鬼ごっこ、人ごっこ。

なつみ@中二病

序章


 暗闇の中に光が差す。

 光の中には男が一人立っている。

 虚ろな眸をした少年は何かを懇願するように空を見上げる。

 よく見ると、首には大型犬用の首輪が巻かれている。


響 「あたしには何もない。あたしの価値なんて何もない。所詮誰かの代わりでしかない

  あたしは、大切なものを全部持っていかれる。

   何をしていても、誰と一緒にいても、落ち着かない。満たされない。あたしの心は

空っぽ。虚無感が、どうしようもなく虚無感が、あたしを支配していく。

   この気持ちは何?どうしてあたしは満たされないの?空っぽなの、全てが。心の中

が伽藍としていて、すごく物足りない気持ちがするの。足りない、足りない、足りな

い。何かが決定的に足りない。

   意味がない、あたしには意味がない。この世界には意味がない。あたしには生きて

いる意味がない、理由がない。

   わからない。……わかんないよお……」


沈黙。


響 「誰か、あたしを見て。本当のあたしを見て。あたしだけを見て。必要として。誰か

あたしを必要として。あたしだけを必要として。お願いだから! ……誰か、あたし

を好きになって」


  肩を抱いて膝を折り、その場にうずくまる。


      暗転。

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