第7話 全裸

 大丈夫、とは何が?

 心の準備ができたから、見せてくれる、そういうこと?

 それとも、全部脱いだからもう大丈夫、服着てもいいよね、ってこと?

 どっちだ……?


「じゃぁ、見せるね?」


 見せる?

 何を?裸を。

 誰の?彼女、メーちゃんの。

 いつ?今。

 どこで?ここで。

 なぜ?俺が脱いでと言ったから。

 どうやって?隠している両手を広げて。


 自問自答を繰り返す。未だ信じられない気持ちで彼女を見ると、右腕は下ろされ始めていた。左腕もゆっくりと動き始め…………

 俺は、目を閉じてしまった。

 今でも彼女の裸を見たい気持ちは変わらない。それどころか、もっと先のあんなことや、こんなことをしたいとも思っている。股間ももう、爆発間近だ。

 なのに、俺は、目を開けることができなかった。

 さっき、最後だと思って目に焼き付けたから?

 分からない。でも、俺の気持ちに反して、俺の両目は開こうとはしなかった。


「拓斗くん……何で、目を閉じてるの?」


 不安そうな声が聞こえた。

 俺が不安にさせている?

 なぜ?

 勇気を振り絞って裸を見せてくれている。なのに、言い出した俺が見ないから?

 俺は彼女の質問には答えず、目を閉じたまま聞いた。

「ねぇ、本当に、いいの?」


「うん」


 俺は、ゆっくりと目を開ける。

 下から、ゆっくりと上へと視線を巡らせた。


 小さな足。

 キレイな足。

 可愛らしい膝。

 むっちりとした太もも。

 薄く、毛に覆われた性域。

 小さく凹んだへそ。

 圧倒的なボリュームの胸。

 ぷっくりとした唇。

 赤く染まった頬。

 いつもと変わらない赤いアンダーリムの眼鏡。

 一つにまとめられた絹のような黒髪。


 その表情は、恥ずかしげでもあり、それでも、優しく微笑んでいた。

 俺とは違い、丸みを帯びたその身体に俺は見とれていた。目を離せなかった。

「ありがとう」

 だから、ただ一言、そう言った。

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