あちらつばきじゃ。かれの方の椿の花」

「俺は綱下尤磨つなもとゆうま。綱引きの綱に下。『それはもっともだ』の尤もと書いてゆう。それに磨く」

「綱下尤磨? 綱下尤磨なのか?」


 椿が急に射るような厳しい視線を向けてくる。


「え? うん、そうだけど……」


 相手の態度が変わった理由が分からず尤磨は戸惑ってしまう。


「そうか、これもまた定めというものか……うっ!」


 椿が引き絞った弓のように大きくのけ反る。

 つま先立ちになり、喉下を抑えていた。

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