もすぐりーん・いんふぇくしょん
たり
#0 けいい
――この世界には、大きく分けて2つの人間がいるらしい。
えっとね、そうじゃないって僕は思ってる。
極端だなぁ。まぁ人間らしい考えなのかな。
僕が思うにはね――。
『おい、"エルダー"。光合成中か?』
不躾で無機質な電子音声に、僕は目を開ける。黒から白に視界が塗りつぶされて、思わず目元を擦った。何度かまばたきをしていると、目の前の誰かの輪郭が徐々に浮き彫りになってきた。まあ、誰かなんて確かめるまでもないんだけれどさ。
「えっと、塩がぃ――」
『"イージス"だ。コードネームで呼べよ』
その割には楽しそうだけれど。声帯代わりの電子音声を通じてすら伝わってくるってよっぽどだよね、塩――
『"イージス"だ』
――地の文への突っ込みはご法度だよ?
僕はそっと立ち上がって、軽く背伸びをする。真っ白で、硬いベッド一つだけの部屋。この組織における僕の棲み処。軽くあくびなんか浮かべてると"イージス"は肩をすくめた。
『……苔に背伸びは要るのか?』
「純苔産だけど、こういった仕草も必要でしょ?」
『確かに不気味の谷は超えてるな、兄弟。あー、なんだ、支部長が呼んでるぞ』
こけた頬をぽりぽりと掻き、"イージス"は要件を言った。一言で済む用事を、引き伸ばしてから伝えたのは多分、暇なんだと思う。
『るせーな、話し相手がお前しかいないんだよ、兄弟』
ケラケラ、笑い袋のような音で「笑う」"イージス"。確かに、その声が怖い人間は一定数いるんだろうな。僕は肩を竦めて部屋の出口へと向かう。背後から、"イージス"の義足が鳴らす金属音。彼は変わり者かもしれないけれど、"僕ら"からすれば誤差の範疇だ。
人間を災厄にまで変質しうる力が、何かを介して人間を理解しようとしている。例えば動物だったり、苔だったり。
……そんな存在が"僕ら"、
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