第6話 第三幕ノ二(終)

山田「はっきり言って、あの菊川って奴の言っている内容について理解も納得も、全くできなかった。でも俺達はそれを受け入れた、という前提で話を進める。いや、受け入れたわけではない。諦めたのだ。だって現に、神崎はこうやってクラスでは浮いてしまっているし、俺は相も変わらず、なんにもできない奴だった。落ち込んでいる、というか放心している神崎の姿を見ていると、今年の5月の出来事を思い出した。文化祭の、当日の出来事だ。俺が神崎のぱしりとなった、その日の出来事だ」


  /


  場面は学校の、別館の、階段。


  神崎は階段に座って、泣いていた。くやしくて、泣いていた。


  山田はそれを少し離れて、立って、眺めていることしかできなかった。


山田「え、えーっと・・・」

神崎「なによ。あたしがそんなにみじめ?」

山田「い、いや、そういうわけじゃないけど」

神崎「バカみたいだって、そう思ってるんでしょ?」

山田「いや、そんなことはないよ。で、でもあれだな、、神崎さんでもミスしたりとかするんだ」


  神崎、心を抉られて、さらにぐしゃぐしゃに泣く。


山田「ごめん、その、そんなつもりじゃなくて」

神崎「うるさいなあ! あたしだって、ミスしたくてしたわけじゃない! 何回も、何回も、何回も、何回も見直したし、後輩や先輩にもチェックしてもらったし、先生にも見てもらったし、何回も何回も自分で、自分で確認したのに──」


  声を上げて泣くわけではないが、神崎の目からは涙が延々と零れ落ちる。


山田「でもほら、ミスは誰にでもあるって。人間なんだからさ。そんな、文化祭のパンフレットの誤植なんてよくあることだし、」

神崎「あたしが──! あたしが任された仕事なんだよ!? 完璧に、がんばって、作ったのに、みんなで力を合わせて、作ったのに、あたし、みんなにあわせる顔がない。あたし一人のミスで、みんなの努力の結晶を、汚してしまった」

山田「神崎・・・。そ、そんな、おおげさだな、ちょっと文字が間違っていたくらいでそんな」

神崎「おおげさなんかじゃない! これは、大事なことなんだ。あたしにとっても、みんなに、とっても──」


  これまでの努力を思い出し、さらに涙が込み上げてくる。

  

  少し、間を置いて、落ち着きを取り戻す神崎。


神崎「みじめね、あたし」

山田「違うよ」

神崎「いいわよ。どうせみじめだもの。すっごい悔しい。

   こんなとこ山田に見られたことが、余計に悔しい」

神崎「山田」

山田「な、なに」

神崎「このこと、誰かに言ったら、絶対許さないから」

山田「このことって?」

神崎「あたしが泣いてたことよ! ばっかじゃないの?」

山田「ごめん」

神崎「絶対に、絶対に、誰にも言わないでね。約束だから」


山田「それから、俺のぱしり生活が始まった。神崎は俺を監視するために自分の手元に置いておきたかったのだ。別に神崎の命令だとかお願いだとか、そういうのをきいて従う必要はどこにもなかったのだろうけれど、俺は彼女の言うがままになった。それは、彼女が泣いているところを見てしまったことに対する、罪滅ぼしというか後ろめたさというか、そういうところがあったのだと思う。でもそれ以上に、菊川の言葉を鑑みれば、俺は、神崎のことが好きだったからなのかも知れない。神崎のことが好きだから、力になってあげたい、何かしてあげたい、そういった想いが、行動として現れた、そういうことなんじゃないかって、今にしてみると思うわけだ」


  /


  場面は現在へと戻る。


神崎「あーあ、みじめだなあ。すっごいみじめ。こんなみじめな姿、また山田に見られるだなんて」

山田「神崎・・・。またって、文化祭のとき?」

神崎「いちいち言わなくてもいいわよ」

山田「俺にとっても、すごく印象的な出来事だったから」

神崎「なによ、さいてー」

山田「そういうんじゃないよ。あれから、神崎のこと、すごく気になっていたんだから」

神崎「何それ。ただの同情?」

山田「違うよ。ただ、すごいなって思って」

神崎「なにが?」

山田「いや、泣くほど悔しがってる神崎がさ」

神崎「バカにしてるの?」

山田「違う。そういうことじゃなくて。

神崎ってさ、なんでもそつなくこなして、周りのことに興味がないんだと思ってた」

神崎「やっぱりバカにしてる? 見下して、そりゃあ気分がいいでしょうね。

   だってずっとあたしがあんたをこき使ってきたんだから、仕返しも当たり前よね」

山田「神崎」

神崎「わかるよ。あたしだって、なんとなく周りの人間をバカにしてたし、あたしが特別なんだって、思い込んでた」

山田「神崎!」

神崎「な、なによ」

山田「聞いてくれよ、俺の話」

神崎「・・・うん」

山田「俺さ、何かに打ち込んだこととか、一生懸命になったこととか、そういうの今まで全然なくて。

だから、神崎が悔しくて泣いたのが、すごいなって思ったんだ。

神崎は俺と違って、何かに一生懸命になって、失敗したら、悔しくて泣いてしまうような、そんな、がんばり屋さんなんだなって。

そう思ったら、なんか感動しちゃって、それで」

神崎「・・・・・・」

山田「それで、気が付いたら、すっごく気になるようになってた」

神崎「なにそれ」

山田「それに、女子が泣いてるとこなんて見ちゃったら、なんか、ほっとけなくなるだろ」

神崎「泣いてたからあたしのこと好きになったとでも言うの? ・・・なんか、みじめだなあ、あたし」

山田「なに卑屈になってるんだよ。そんなの、神崎らしくない」

神崎「あたしらしいってどんなの? あたし、小さい人間だよ。ほんと、あたしにはなんにもないもん」

山田「そんなことない。そんなことないよ。

神崎になんにもないんだったら、俺の感動はどうなるんだよ。

   俺、本当に、神崎のそういう一生懸命なところ、すごく好きだから。

   俺、好きだから。神崎のこと、ほんとに、好きだから」

神崎「──なにそれ。なんなのよ、もう・・・」


  神崎の頬を涙が伝う。


  ああ、そうか。あたしのことをちゃんと見てくれてる人がいたんだと。


神崎「ばか」


  微笑み、見つめ合う二人。


山田「そういうわけで俺達は一段落ついたわけだ。一時はどうなることかと思ったが、神崎はこうやって前向きに生きていくことを決めた。これにてハッピーエンド。めでたしめでたし」



  照明が暗くなり、すぐに照明が明るくつく。


   /


  場面はどこか。


  菊川が立っている。

  菊川に対峙する神崎と山田。

  神崎の手には鉄製のバットが握られている。


山田「って、なんでこうなるんだよ。今のでハッピーエンドで、無理やり終わらせてもよかっただろうが」

神崎「あたしはね、負けず嫌いなの。やられっぱなしってのは、むかつくし、絶対に許せないのよ! あいつをコテンパンにぶっ潰すまでは!」

山田「やれやれ・・・。そういうわけらしいぜ、菊川さんとやら」

菊川「不可思議だな。俺の元までたどり着ける奴なんて、そうはいないはずだが。どうやって調べた。神崎」

神崎「あたしの人脈と情報量をなめんなよ! 確かにあんたのせいであたしのキラキラ愛されスキルはなくなってしまったかもしれないけど、あたしが積み重ねて来たこの年月と、人間関係だけは無かったことにはできない、本物だ!」

菊川「なるほどなるほど。神崎、お前、とてもいい顔をするようになったな。このあいだとは大違いだ。それで、お前は俺に報復をしに来た、というわけか」

神崎「報復ってのはちょっと違う。あたしは、取り戻しに来たんだ」

菊川「取り戻しに、か。悪いが、どうあがいても書き換えたお前の設定が戻ることはない。これは俺の決定じゃあない。世界そのもの決定なんだ。悪いが──」

神崎「悪いけど、あたしが取り戻しにきたものは、そんなものじゃない。未練がないと言ったら嘘になるけど、あたしはもっと大切なものを見つけたから」

菊川「ほう。それでは、お前が取り戻しに来たものは、いったいなんなんだ?」


  神崎、バットを振り上げる。


神崎「それは、あたしのプライドだあっ!!」


  バットを振り下ろしながら襲いかかる神崎。

  すんでのところで避ける菊川。

  菊川の表情から余裕の色は消えない。


菊川「なるほどなるほど、プライドか。しかしな、神崎。お前はどうやってそれを取り戻す? 俺をその鉄の棒でぼこぼこに殴り倒して、それで勝ち誇るって、そういうことか?」

神崎「・・・・・・」

山田「確かにそうだぜ、神崎。こいつの言うとおりだ。何をもってお前の勝ちってことになるんだよ。そいつを殴っても、何も変わりはしないぞ」

菊川「そうだぞ神崎。全く、暴力に訴えたところで、俺は屈しないし、例え屈したところで、お前は何も得ることはない」

神崎「誰が殴るって言った? 暴力に訴えるって言った?」

山田「おいおい、だったらその手に持った物騒な獲物はいったいなんなんだよ」

神崎「これは、舞台上の演劇的表現だ! あたしはこいつを、言葉で言い負かす! 論破する!」


  殴りかかる神崎。


山田「結局暴力じゃねえか!」

菊川「なるほどおもしろい。いつかの俺の言葉へのあてつけか。わかったぞ神崎。戦おう。俺は理解した。これは、心を折るための闘いだ。負けたと思った方が負け、そういうことでいいな」

神崎「オッケー。いいよ、それでいこう」

菊川「わかった。それでは、バトルパートに入ったところで、世界を少しだけ改変しよう」


  菊川、ルービックキューブを取り出し、回す。


  かちゃり、と音がして世界が少しだけ切り替わる。


  菊川の手には刀が現れる。


  神崎の目の前にも刀が現れる。


菊川「さあ、手に取れ、神崎。存分に斬り合おう。心配しなくてもいい。肉体的なダメージは皆無だ。この空間のルールを、少し変えた。ゲームだとかマンガだとかそんな世界に似たものになったと思ってもらって構わない。これはただ、お前に気が済むまでとことんやれという、譲歩だ」

神崎「恩に着るわ。ついでに、その体も斬ってやるっ!!」

山田「ちょ、神崎! お前、ものわかりよすぎ! なんなんだよこのめちゃくちゃな展開は! 番組が違うだろこれ!?」


  刀で戦う神崎と菊川。


  菊川が優勢である。


菊川「どうした神崎、お前の言葉で俺を斬り裂き、俺が負けたと納得させてみろよ」

神崎「『黙れ』!」

菊川「だから、お前のその人に命令する設定はもうないって言っているだろう」

神崎「関係ない!」

菊川「それじゃあ、俺が少しだけ使ってやるか」


  菊川、ルービックキューブを取り出し、回す。


  世界が切り替わる。


菊川「『動くな』」


  びくん、と神崎の体が鼓動を打ち、ぴたりと動きが止まる。


山田「神崎っ!」


  菊川、ゆっくりとにじり寄り、刀を振り上げる。

  菊川が刀を振り下ろしたが、山田が転がっていたバットを拾い上げ、攻撃を防ぐ。


菊川「ほう、いい動きだ」

山田「しっかりしろ神崎! お前は他人の言葉なんかで左右されるような女じゃないだろ! 言いたい奴には言わせておけばいい。お前はいつだってお前なんだ。お前が正しいと思ったことを信じてやればいい。それを俺は、いつだって見届けてやるさ」


  神崎の体の呪縛が解け、刀で菊川を斬りつける。


  しかし菊川は余裕でそれをかわし、距離を取る。


神崎「うるさいわね、あんたに言われなくてもそんなことわかってるわよ。あたしは、いつだってあたしだ。他人になんて言われようが、気にしてる場合じゃないっての!」

菊川「ほう、いいコンビだな。いいんだぞ、二人がかりでかかってきても」

山田「しっかし、二人でっていっても、全然勝てる気がしないな」

神崎「別にあたしは一人でも平気だっての!」

島村「待ちたまえ!」


  突然、島村が現れる。


山田「部長!? どうしてここに!?」

島村「助太刀に参上したのだわ」

山田「部長・・・。ありがたいですが、ここは危険です! 下がってください!」

島村「そうは問屋が卸さないのだわ。そう言って島村桃子は再びポーズを取った」

山田「うざい! うざいです部長! セリフが、ポーズが、存在がっ!!」

島村「安心して、山田くん。私が加勢に来たのは、戦闘の方じゃないわ」

山田「え、じゃあいったい何しに来たんですかっ」

島村「ミュージック、スタート!」



  GOLD FINGER’99が流れ始める。


  スタッフのみなさんが現れる。


山田「助太刀って、こっちのことかよ!」

島村「この単調な戦闘シーンに終止符を打ってあげるわ!」

山田「いま必要なのはそういうんじゃない! そういうんじゃない!」


  山田の前にスタッフがスタンドマイクを用意する。


山田「結局俺が歌うのかよっ!」


  歌い始める山田。


  戦闘は加速していく。


  戦う神崎と菊川。


  音が小さくなり、BGMとなる。


  神崎と菊川の刀が折れる。


菊川「これでは勝負にならんな」

神崎「それじゃあ、今度は、素手で決着をつけるってのはどう?」

菊川「悪くない」


  二人、刀を捨てる。


  拳を構えて戦う二人。


  歌のサビの部分が来る。

  音量が上がり、戦ってる二人以外が「あちちあち」と振付をする。

  今回は部長も動きが合っている。


菊川「なかなかやるな、神崎。久しぶりに俺も楽しいと感じているよ」

神崎「あたしも楽しい。新しい自分に生まれ変わったような、そんな気分よ!」


  戦う二人。


  徐々に神崎が劣勢になっていく。


  山田、たまらずに歌うのをやめて加勢に入る。


神崎「山田、邪魔しないでよ!」

山田「見てられないっての!」

菊川「仲がいいな。さっきも言ったが、俺は2対1でも一向に構わないぞ」


  二人がかりで菊川に殴ってかかる。

  必死だが、それでいて、楽しそうな二人。


  歌が「あちちあち」のところになると、戦っている三人を含め、全員が振付をする。


山田「って、なんでお前らもやるんだよ!」

神崎「つい」

菊川「ノリだ」

山田「ノリかよ!」


  神崎、距離を取って手を天に掲げる。


神崎「山田、必殺技で一気に勝負をかけるわ」

山田「え、必殺技って!?」

神崎「わっかんないやつねー。この構えを見ればわかるでしょ、元気玉よ!」

山田「おかしいから! ノリがおかしいから!」

神崎「あたしがパワーを集めるから、その間の時間稼ぎをお願い」

山田「・・・ったく、神崎には振り回されっぱなしだよな、ほんとに!」


  神崎、笑顔を浮かべる。


神崎「みんな、あたしに力を!」


  神崎が上げた手の上に(照明で)光が集まる。


神崎「さあ、みんな、あたしに力を!」


  歌が「あちちあち、燃えてるんだろうか」の部分を繰り返す。


  観客にも振付を求める島村。


  全員の力が神崎へと集まる。


  格闘している山田と菊川。


  ふと、隙を見せた菊川。それを山田は見逃さなかった。


  山田が菊川を羽交い絞めにする。


菊川「しまった」

山田「いまだ神崎、俺ごとこいつをやれーっ!!」

神崎「わかったーっ!」

山田「躊躇なしかよーっ!」

神崎「山田ーっ!」

山田「なんだよっ!?」

神崎「一回しか言わないから、耳の穴かっぽじって、よーく聞きなさいよ!」

山田「この状態で耳の穴なんて触れねえよ! なんだよ、聞いてるよ!」

神崎「ちゃんと受け止めなさいよ! あたしは、あたしは──」


  神崎の頭上の光が最大まで大きくなる。


神崎「山田、あんたが好きだーーーーーーっ!!!!!!!」


  神崎、光の玉を山田と菊川に向けて投げる。


山田「なにーーーーーっ!!!????」


  世界が光に包まれる。



  光が消えると、その他大勢たちはいない。


  神崎と、山田と、菊川だけ。


山田「な、なんなんだよ今のは!」

神崎「うるさいうるさいうるさい! あたしがなんであんたのことなんか好きにならなきゃいけないのよ!」

山田「なにそれ、俺、喜んでいいのそれ!?」

神崎「喜びなさいよ!」

山田「な、なんなんだよそれ。・・・いえーい」

神崎「なによそれ!」

山田「ていうか、今の攻撃、こいつにしてただろ! これじゃあまるで、俺じゃなくてこいつに告白したみたいになってるじゃないか!」

神崎「うっさいわね!」


  と、突然起き上がり、神崎を襲う菊川。

  しかし、山田と神崎の息ぴったりのコンビネーションで防がれる。

  吹っ飛ばされる菊川。

  菊川が持っていたルービックキューブが宙に舞う。


  そのルービックキューブを神崎がキャッチする。


神崎「勝った! 勝ったぞーっ!」

山田「え、勝ちって、それを奪うことが目的だったの?」

神崎「え、あ、うん、そ、そうよ、これであたしの勝ちだわ」

山田「なんか歯切れわるいなー」

菊川「まったく、完敗だ。お前たちはすごいよ、本当に。若いっていうのは恐ろしいな。こんな告白をするためだけに、この俺をも利用してこんな茶番を演じるんだから」

山田「えっ!?」

神崎「バカっ、何言ってるのよ!?」

菊川「まあ、犬も食わぬような物を俺は喰らう気はないさ。さて、帰るとするか。全く、俺の負けだ。しかし、世界の改変という仕事は成すことができた。俺は職務を全うしただけで十分だ。十二分だと言ってもいい」

神崎「あんたのこれ、あたしがもらっちゃってるけど、これっていいの?」

菊川「構わん。どうせ俺以外には使えぬただのオモチャだ。くれてやる。バトルモードのお遊び世界も元に戻したことだし、新しい【設定】の【改変】もあったようだしな」

山田「新しい、改変?」

菊川「それでは本当にさらばだ。俺はもう仕事とは関係ないことで時間を浪費はしたくない」


  菊川、背をむけて歩き出す。


  足を止める。


菊川「神崎、山田、俺も少しは楽しかったよ。人間が変化する場面に立ち会えるだなんて、世界は本当におもしろい」


  菊川、去る。


  神崎、山田、その場にへたりこむ。


二人「疲れたー」


  顔を見合わせて笑う二人。


神崎「山田、あのね」

山田「なんだよ?」

神崎「あたし、藤村に謝ろうかと思って。ちょっと今、すれ違ってる感じになっちゃってたから」

山田「そうか」

神崎「まずは電話して、会いに行こうと思う。あの子も今、タイヘンだろうし。あたしに何ができるかわからないけどさ。だから、その、電話かけてる間、あたしの傍にいてくれる?」

山田「・・・オッケー、わかった。お安い御用だ」

神崎「うん、ありがと」

山田「しっかし、なんだったんだろうな、この一連の出来事は」

神崎「ま、夢でも見てたんじゃないの?」

山田「夢ねえ。夢オチとかそういう設定は嫌だなあ。って、なんか設定ばっかりで疲れたわ。あれ、俺ってまだ、神崎の下僕って設定なのか?」

神崎「別にいいわよ、そんな設定。もういらないわよ」

山田「ふう、なんとかお役御免ってことですか」

神崎「そのかわり、新しい設定追加ね!」

山田「新しい設定?」

神崎「あたしとあんたは、恋人同士って設定で」

山田「え?」


  神崎、ルービックキューブをガチャリと回す。


  世界が生まれ変わる。


  暗転。


  おしまい。

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